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10-5

「俺は前線に向かう!魔法でヤツを狙え!」

「分かってる!いつもどおりだねぇ!」

「傷ついたら回復する」


 追いついてきたギルバートたちが、それぞれのポジションに向かって走って行く。

 てっきり逃げたもんだと思ってたが、やる気はマイコ―と同じであるってわけか・・・


「キリヤくん、今のうちに!」

「おっ、そうだったそうだった」

 連中がどうしようと連中の勝手。

 こっちはこっちのやることをやらにゃあならん。

 ならんが、

『・・・この状況を上手く使うか』

「どういうことだ?」

 仕掛ける準備を進めていたが、

『連中に体力を削ってもらおう』


 モンスターは体力があるし、人間にはできない運動もできる。そこが人間側の悩みでもある。

 だが、あいつらも所詮は動物。言い方がバケモノってだけで、本質は攻撃的な動物であることにそう違いはないだろう。

 であれば、体力も無限じゃない。それはガノダウラスも、グリーンコアトルも例外じゃない。

 あれだけ派手に動き回りゃあ、嫌でも消耗する。どれだけ消耗するかは分からないが、するこたするだろう。

 体力を消耗してくれれば、攻撃のチャンスは生まれやすいはず。


 あいつは大きい音に反応してターゲットを定める・・・ってことは、より大きい音を出しているヤツを選んで攻撃しているってことだ。

 逆を言えば、静かにしてりゃあ狙われる危険性が少なくなるってこと。

 静かに罠を設置している分にゃあ、恐らく襲われる危険性は少ない。


 一方で大声を出して逃げ回っている、もしくは勇んで突っ込んでいっている連中・・・あいつらはただ単純に攻撃されるリスクを上げているだけ。

 マイコ―たちもそれに当たる。


 ここはマイコ―たちを使って可能な限りあのバケモノを消耗させる。

 消耗して動きが弱ったらチャンスだ。罠を仕掛けて動きを止めるのもしやすくなるし、単純に袋叩きができるならそれが手っ取り早くて話も分かりやすい。

 だが、

「結構エグイこと考えますなぁ」

 別に仲間でもないし、何だったら敵なわけだから気遣いなんか必要ないわけだが、それはそれで若干申し訳ない気持ちがないわけでもない。

 一応、知らないヤツじゃないからなぁ・・・

『情けは掛けるな』

 姿が見えないオニキスから強い言葉が飛んでくる。

『あいつらは他所の陣営の連中だ。気を遣って得になることがあるならまだしも、そんなものもないし、足を引っ張り合うだけだ。捨て置くに限る』

 言ってることは分かるから困るところだが、

『使えるものは使え。最終的には自分たちが勝ちを得られればそれでいい。割り切れ』

「・・・ま、そりゃそうだな」

 っていう風に納得する辺り、俺も同罪か。

 まあ、別に罪でも何でもない、ただの作戦ってだけだけど。

『リオーネにも聞こえるようにした。俺の声が聞こえるか?』

「え、あ、はい!」

『今は動く時じゃない。あの連中を使って体力の消耗を削る。魔力を溜めておけ。いざとなったら撃てるようにな』

「分かりました!」

 リオーネの魔法で止めを差すくらいの気持ちがちょうどいいか。

 ここでも頼ることになるってことは、やっぱり魔術師の価値は高いってことだな。


 こっちの作戦は整ったが、

「ガードウォール!」

 イケおじが長槍を構えて、グリーンコアトルのタックルを受ける。

「カアッ!」

「フリーズエッジぃ!!」

 着地して体勢を整えようとするグリーンコアトルを目掛けて、一瞬で生成した氷の刃を発射。

「カッ!!」

 それを長い尻尾で弾き飛ばす。

 その隙に、

「バスターソード!!!」

 接近したマイコ―が剣を一閃・・・!

「カッ!?」

 その一撃はグリーンコアトルの腹部に直撃して、深く斬り裂いた!

「くそ、避けやがって!」

 咄嗟に動いたからか、狙った部位から逸れたらしいが、ヒットはヒットだ。確実にダメージを与えている。


 傍で見ていて分かったことがある。

 こいつら、言ってることは無茶苦茶だが、連携ができてる。


 イケおじが矢面に立って受けに徹する。攻撃を仕掛けてきたモンスターの体勢を崩せれば上出来か。

 追撃で魔法攻撃を仕掛ける。体勢を崩せていれば当てられるし、当てられれば大ダメージを与える。

 仮に第一の追撃を避けられたとしても、至近距離まで接近した剣士が一発入れる。魔法ほどのダメージを与えられなかったとしても、着実に傷を負わせられる。

 イケおじとマイコ―が攻撃を受けるリスクはそれだけ高まるが、控えているヒーラーが傷を癒してくれる。


 理想的なパーティ構成とコンビネーションのはず。

 これを俺たちもできたらもっと楽に討伐できるんじゃないか・・・?


 まあ、俺たちの場合は正式にパーティを組んでいるわけじゃないから、ジェシカたちを除けて考えなきゃいけないわけだが、ヴェロニカは一般人と比べても大容量の魔力の持ち主。俺と二人だけでも追い込むことは十分にできる。

 ただ、ヴェロニカ一人だけでも十分やれるってのが悲しいところだが・・・


「カアアァァァァッ!!!」

「ぐっ!!」

 イケおじがまた攻撃を受けた。強力なタックルだ。

「ぐっ、くそ・・・!」

 受けた直後、槍を地面に突き立てて片膝を突いた。

「ダメージを受けすぎ・・・!」

 笑いの沸点が低いヒーラーがイケおじに向かって走り出そうとするが、

「来るな!!狙われる!!」

 イケおじがそれを止める。

 そりゃあそうだ。ただでさえ防具も何もない状態のヒーラーに、あんなミサイルが体当たりでもすりゃあ即死しちまう。程度が軽くて致命傷を負うってところだろうが、どっちにしても受けられるもんじゃない。

 何かしらスキルでもありゃあ話は別だろうが、あの様子からしてそんなものはないと見た。


「カアアァァァァァアッ・・・!!」

 腹部を斬られたからか、それともこっちの狙い通りに体力が減ったのか、グリーンコアトルの動きが鈍っているように見える。

 肩で息をしているってほどじゃないが、呼吸が早い。


「よし」


 グリーンコアトルの傍まで接近していたオニキスが光学迷彩を解き、

「そろそろ行くか」

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