10-4
「カアアァァァァァァアッ!!!」
「ちょわあぁぁぁぁぁあッ!!!」
まるでミサイルみたいにすっ飛んでくるグリーンコアトル・・・
全力で跳んで避けたが、やっぱりすごい迫力だ!
「どうなってんだコイツ!」
さっきまでマイコ―を含めたマーガレット陣営の連中をなぎ倒していたっつーのに、急にターゲットを俺たちにしてきやがって・・・!
「大丈夫!?」
「お、おうっ」
そりゃあ、周りでうろちょろしてたら鬱陶しいし、目移りすることもあるだろう。人間だってそういうこともあるし、モンスターもそうに違いない。
ただ、俺もリオーネもそこそこ離れた位置にいたし、俺に関しちゃあ物陰に隠れ気味だったわけで、狙われにくかったはず。
それなのに狙われた。まるでそこにいるってのが分かってるってくらい的確に。
こりゃあ何かあるな・・・
その何かを紐解かないとしんどいかもしれん。
『キリヤ、聞こえるか?』
オニキスの声・・・?
どこにいるのか分からないが、鮮明に聞こえてくる。
耳に直接語り掛けてくるこの感覚・・・
『そんなに驚くことじゃあないだろ?あの子とのやり取りはこんな感じのはずだ』
「・・・なるほどな」
これはテレパシーだ。
ヴェロニカ以外から受けたことがないからか、気付くのが遅れた。
『あいつは音に敏感なモンスターだ』
「音・・・?」
『詳しい理由は研究者が調査しているが、俺の経験から察するに、大きい音に反応していると思う』
大きい音に反応してる・・・?
「カアァッ、カアァァァッ!!」
俺から視線を逸らしたグリーンコアトルは他所へ跳んでいった。
その先は逃げ遅れたマーガレット陣営の連中がいるところだ。
そういえば、リオーネと大声で話したな。
テレパシー持ちじゃない俺たちは、声や身振りで意思疎通を図るしかない。だから大声を出した。
その声に反応して、他の連中から俺にターゲットを変えたってことか・・・
だとすると、意思疎通が難しくなる。
身振り手振り・・・つまり、ハンドサインのような形態で意思疎通を図る場合、ある程度ルールを作って展開しておかないと機能しない。
あそこに敵が一人いる、他所を向いている、待て、撃て・・・色々ある。
それぞれに対するアクションを理解し、チームメンバーときっちり共有できていないと、機能しないどころか、自分たちの身を危険に晒すことになる。
リオーネとはそこそこやり取りをしてきたし、できなくもないとは思うが、細かい状況のやり取りは難しい。
いや、難しいっていうより無理ってのが正しいな。
いつかは離れるだろうと思って疎かにしてきたツケか・・・今更だが、もうちょいしっかりやっておくべきだったな。
『だが、攻略法がないわけじゃあないだろ』
「ないこたない、が」
ヤツのターゲットの選考基準がざっくり分かった。これはこれでありがたい情報だ。
だが、やることは変わらない。
とにかく罠にハメること。これが最優先だ。
大きい音を出すか出さないかより、あの機動力を抑え込まないことには接近戦を仕掛けられない。
罠を張ってハメる。そこから一気に袋叩き。
やることは変わらない!
『俺もヤツに攻撃を加える。お前さんは仕掛けの準備をしろ』
「そうさせてもらう!」
木の陰に隠れてロープの準備を始めると、
「カアァァァァッ!!」
「ぎゃあああああ!!」
少し離れたところで、マーガレット陣営の誰かがぶっ飛ばされた。
「そこだな!」
光学迷彩で接近していたオニキスが、ナイフでグリーンコアトルの左翼を斬り付け、
「カアァァッ!?」
グリーンコアトルは体勢を崩した!
「ふんっ!!」
続けてナイフを突き出すが、
「カアッ!!」
グリーンコアトルは大きく後ろに跳んで避けた・・・!
「チッ」
追撃のナイフは察知されて避けられてしまったが、ナイフでも攻撃は通ることが分かった。
それに、あいつも接近されると困るからか、距離を取ることも見れた。
こっちの体力に限りがある以上、やっぱり長期戦はできない・・・
さっさと罠に掛けないことには・・・!
「どけ!!」
「むっ?」
ロープの準備を始めた直後、オニキスがいる方で面倒なことが起こった。
マイコ―だ。
オニキスを押し退けて、大暴れしているグリーンコアトルに突っ込んでいく・・・?
「何やってんだ、あいつ・・・」
人間が一人走って突っ込んでいったところで、あっちの機動力のほうが勝ってるわけだし、追いつくのが難しい。
よしんば追いつけても、それまでに体力を使うわけで、より早く消耗する。
「クラッシュソード!!」
それでも追いついて一閃する。
「カッ!?」
その一撃が左翼に直撃して翼を切り裂く!
「カアッ!!」
再びバックステップで距離を取るモンスターだが、
「させるか!」
「カッ!」
今度は衝撃波を放って追撃!
だが、それは避けられてしまう。
「はぁ、クソッ!やるじゃねぇか・・・!」
肩で息をしている・・・結構消耗したろう、あいつ。
マイコ―は俺と違って甲冑を装備している。しかも、駆け出し冒険者じゃ買うのも難しいくらいの、しかも金属製。
見た目からして重量がある物・・・そんなのを装備して走り回りゃあ、息の一つや二つ切れるわな。
攻撃する力は残っていても、追っかける元気がなくなってきている。こりゃあ保たんな。
「援護するぞ!」
「魔法は任せてぇ!」
「・・・ん」
後ろから三人、俺を追い抜いて行った。
マイコ―の仲間だ。
・・・あんたらも、戦うのか?




