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10-2

 そりゃあ、何でもやり方はあるだろう。

 ボスゴブリンでも、ポイズンスパイダーでも、ガノダウラスでも、何でも。

 生物を仕留める。不老不死でもない限り、倒す手立てはある。


「カアアァァァァァッ!!!」


 まるでミサイルみたいに勢いよく跳んでくるグリーンコアトル・・・こいつも例外じゃあない。

 なら、俺にだってできるはずだ。


 ・・・気合さえあれば。


 いやいや、だって怖いじゃん!!

 あんな殺意と闘争本能を剥き出しにした、デカい生物なんてさ!

 熊でさえ騒ぎになるってのに、こんなんが地球にいたら騒ぎどころの話じゃあないんだよ!?


 とまあ、それはさて置き・・・

『ちょうどいいではないか。こいつを狩れ』

「ですよねぇ・・・」

 狼はやる気満々だな・・・

『ガノダウラスは体格故に手こずるが、こいつは半分程度の体格。人の子の一人、二人程度でも十分狩れる』

「あのなぁ、お前らと一緒にすんなよ。人の子は脆弱よ?」

 ただまあ、試練だし、やらなきゃガーベラさんの勝ちに繋がらんし、そもそも逃げられんし。

 やりますかぁ。

「まずは・・・」


 こういう時、勢いよく飛び出すのは愚策。


「こいつはちょうどいい!こいつを狩ってポイントを献上してやる!」

「・・・は?」

 マイコ―が飛び出していった・・・


 マイコ―!?


「おいおい、バカかお前!!」

「うるさいぞ、クソガキ!!」

 抜いた剣を中段気味に構えて、真っ直ぐ突っ込んでいっている・・・

『ほう』

『なかなか気骨がある男だな』

「あれは気骨があるって話なのか?」


 ジェシカにも教えたが、まずは観察。

 どんな相手なのか分からない今、無暗に突っ込んでも攻撃をもらうリスクを高めるだけだ。

 全てを把握できなくても、ざっくりとした特徴と弱点を見つけられれば、リスクをいくらか減らせる。

 そりゃあ、あいつみたくとにかく突撃ってのは男らしいとは思わなくもないが、あいつも俺も初見のモンスターだろうし、無謀というか何というか・・・


「一人飛び出していったぞ!撃ち方やめぇい!!」

 弓兵の攻撃を止める。

 前線の人間を攻撃しても意味がないし、当たり前と言えばそうなんだが、

「今のうちに後退しろ!!」

「・・・は?」


 今、何て言った?


 後退しろって言ったか?

 マイコ―と俺が交代するとかじゃないよな?

 たぶん、後ろに下がるの後退だと俺は思ったんだが?


「死にたくなければ急げぇ!!」

 現場監督を含めて、我先にと他の連中が逃げ出していく・・・

「おいおい、あんたらもいくんじゃないのかよ!?」

「勇気ある若者に出番を与えるだけだ!!」

「えらく聞こえが良い風に言ってるけどよ、単純に逃げるだけだろそりゃ!?」

「小僧が偉そうな口を利くではないわ!!」

 無茶苦茶言うなぁ、このオヤジ・・・!

「キリヤ、捨て置け」

 オニキスがいつの間にか俺の側まで寄ってきていた。

 どんな機動力してんだ、この男・・・

「所詮雇われた、数合わせの連中だ。自分の命を最優先にするのは当然のこと。他国の・・・もとい、自分以外のために命を懸けるなど、するわけがない」


 ・・・確かに、連中はヒト族だ。マーガレットに雇われている連中には違いない。

 ガーベラさんも言っていた。金さえ手に入れば後は現場に出るだけ出て、時間を潰すだけ。そういう連中が多い、と。

 こいつらも所詮はそのクチか。


「まあ、飛び出していったあいつ・・・名は知らないが、あいつもそうだし、連中も使わせてもらう」

「使う、とは?」

 若干、オニキスの意図が読めないんだが・・・

「はあああっ!!」

 遠距離攻撃が止まって、マイコ―がモンスターに接近戦を挑んでいる。

「バスターソード!!」

 クラッシュソードの上位技を、

「カアァアッ!」

 グリーンコアトルを目掛けて繰り出すが、あいつのほうが素早い。避けられてしまう。

 あいつ、結構耐えてるし、攻撃を繰り出す余裕はあるみたいだな・・・

「あいつらが良い囮になってくれる」

「カッ!!」

 マイコ―へ尻尾を振り回し、距離を取ったグリーンコアトルが、走って逃げる他の連中を目掛けて突っ込んでいった・・・!

「ぎゃあああ!?」

「ぐわあああ!?」

 一回の突撃で二人ぶっ飛ばし、

「アクアショット!!」

「カアッ!!」

 どこかの魔術師が撃ち出した水魔法を跳んで避け、

「カアアァァァァァッ!!!」

 その勢いのまま跳び込んで、仕掛けた魔術師に体当たりをかます。

「ぐはっ―――」

 ぶっ飛ばされた魔術師は勢いよく木に打ち付けられてしまい、そのままぐったり倒れ込んでしまった。

 防御も間に合ってなかったし、単純に打ち付けられている・・・かなりのダメージが入ったか。

「カアアァァァァァッ!!」

 グリーンコアトルは逃げ回る連中に仕掛けて、次々に倒している。

「キリヤ、お前は理解しているように見えるが、足りないこともある。それを今から伝えてやる」

 オニキスはグリーンコアトルを目で追いながら、

「あいつを観察することはできている。それに加えて、自分の状況を把握しろ」

「自分の状況・・・?」

「今の自分がどういう状態なのかを瞬時に把握するんだ。お前さん、結構体力を使ったろう?」


 ・・・言われてみりゃあ、確かに。


「そこまで酷くはないが、呼吸が早い。基礎体力のスキルを持っているかどうかは分からんが、ここに来るまでに結構消耗したんじゃないのか?」

 接敵してから割と走ることが多かったし、木と木を跳んで移動してきたから瞬発的に使う体力も多かった。

 俺はアスリートでも何でもないただの高校生・・・体力なんてそんなにない。

 オニキスが言った基礎体力スキル・・・あれをレベル3まで上げた効果で今の状態で済んでいるってところだろう。取っておいてよかった。

「さあ、分析しろ。お前さんなりにな」

 どういうわけか、グリーンコアトルはこっちを狙っていない。

 なら、落ち着いて観察できる。

「さて・・・じっくり見させてもらおうかな?」

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