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9-5

「あんたもしつこいなぁ」

 振り切ったと思ったが、

「お前を放っておけば何が起こるか分からん。ここで倒す」

 マイコ―・・・いや、マイケル。


 こいつが立ちはだかってくるか。


「しつこい男は嫌われるらしいぞ」

 しかし・・・こいつ、よく追いついてきたな?

 機動力を上げてるし、人を避けてきた分、俺のほうがだいぶ速いと思ってたんだが、

「お前程度の小僧に後れを取るほど、俺は甘くないぞ」

「へえ、そりゃあ結構なこった」

 こいつはこいつでなかなかやるっぽい。

 いっちょ前にチームの頭をやっているだけのことはあるってことか。


 感心できる点がないわけじゃあないにしても、今は邪魔だ。

 いや・・・こいつらが邪魔じゃなかった時はなかった気もするが、とにかく邪魔だ。


「グ、グウゥゥゥゥゥ・・・!!」


 目の前にはガノダウラス。

 一太刀でも入れてパスポートに回収権利を付与させないといけない。


 あとちょいのこの場で、こんな頭のおかしいヤツの相手に時間を取られるわけにゃならんのよ。


「あんた、一応尋ねておくけど・・・この狩猟祭のルールは知ってるのか?」

「無論だ」

「なら、相手を傷つけちゃダメってことくらい分かるよな?」

 マイコ―は剣を抜いていた。

 斬る気満々じゃねぇか・・・

「モンスターの討伐は記録されるが、人間はされない。今ここで何をされようと、死体が見つからない限り誰も分からん」

「ははぁ・・・なるほどなぁ」


 つまりは殺すよ、ってことな?


 あれ?こいつ、こんなキャラだったっけ?

 頭がいいようには思えなかったのは間違いない。第一印象は”自己中心的で自分の利益だけしか考えない、いけすかないヤツ”って感じだったが、根はこういうヤツだったってこと?

 まあ、大した付き合いもしてないし、そういうところが分かるわけないんだけど、知っちまうと思うところがあるなぁ・・・


「どうでもいいか、うん」


 友達になれるわけでもないし、なりたいわけでもないし、向こうから頼まれても断るが。

 こいつのことはどうでもいいわけだし、さっさとガノダウラスに接触したい。

「・・・む」

 軸足の位置をずらすと、マイコ―が気付いて進行方向を塞ぐ。

「逃げられると思うな」

 イケおじといいこいつといい、地味に上手いな。

「背後も取ったぞ」

 いかん。イケおじたちが追い付いてきてしまった。

 前も後ろも塞がれた。

 が、

「あんたらさぁ、ちょーっと勘違いしてるよ」

「何?」

「俺は逃げも隠れもしてないぞ?」

「木の上をちょろちょろ逃げ回ってたろうが」

「あれは逃げるのとはちょっと違う」

 後ろ・・・イケおじは攻めてくる気はなさそうな感じがする。

「いつでも倒してあげるからねぇ!!」

 一方の語尾が怪しい魔術師の女・・・あいつはやる気満々だ。

 こういう時はずっと黙ってて不意打ちを仕掛けるほうがいいと思うんだけど。


 今気にしておくのは、前のマイコ―と後ろの魔術師。

 一応、イケおじとヒーラーの二人もいるが、特に仕掛けてくる様子はない・・・

 

 それから上で狙っている弓兵か。

 厄介なのはこっちか。上を押さえられているのは結構しんどい。上への脱出手段を封じられちまうし、動きを制限される。


「ま・・・やるならやるで容赦しないけどな」

 鞭を抜く。

 どんな状況にしても、やらにゃしょうがないわけだしな。

「こいつは痛いぞ」

 きっちり試運転してないから加減ができるかどうか分からないが、物理的にも、効果的にも痛いのは間違いないから伝えておく。

「お前らも俺を殺す気で来るんだろ?だったらやり返されても文句は言えないよな?」


「グゥゥッ!?」


「んん?」

 なんだ?

 急にガノダウラスが変な反応したな・・・?

「お前が俺たちを倒せるっていうのか?」

「ん?あ、おう」

 あれ?俺だけか?違和感を覚えてるの・・・


「どうした?」

 ガノダウラスの側にいた大柄の男がやってきた。

 ちょっとした格闘家くらいの体格で、甲冑も随分と豪華・・・

「敵の尖兵です」

「ほう」

 斧を持っている・・・戦士系の可能性は高いか。

「随分と若いな」

「そうかい?あんたはそうだな・・・いいトコ、四十代前半ってところかな?」

 詳しいこた分からんが、戦士系で丸い耳の種族、この現場の監督・・・って感じか?

「生意気なガキだな」

「よく言われ・・・言われたことないかな」

「こいつはガーベラ陣営です」

「あの女のか・・・」

「あんたは傲慢とか言われてるんじゃないか?そっちの剣士もだろ?」


「グウッ!?グゥゥア・・・!!」


 やっぱりだ。何かがおかしい。

「やっぱり生意気だな・・・!」

 ガノダウラスが何かリアクションをしている。

 締め付けられて中、必死にもがいて脱出しようとしてるって感じにも見える。

 だが、それにしちゃあ強いイメージだ。


 どっちかっていうと、必死にもがくっていうより、耐えかねない何か・・・って感じか。


「貴様はすでに包囲されている」

 何にせよ、目の前で何かが起こっていることには間違いない。

 撒いてきた連中も追いついてきた。

 木の上には弓兵が弓に矢を番えて臨戦態勢。

 目の前のマイコ―と現場監督、後ろのイケおじと魔術師、特にリアクションもないヒーラー。

 確かに包囲されちゃいるが・・・

「・・・なるほどな」


 そういうことか。


「あんたらにイイ知らせと悪い知らせがある。どっちから先に聞きたい?」

「・・・何?」

「どっちがいいんだ?どっちにしても両方言うけどな?」

「貴様に発言する権利はない。このまま黙って斬られてもらう。それだけだ」

「じゃあ、俺が勝手に話すだけだ。イイ方を先に言ってやる」

 この傲慢さ・・・普段接する分には鬱陶しいが、今はちょうどいい塩梅だ。話す時間が得られる。

「あんたらはここで俺をボコボコにできる。イイ話だろ?」

「お前ごとき倒したところで、何の価値もないけどな」

「悪い方は・・・」


 ボシュッ!!!


「なっ―――」


 俺たちの目の前からガノダウラスが消えた。


「あんたらの仕事は終わったってことだ」

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