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9-2

「修行かい?」

「ああ、その通りだ」


 目の前にはイケおじ、その背後に剣士、その裏に頭の悪い魔術師とピンクボブの女・・・

 包囲網が着々と仕上がっていっている。

 こんなところで立ち止まっているわけにはいかないが、今すぐどうこうできる感じでもない。


「あんたらにしちゃあ、随分殊勝じゃないか?」


 とにかく、イケおじをかわさないことには話にならん。

 ちょっとでも隙を作る必要がある。


 ここは観念した雰囲気を出しつつ、こいつらの話に乗ってやろう。


「しかし、何でまたこんなところに?」

「それはお前らのせいだ」

「俺らの?そりゃまた何で?」

「お前らが狩猟勝負で姑息な手段を使って勝ったからだろうが!!」


 あっちゃー・・・こりゃあ随分お冠だ。


「あの狩猟勝負の後、俺たちはボルドウィンで活動を続けた。だが、行く先々でお前たちとのことが噂になっていて、動きづらくなった」

「ああ、おう・・・」

 あの件、噂になったのか・・・


 そりゃまあ、そうなるか。

 冒険者だけで勝手にやったことならまだしも、協会も一枚噛んじまったし、あの場には相当な人数がいた。それに加えて、こいつらも地味に評判が悪いから、そういう意味合いでも話題になったはず。

 それに、こういう噂は伝わるスピードが速い。

 あれから結構時間は過ぎたが、あの場にいた連中があっちこっちに言いふらすことだって当然ある。

 他人の不幸は蜜の味とも言うし、こういう話題が好きな連中もいるだろう。


 だが、

「それはそれとして、あれは別に俺らが悪いわけじゃないだろ?」

 俺らは俺らなりに正々堂々とやったつもりだ。

 ルールの追加のことに関しちゃグレーなところはあったろうが、支部長の爺様含めて協会が許可したわけだし、

「文句あんならあの爺様たちに言えよ」

「言うことは言ったんだが、問題ないの一点張りでな・・・」

 おう、垂れたのか。

「ってか、あんたも文句言うんだな」

 イケおじのキャラからして、そういうところでごねないと思っていたんだが。

「俺は言わんが、あいつがな」

 やっぱり文句を垂れるのは剣士のほうか。

 あいつは自尊心だけは立派だしなぁ。

「行く先々で後ろ指さされるしぃ」

「悪い話ばかりが通っていて動きづらいのもあったね」

「だから活動しづらくなってな」

「うんうん、そりゃそうなるよなぁ」

 悪い噂が立つってことは、そういう風になっていくだろうよ。

「他人事だな?」

「そりゃまあ、他人だしな?」

 別にこいつらは友達でも何でもないし、何なら揉めたわけだし、冷たく突っぱねても文句は言われないと思うんだが。

「それはまあそれとして、今度はアレか?マーガレットの飼い犬か?」


 白い腕章をしてるし、ガノダウラスがいるほうにいるわけだし、マーガレット陣営だってことは分かるが、何であっちに付いているのかが分からん。

 何がどうなってあっち側に付いてるんだ?


「払いがいいからな」

「あー、おう」

「ガーベラとかいう女にも誘われたが、マーガレットのほうが払いがいい」

 ガーベラさん、こいつらにも協力を持ちかけてたのか・・・

 まあ、協力者は多いに越したことはない。越したこたないんだけど、こいつらはなぁ・・・

「働かなくても二百万フォドルとか、楽な仕事だしぃ」

「なるほどなぁ」

 他のメンツはどうかは知らんが、頭のおかしい女はそこがメインかな?

「あんたらはどうなんだ?」

 剣士と魔術師の考えは分かった。

 他の二人・・・イケおじとピンクボブはどうなんだ?

「・・・俺はリーダーに従うまでだ。払いはどうでもいい」

「・・・別に」


 こいつらはこいつらで同類・・・いや、違うか。


 イケおじは金のことを気にしちゃいない。それは本音のような気がする。

 立ち振る舞いが他の三人とは違う。歳もそこそこ離れてるってところもあるとは思うが、落ち着いて見える。


 それからピンクボブ・・・こっちはこっちでちょっと違う感じがする。

 金とか名誉とか、そういうのを求めているようには思えない。もちろん、確証があるわけじゃない。俺の勘みたいなもんだけど。

 相変わらず笑いの沸点が低いのは気になるが、こいつは何でこいつらと一緒にいるんだ?


 まあ、他の二人の思惑は分からないし、今はどうでもいい。

「結局あんたらも大したモンじゃないってこったな?」

「・・・なに?」

「だってそうだろ?」


 全員がそうじゃないだろうってことはあっても。

 金にばっかり目が眩んで、大義も何もない。

 吸えるだけ旨い汁を吸って、後はどうでもいいっていう連中と一緒だろ。


「あんたらみたいなやり方を否定するつもりはないけどな。楽に儲かって楽するっていう典型的なヤツだよ。だけどな、気持ちがいい生き方はしてないぞ?そういう自覚はあるか?」

「気持ちがいい生き方だと?」

「これから先、こういう稼業で稼ぐってんなら、今回の件も尾を引くって覚悟はしとけよ?」

 ここにいる連中が全員味方ってわけでもない。何かあれば言いふらす。

 ダメな内容の時は特にな。

 俺たちと揉めた件で尾を引くくらいだし、今回の件も噂になれば引くだろうよ。

 そうなったらいよいよ活動しにくくなる。シルフィにもいられないってなったらどうするんだ?

 まあ、こいつらの心配をしてやる必要も義理もないが、

「バカなお前らを負かしてやるぜ」


 ここでじっとしてたってどうしようもない。

 一発かましてやりますかぁ。

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