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『小僧、俺が指定したスキルは覚えているんだろうな?』
軽くランニングする程度のスピードで先に進んでいる。
途中、マーガレット側の奴らがちらほらいることがバードアイで見て分かったから、隙間を縫うように進んでいっている。
「そりゃまあ、お前がしろって言ったんだから、するだろうよ」
『そういう態度が気に入らん』
コイツ・・・!
『アイオロス、少年は指定のスキルを覚えている。問題はない』
『なら良い。さっさと課した試練を達成しろ』
「あのなぁ、俺も今は忙しいんだよ!あんたら神様連中のお遣いもしながら、目の前のしょうもない状況も片付けなきゃならんわけで、大絶賛奮闘中なんだよ!ちったぁ空気読め!」
こういう性格だって分かってても腹が立つもんは立つ!
まだアポロが間に入ってくれてるからまだマシなものの・・・!
『ふん・・・まあ、励むことだ』
・・・しばらくは様子見か?
それにしてもあの性格はどうにかならんのか?
『少年、自分でも言っていたことだが、目の前の状況に集中したほうが良いだろう』
「一応、アポロは味方寄りか?」
『敵という見方をした覚えはない」
「・・・まあ、確かに」
敵だったら神力を与えるなんてことはしないし、認めていないだけで、それでも割と協力的だったとも言えなくもない。
素直に協力してくれていたなら尚可愛らしかったと言ったところだが、言うだけ無駄なこと・・・
とりあえず、今はこっち寄りなスタンスなわけだし良しとするか・・・
『この先はどうする?敵の層は厚くなっていくぞ』
問題はそこだ。
今はどうにかかわしているものの、近くなればなるほど人員は増えていく。
当然、警備でうろうろしている連中も増える。
いずれかわしきれなくなる。そうなった時どうするのかって話だ。
「・・・そうなった時は」
バードアイで見える連中の数は相当なものになった。
きっちりローテーションが組まれていないからか、動きがバラバラなのも困る。
それに、
「お前、どこの警備の者だ!?これより先に進むな!」
上から狩人も見張っるときたもんだ。
すでに四方と上に敵がいる状況になっている・・・
なら、することは一つよな。
「こうよ!!」
更に突っ込む!
「ま、待て!!」
「うるせぇ!!」
上の連中は無視して、先に進む!
「なんだ!?」
「あれ?ウチの腕章のヤツだろ?何やってんだ?」
周りのヤツも気付いたが、そんなこたどうでもいい。
とにかく奴らの目を引いて、更に突っ込めばいい!
「ちょいと邪魔するよ!」
こっちに視線を集めれば、オニキスが進みやすくなる。
*
「お前さんは速さもある。どういうわけか周りを見る目もある。そしてヒト族ときた。この役はお前さんにしかできん」
「・・・マジか」
*
俺の役目は潜入。
連中の接近戦専門はヒト族が大半。エルフ族は少数だから、顔を覚えている可能性もある。オニキスはこの役目は不向き。
そして、それが難しくなったら陽動に切替え、できるなら自分で叩く!
俺の技量を超えた内容だってのは間違いないが、やらなきゃしょうがないってのもまた事実・・・
なら、やるだけやってやりますよっと!
「待てェ!!」
「待てと言われて待つ悪いヤツはなかなかおりませんよっと」
どんどん人が集まってくる・・・!
『層が厚くなっているな』
「人気者は辛いねぇ!」
バードアイを使いながら走る。
進行方向・・・ガノダウラス側に人が集まっていっている。
これなら、オニキスが進みやすくなるだろう。
あとは俺の安全が欲しい!
「複製!」
久々に使う複製。
対象はポーチから取り出したバチの実が入った小さい巾着だ。
こいつを一つから五つに複製して、
「ほらよっ」
一瞬で振り返って、それらを後ろの連中に向かって投げ、
「更にっ」
宙を舞う巾着に向けて、
「フレアバレット!」
ぎゅううっと凝縮した炎の弾・・・こいつを巾着に向けて発射!
火炎弾は巾着に着弾!
巾着は大きく破裂して、更に誘爆する形で他の巾着も破裂する!
「うおっ!?」
「わあっ!?」
後ろから追っかけてくる連中の勢いが一瞬だけ止まったか?
この隙はうまい!
「次はこいつを!」
肩掛けしているロープを複製・・・!
複製したほうのロープを取って、
「トラップ!」
適当な木と木に設置・・・
追加でバチの実入り巾着を複製し、
「おかわりはどうだい?」
ロープの向こうへ投げ、フレアバレットで破裂させる!
「こいつ・・・!魔術師なのか!?」
「いやいや、そんなイイもんじゃないっすよ」
炎魔法初級も覚えた。
こういう使い方もできるかと思ったし、火打石が機能しないレベルの環境で火を起こす場合も想定していたが、後者じゃなく前者で使うことになるとは・・・
「うおっ!?」
誰かがトラップで仕掛けたロープに引っ掛かって転倒した。
「こんなところに罠を!?」
「いつの間に!」
「思いの外時間があったもんで」
バチの実の炸裂巾着のおかげで、目くらましができた。
『なかなか上手いものだ』
「褒めてくれてありがとうよ」
ちょっと息がつけた。
『後ろは時間を稼げた。前はどうする?』
「ちょっと早いけど、アレをやりますかぁ」