3
「あら、帰ってきましたね」
「おっせぇよキリヤァ!!」
「悪い悪い」
作戦を立てた後、真っ直ぐ広場に戻ってパーティに合流。
「全員揃ったところで行くか。時間は待ってくれないぞ」
あれだけ広場にいた人間が減っている。
そんな長時間不在にしたつもりはないが、戦闘職は粗方出払ったと見てもいいだろう。
数百人が動いているわけだから、小型、中型くらいは粗方取られてしまうかもしれないな。
「行くは行くんだけど、ちょいと別行動を執らせてもらえるか?」
全員で行きたいところだが、難があることもある。
「は?どういうことだよ?」
「話してる時間も惜しい。終わったら合流する」
連中もバカじゃない。
恐らく、討伐対象の捕捉から狩猟、討伐から帰還するまでの時間は考慮しているはず。あまりにも早すぎると違和感を覚えられるだろうし、遅すぎるとポイントにならない。
ガノダウラス一頭を討伐するとなると、最短でも一日、長くて二日くらいか・・・
とにかく、今日中、しかもなるべく早くに討伐する。
そのためにはスピードが必要だ。
「おいおい、どういうことだよ!?」
「さっきも言ったろ?時間が惜しい」
ドッシュに飛び乗って、
「ガーベラさん陣営が準備する予定の野営地の場所は覚えてるな?日が暮れてきたらそこを目指せ。そこで合流しよう。さあ、行くぞ!」
手綱を引いて、
「あっ、おい!!」
「無茶はするなよ!!」
ドッシュを走らせた。
「ヴェロニカ、オニキスと一件仕事をしてくる。長期戦にはならないと思うけど、マーベルさんと情報共有して、みんなを上手く動かしてくれ」
「了解!気を付けるんだよ~。お母さん待ってるからねぇ」
「誰がお母さんだよ」
ヴェロニカに状況を伝えておけば、マーベルさんと協力してパーティを動かしてくれるだろう。
こっちはこっちの仕事に集中しないとな・・・!
「ちょいと無茶な指示をするかもしれないけど、付き合ってくれ」
「ギャ!」
ドッシュも久しぶりの出番で気持ちがノッているって感じらしい。
走りにも力が入っている。
「おー、やってるやってる」
指定ポイントに向かって走っていく途中、あちこちで戦闘が繰り広げられていた。
どこの陣営の誰かなんか知らないが、
「おらぁ!!」
緑色の皮膚をした小さいゴブリンと戦っているヤツもいるし、
「食らえェ!!」
「腕の振りに気を付けろ!!」
討伐した経験があるデントオーガと戦っているヤツらもいる。
その他大勢が、それぞれのモンスターと戦っている。
本来なら俺もモンスターを狙いに行くべきなんだろうが、今はそれどころじゃない。
俺個人の用事も大概だが、どうせやるならガーベラさんに勝ってもらいたいってのも本音だしなぁ。
「あっちに行ってくれ」
「ギャ!」
ドッシュに進行方向を指示する。
オニキスとの合流場所はみんなと合流する場所と一緒。
ガーベラさんが準備してくれる野営地だ。
オニキスから事前に、ある程度人目がつかないルートを教えてもらっていた。
今回はマーガレット一派に気付かれると面倒だし、素早く、かつ人目につかないように進まないといけない。
事前情報もありがたいが、今はバードアイもある。
これを使えば、より人がいないルートを調べられる。アポロ様様だわ。
「・・・アレか」
バードアイで周辺の状況を確認していく中で、指定ポイントまで見える距離まで近づいた。
地面に伏せているガノダウラスが見える。
「どういう状況だ、これ・・・?」
地面に伏せているって、どうやってるんだ?
無理矢理抑えつけられているってのは分かるけど、その方法よ。
「・・・状況を把握しないとな」
より接近して情報収集だ。
ガノダウラスは相当痛めつけられてるな。
武器の傷も大概あるが、魔法による裂傷も目立つ。ってことは風魔法か、ヴェロニカみたいに氷魔法でやったのか・・・?
更にクローズアップしていくと、大量の矢が全身に突き刺さっているのが分かる。
ってことは魔術師と狩人が大勢いるってことになるが、周りに群がってる連中がいる。
弓持ちじゃないってことは魔術師だろう。
・・・十、二十、三十・・・五十人くらいはいそうだな。ざっくりだけど。
弓持ちは魔術師連中とは離れたところにちらほらいるようだ。
位置はばらけているものの、単独、もしくはツーマンセルでガノダウラスを囲うように配置されている。こっちも数十人くらいはいそうだな・・・数えるのが大変だからこっちは細かく数えないけど。
魔術師と弓持ちが合計百人くらい。接近戦職もそれなりにいるように見える。
ってことはガノダウラス相手に十分な戦力を送り込んでいるって判断できるな。
あとは抑えつけている方法を知りたいが・・・
「・・・あれか」
ガノダウラスの口から尻尾に掛けて、黒い縄か何か抑えつけられている。まるでロープとペグを使って、上から打ち付けているみたいだ。
これはたぶん、スキルの力だろう。
「・・・これか」
パスポートを確認してみると、それっぽいスキルがあった。
バインドだ。こいつを使ってガノダウラスの身動きを封じているんだ。
体だけじゃなく口も封じているのが上手い。火炎放射を封じるだけでも大きい。
しかしまあ・・・これはこれで可哀想な気もしなくもない。
動くこともできず、死ぬことも許されない。
生殺しってやつだろう、これは。
いくらこっちの都合だとは言っても、相手がモンスターだとは言っても、これはなかなか惨いよなぁ。
綺麗な顔をしていても、エルフ族もやることやってんな・・・
怖い怖い。
「さて・・・」
相手の戦力も大体把握したし、オニキスと合流するとしよう!