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20-3

 ―――狩猟祭まであと二日。


 リオーネがマーガレット側についたことは全員に伝えた。

 伝えてもリオーネは恨まないだろうと思ったし、知る権利があると思って。


 最初こそはジェシカは文句を垂れていたが、少ししたら飲み込んだらしく、静かに訓練用丸太人形に向き合った。

 キースは単純に残念そうな感じはしたが、そこはすんなり受け止めていた。

 それぞれ仲は悪くなかっただけに、何かしら思うところはあるかもしれないが・・・


 一方、マーベルさんはいつも通りだった。

 元々、商売ついでに俺たちにくっ付いてきているだけだし、今までに何度もそういうことを経験してきていることもあるだろう。特に感想もなかった。それはそれでドライかもしれないが・・・


 ヴェロニカが残念そうにしていたのは意外だった。

 いくらお世辞とは言っても、可愛いと言ってくれていたことを評価していたんだろう。ちょっとした時に話しかけてくれていたのも印象深いのかもしれない。


 こんな風に考えるのが冷たいって話にもなるんだろうが、いなくなったヤツのことを考えても仕方がない。

 今持っている人員と実力以上の力は出せない。

 上手く立ち回れるように考えておかないといけないわけだが・・・


「おお、待っておったぞ!」


 ―――工房・ハリスン。

 街の外れにある武具屋である。


「どうも、お世話になります」

「おうよ!まあ、入れ!」

 ウォルター・ハリスンという爺様が、この工房の主だ。

 歳は七十歳くらいらしく、エルフの割にしっかりした体つきをしている。

 この爺様がガーベラさんと懇意にしていて、俺たちの武器の強化や製造に協力してくれた。

「どうにか間に合わせたぜ!」

 とにかくこの爺様、元気いっぱい。

 地球でも元気なご老体はたくさんいるが、この人の場合はレベルが違う。まだまだ現役だし、声の貼りは素晴らしい。

 ・・・若干うるいさいが。

「助かります」

「おう!まずは防具のほうだな!」

 何にせよ、この爺様と工房の職人たちがいなきゃ、武具の強化どころか、素材と金を小悪党どもに奪われてどうしようもなくなっていた。

 ガーベラさんもそうだが、爺様にも感謝しなきゃいけねぇな。

「まずは格闘家のほうじゃ!」

 ジェシカ用の手甲と防具が運ばれてきた。


 ジェシカはガノダウラスの素材を使った手甲と防具を作ってもらった。


 ガノダウラスの骨をベースに、爪や皮を利用した格闘家用の手甲。

 そして、上半身と腰部、肩回りなど、致命傷を避けつつ動きを阻害しないように設計された専用の防具だ。


「装着しろ!」

「分かったよ。いちいちうるせぇな・・・」

「うるさいのはお前じゃ!」

「はいはい・・・」

 いつもはうるさいジェシカも、爺様相手だとタジタジ。

 これはこれで面白いが。

「ほら、付けたぜ」

「おお、どれどれ」

 爺様がジェシカの装着状態を確認。

「うむ、取り付けは悪くないな!」

「うっし、やってやるぜ!!」

 シッ、シッとシャドーするジェシカ。

 金属製よりも軽いのか?前よりも軽快に動けているように見える。

「次はお前さんじゃ!」


 キースもジェシカと同様、ガノダウラスの素材を使った防具を製作。

 ただ、キースの場合はガード主体で動くため、機動性を重視していない。そのため、より強度の高い素材を使い、防御力を高めている。


「うむ・・・ちと腕周りがキツイか?」

「ん?いや、そうでもないですが」

「そこはまだ調整が可能だ。一旦外せ」

 本人は気にしていないようだが、細かいところまでチェックしているな・・・

「よし、これで良かろう!」

「おお・・・確かにしっくりくる」

 調整後の防具を装着したキースは満足そうだ。

「ほんの少しのズレは違和感を生む。積もれば負荷にもなるし、隙になる。一流を目指すならその小さな隙を見逃してはならん!」


 すごい格言だ・・・

 俺は二人みたいにしっかりした防具じゃないからそう気にすることもないだろうが、言われてみればその通りと思える。気にしておくことにしよう。


「オーダーがあった盾と剣もできておる!」

 爺様が奥から小さい盾とパラライズソードを持ってきた。

「ガノバックラーじゃ!」

 ベースは骨で、要所に爪を加工した装飾がくっ付いている。

 よくマンガなんかで見るような、人を覆い隠すことができるくらいの大きい盾じゃなく、上半身守れるくらいの小さい盾だ。

「お前さんは盾を使うのは初めてなんじゃろう?」

「そうですね」

「なら、これくらいがちょうど良かろう!」

 キースは防御する際、手甲で受けて凌いでいた。

 だが、腕にかなりの衝撃が加わるし、攻撃によっちゃあ腕ごと持っていかれる可能性もあるし、実際あったこと・・・

 ガードを主体に動くなら、盾はあったほうがいい。

 ってことで今回オーダーしたんだが、爺様なりに考えて小型としたらしい。

 一流の職人ってこういう人のことを言うのかね?

「使っていって慣らしていけ!使っていくうちに好みが出てくるじゃろうし、お前さんの立ち回りが変われば変わってくる!」

「ありがとうございます」

「剣は芯材をガノダウラスの物に交換した!」

 預けていた剣も仕上がっているらしく、

「麻痺効果は強くするのは難しいが、強度と威力を上げることはできたぞ!」

 パラライズバイパーの骨材からガノダウラスの物に交換することで、攻撃しても容易にへたらない強度と威力を手に入れることができたってことか。

 麻痺効果も高まってくれるとだいぶ助かるんだが、それは贅沢を言いすぎか・・・


「最後はそっちの坊主!」


 トリは俺な。

 それにしても言い方よなぁ・・・

「お前さんのランドウィップも強化しておいたぞ!」

 奥から別の職人がやって来て、

「こちらです」

「ありがとうございます」

 鞭を受け取った。

「芯材を変更しただけでなく、ガノダウラスの皮を革紐に編み込んだ!重量が増えてしなやかさがちと落ちたが、威力は上がっておるぞ!」


 重量が増えるってことは疲労が溜まるってこと。

 しなやかさが落ちれば鞭の使い心地が変わる。

 それでも威力は上がってる。


 これをどう取るかは個人の判断によるが、俺にとってどうなるか・・・

 だが、一流の職人が仕上げたモンだ。物は間違いなく良い。


 新しいランドウィップ・・・こいつを使いこなせるかどうかは俺次第だな・・・


「狩猟祭、期待しとるぞ!」


 とりあえず、準備は整った。

 あとは上手く使いこなして大型を狩るだけ!

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