表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

139/152

20-2

 狩猟祭の掟


 その一。

 狩猟期間は三日間。

 狩猟中であっても帰還、再出発は自由とする。


 その二。

 三日間の間に討伐し、国に報告できたモンスターを成果として集計する。

 なお、成果は協会が定めている危険度レベルに応じたものとする。


 その三。

 参加人数は無制限とする。


 その四。

 武器や防具、道具の制限は特に設けないが、他者を傷つけるような物を使用しないこと。


 その五。

 他者を傷つけることを禁ずる。


 その六。

 狩猟中に発生した怪我、死亡に関しては本人の責任とする。


「まあ、そんな感じだわなぁ」


 正直、想定の範囲内。


 期間はそんなもんだろう。

 一日で討伐できる数なんて高が知れている。一週間以上になればかなりハードになる。三日くらいがちょうどいい。

 いつでも帰ってきていいし、また出発してもいいってのも助かる。状況によっちゃあ帰還せざるを得ないだろうし、まだ余裕があるからもう一頭ってのも選択できるかもしれない。


 とにかく、他人を傷つけないこと。

 最低限、ここだけは守れってところが制定されているのも助かる。

 中にはどさくさに紛れてトラブルを起こすヤツも出てくるだろうから、気休めのルールなんだろうが、無いよりはずっといい。


 割と自由なルール・・・これは作戦を考えておかないと大変かもしれない。

 ガーベラさんの話だと、当日はオニキスも参加させるらしい。

 事実上、ガーベラさん陣営の最強カード・・・と捉えてもいいだろう。オニキスとも打ち合わせができればより良い動きができるかもしれないが、あっちはあっちのやり方があるだろうし、この辺りは何ともだな・・・


 まあ、何にせよ、装備が仕上がるまで、狩猟祭が始まるまでに時間はある。

 スキルの練習も必要だが、作戦も考えておかないとな・・・


「キリさんやい」

 ガーベラさんからルールを聞き、参加手続きを進めてもらうように依頼した後、俺たちは訓練場に移動。

 一通りスキルの確認と習熟訓練を行い、軽く立ち回りの確認をして宿屋へ。

 話を聞くだけだったし、そんなに時間も掛からなかったのもあるが、ガーベラさん自身の仕事がそこそこあるってんで、早々にお暇した結果だ。

 宿屋に戻って、風呂に入って飯を食って、もうそろそろ寝るかなと思っていたら、

「どうしたんだいヴェロニカさんや」

 ヴェロニカも何かあるのか?

 眠たそうにしているくせに。

「表に行ってごらん」

「表・・・?」

 ・・・宿の外か?

「・・・分かった。ちょっと行ってくる」

 何もないのに表に行けとは言わない。

 声のトーンからして危険なことじゃないし、危ないなら危ないでマーベルさんにも知らせるだろう。

 散歩くらいの気持ちで宿屋を出てみると、

「久しぶり」


 リオーネが表にいた。


「おお、元気そうだな」

 首都にやって来た日依頼だ。まだ一週間も経ってないと思うけど。

 割と元気そうに見えるから安心した。

「みんなは変わらず元気?」

「まあ、それなりにやってるよ」

 ジェシカとキースも変わらないし、何ならヴェロニカも必要以上に隠さなくてよくなったおかげで更に元気になった。

「それはそうと、どうした?」

 もう日も暮れたし、

「何か用があったから来たんだろ?」

 何か無ければ来ることはないだろう。

「・・・私、皆と一緒に狩猟祭に出られなくなっちゃって」

「・・・ほお」


 てっきり一緒に行くもんだと思っていたが・・・


「一応、聞こうか?」

 随分と実家の滞在が長かったし、途中で合流する様子もなかった。

 何かあったと思うのが普通だよな、これの場合。

「実家がマーガレット様を支持するらしくて、私もそっちのほうに参加しなくちゃいけなくなって」

「・・・なるほど」


 ベネット家はマーガレット推しか・・・


 そりゃあ、別にどこを推してくれても構わないんだが、

「私はああいう人だってことを伝えたから、ガーベラさんに付いたほうがいいって説得したんだけど、末端の小娘の話なんか聞いてくれるわけもなくて・・・」

 それもまあ・・・そうなるかなぁ。

「だから、ごめん」

「・・・ま、しょうがないだろ」


 としか言えないのが現実だな、こりゃあ・・・


「リオーネはそっちでがんばればいい。俺たちのことは気にするな」

「でも、せっかく仲良くなれたのに・・・」

「別に袂を分かつわけじゃないだろ」

 親や兄弟を心配するし、有名なとこの子故に簡単に枠から外れるわけにもいかない。身内のために動かないといけない時だってある。

 パーティから離れることはあっても、今まで一緒に歩いてきた思い出と関係性が無くなるわけじゃないだろ。

「頼りになる白魔術師で戦友。それはどこにいても変わらないよ」

「・・・ありがとう」

 リオーネはぽろぽろと涙を流していた。

 結構、がんばったのかもしれないな・・・

「こっちこそありがとうな。色々助かった」

 リオーネと握手を交わす。

「狩猟祭は出るんでしょ?」

「ああ、話を聞いた以上はな」

「気をつけて。マーガレット陣営はやることはやるわよ」

 取り様によっては、俺たち自身も危なくなるって感じにも取れる。

「分かった」

「今のところ騎士団も含めて、最低でも五百人は投入できるって話みたい。ガーベラさんがどうかは分からないけど」

 最低でも五百人か・・・

 投入できる数は大いに越したことはないが、気になるのは編成だな・・・

「お互い、上手くやろう」

「そうね。それじゃあ」

「おう」

 リオーネが去っていく。

 あの子なりにできる情報提供・・・いや、謝罪なのかもな。

「だけどもだけど・・・」

 こうなってくると別の問題が発生するなぁ。


 リオーネが抜けるのは結構デカい。


 基本的な火力はリオーネに依存していた。

 ヴェロニカのことを公表できないから仕方がない部分はあったが、他に魔術師がいないからそうなって当然とも言える。

 戦士タイプで致命的なダメージを与えるのもできなくはないんだろうが、今の俺たちの実力じゃあ一撃必殺とまではいかない。


 これはしっかり作戦を考えておかないとなぁ・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ