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19-6

「今日はなんだか忙しかったねぇ」

「全くだよ・・・」


 全ての用事を終わらせて、俺たちは宿屋に戻った。


 本来の目的だった装備の強化と製造。

 別のメイドさんに案内された工房で依頼することができた。


 大きい工房っていうわけじゃあなかったが、職人たちが使い込まれた道具を使ってテキパキ作業をしていた。

 工房に並べられていた武器と防具の質感も良さそうに見えたし、アクセサリーや日用品も取り扱っているみたいで守備範囲も広い。

 何より、職人たちの目つきがアツい。

 ここを見れば、表通りの武器屋がいかにお粗末だったかってのが分かるし、俺が物事をきっちり見れていないことがよく分かった。


 それよりも、旅の目的地が定まったことが大きい収穫だったかもしれない。


 今まで雲をつかみにいくようなやり方で進んできた。

 何も分かっていなかったからそれは仕方がないとしても、魔族であるということが分かっただけで目的の場所が定まるとは・・・

 まあ、定まったとしても、そこにいるかどうかは分からない・・・ってところは相変わらずだが、ざっくりとした目標ができるだけでもありがたい。シンプルにそこに行けばいいわけだし。


 ただまあ・・・ビューラ大陸は遠いなぁ。

 遠いのが嫌なわけじゃないし、前向きに旅行に行くついでみたいに捉えりゃいいんだが、シルフィからだと真逆の位置は遠いって。

 言ってしまえば、日本からブラジルまで行こうってのと同じだからさ。


 でもまあ、やらなきゃならんってのは変わらないわけだし、この件が終わったらビューラ大陸を目指しますか。


「それにしてもわたしが魔族だったとはねぇ」

「俺が一番驚いてるんですけど」


 てっきりヒト族かと思っていただけに衝撃が大きい。


「ですが、魔法の威力からして魔族であってもおかしくはなかったかもしれませんね」

 そういえば、魔族はラヴィリアの最上位人種だって位置づけだったが・・・

「魔族ってのはそんだけすごいんですか?」

 マーベルさんは小さく頷いて、

「先ほどのお話でも出ましたが、あらゆる面で我々よりも秀でています。まあ、とある能力は張り合える場合はありますが、基本的に高い能力を有していますから、単純に強い、すごいという表現になるのでしょうね」

 さすがは最上位種・・・何でも強い、と。

 そう考えるとずるいよなぁ。平均的にでもいいし、どこか一ヶ所だけでもいいから、能力を分けてほしいもんだ。そうすりゃモンスター相手でももうちょい楽に戦えるだろうに。

 まあ、無いものねだりしても仕方がないが・・・

「特に魔法に関することはすごいそうですよ」

「ほお・・・」

「魔力の保有量も多いですし、ヒト族で一の威力なら、魔族は十くらいは発揮するという話も聞きます」


 軽く十倍かよ・・・


「あくまでも聞いた話ですし、全員がそうだとは限らないですよ」

 噂話なら尾ひれの一つや二つ付くだろうし、仮にそうだったとしても平均的にそうだって話のような気はする。


 だが、それはそれとして、一部は頷ける話もある。


 ヴェロニカの魔法は強い。

 火力もそうだが、範囲の制限はあっても遠隔操作もできるし、転送を応用したワープもできる。

 火力だけなら頑張ればそれなりに出せるかもしれないが、ワープなんかはそう真似できるもんじゃないだろう。やってのけた当の本人も危ないって言うくらいだし、やるヤツはそういないはず。

 今まで突然変異みたいなもんだと思っていたが、魔族だと聞けばしっくりくる。


「うーん。ヒト族で強いっていうのがよかったんだけどねぇ」

 ・・・こいつ、また不思議なことを言い出したな・・・

「一応聞くけど・・・何で?」

「魔族なら強くて当たり前だけれど、ヒト族で強いなら凄いじゃない?」

「あ、おう・・・」


 アレか・・・?一種のブランド力みたいなモンか・・・?


 そりゃあ、そういう一面もあるだろうよ。

 ヒト族なのに地震起こせるなんてスゴーイ!!

 みたいな感じか?


 今更だけどこいつ・・・割と計算してるよなぁ。


「それはそれとして」

 マーベルさんも大概、耐性ついたよなぁ。

 ヴェロニカがこういう存在って知った後は結構ビビり散らかしてたのに。

「行ってみなければ分からないのは変わりませんね」

「マーベルさんも知り合いとかいないんですか?」

「はい」

 顔も広そうだし、知り合いの一人や二人いそうなもんだが・・・

「一応、ビューラ大陸に行ったこともあるのですが、商売が上手くいかなくて」

「そうなのかい?」

「魔族相手に商売をしてみても、露店を出す許可も満足に得られませんでしたし、飛び込みも門前払いが大半でした。そんな状況で商売などできませんからね・・・」

 こりゃあ、相当苦労したんだろうなぁ。

 顔なじみの一人や二人いればと思ったが、これじゃあ厳しいか・・・


 今の話の感じだと・・・魔族って排他的なのか・・・?

 その割にヴェロニカはコミュニケーション能力が高いが・・・

 うーん、よく分からんな・・・


「そろそろ切り上げるかい?明日は例の狩猟の話なんでしょ?」


 明日は正式にガーベラさんに屋敷に来るように言われている。

 どうやら、依頼があった狩猟に関する話らしい。


 そろそろいい時間だし、騒動で疲れたこともあるし、寝ておくことにしよう。


「じゃ、また明日な」

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