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19-3

「・・・何者と申されましても」


 ―――その赤子、何者じゃ?


 えーっと、ヴェロニカのことですか?

 何者なんでしょう?

 正直、俺もよく分からん。


 いやいや、そういうことじゃなくてですね。


 俺とかマーベルさんのことを言ってるんじゃない。

 的確にヴェロニカのことを差している。


「ただの赤子ですけど」


 ただの赤ん坊で通せると思ったが、やっぱ違和感があるのか・・・?

 大人しいからか?ミルクやらトイレやらの世話に無駄がないから?


 確かに普通じゃないのかもしれないが、

「可愛いでしょう?自慢の娘でして」

 マーベルさんも事態を把握して上手いことかわそうとしているが、

「可愛いは可愛いが」

「随分的確に物事を考えているな」

 ・・・オニキスのヤツ、テレパシーでヴェロニカの思考を読み取ってやがったか。

「初めのうちはそう違和感はなかったが、会う度に覚えてきてな」

「・・・例えば?」

「意思が読み取れない」

 そう言えば、ヴェロニカはテレパシー対策をしてるとか言ってたが、

「子供は子供なりに感情がある。もちろん、すぐに泣く子もいれば、その子のように大人しい子もいるが、どんな子でも共通していることがある」

「それは?」

「腹が減った、尿意がある、眠たい、母親を求める・・・なんかが分かりやすいか」


 それはまあ、分からん話ではないけども。


 ないほうがおかしい。

 赤ん坊だって腹は減るし、トイレもしたくなるし、眠たくなるし、母親にかまってほしい。他にも色々あるだろう。

 テレパシー持ちなら、そういうところも感知できる。本来の使い方ではないかもしれないが、そういう風に使うこともできる。

 オニキス・・・使い方をよく理解してるな。

「その子はそういうのを感知できない。まるで層ができているかのように、な」

 精神を読み取れないようにバリアでも張っているのか・・・?

「事情があるんだろうが、気付いてしまっては紐解かないと気持ちが悪いだろう?」

「仮に何かあるとしても、そちらには一切関係がないことでは?」

 あくまでも狩猟の手伝いをするっていう話だから、ヴェロニカのことを伝える必要はない。

 秘密にしているのは事実だが、ここまで確信を持った相手に隠し通すのも難しい。少なくとも、俺にはできない・・・

「大人と遜色のない判断ができて、しかも攻撃の指示も出している。申し訳ないが、把握している以上そのままにはしておけない」

 オニキスが出入口を塞いでいる。逃がす気はないらしいな・・・

「お主らには仕事を依頼している身じゃ。全て信用しておるとまではいかぬが、協力をしてもらっている以上、秘密は守る。どうか、教えてはもらえぬか?」

 なるほど・・・この話をするために、ジェシカたちをわざわざ追い出したのか。

 もっともらしい理由だとは思ったが・・・


 しかし・・・どうする?


 悪いことをしようって感じはない気はする。

 気はするが、内容が内容だし、そうですかって教えるわけには・・・

「まあ、いいでしょう」


 ・・・ヴェロニカさん?


「ほお・・・やっぱりそうだったか」

「こういう声色なのか」

 ガーベラさんとオニキスのリアクションからして、ヴェロニカのテレパシーが伝わっているらしい。

「いいのか?」

 オープンにしたみたいだし、これ以上気遣わなくてもいいんだが、

「ここまで気付いているし、隠し通すのも難しいしね」

 本人がいいならそれでもいいか・・・

 いや、大丈夫か?色んな意味で・・・

「わたしはヴェロニカ。よく気付いたね、隠密の人」

「褒めてくれてありがとう。その辺りは経験の差・・・と言いたいところだが、完璧すぎたから気付けただけだ」

 完璧ってのもダメな時はダメなんだな・・・俺にとってもヴェロニカにとっても良い経験にはなったか。

「一応伝えておくけれど、この事は他言無用で頼むよ」

「それはもちろん、約束しよう。オニキスもよいな?」

「無論です」

「君たちの事は信用するつもりだけれど、何か不都合が起きたらこちらもタダでは済ませられないからね。それも覚えておいたほうがいいかな?」


 ・・・何を言い出すんだ?

 あれっ?この流れは・・・?


「タダで済ませられないとはどういうことじゃ?」

「この間、マーガレットだったかな?謁見していた時に地震が起きたでしょ?」

「ああ、おう」

「あれ、わたしが起こしてるからねー」


 おおぅ・・・それを言っちゃうかぁ・・・

 ってことはだぞ?


「ヴェロニカと言ったか?あれをお主が起こしたというのか?」

「まあ、ちょっと本気を出せばあれくらいはねぇ」

 ちょっと本気を出せば地震を起こせるとか・・・こいつ、実はナマズか何かの化身なのでは?

 ナマズ型の大砲・・・?

「そんな力をスキルで起こせるというのか・・・?それとも君が持つ能力か何かか?」

「オニキスと言っていたね?あなたが言っていたとおり、使えるようにしただけだよ」

 ってことは、地震を起こせるようなスキルがあるってことになってくるが・・・

 いや、今はそんなことはどうでもいい。

「あれは陣を崩すために仕方がないからああしただけで、もうちょっと本気を出せばあの部屋を吹っ飛ばすくらいは簡単だからね」

「・・・それは脅しと受け取ってよいかな?」

 世間的にそういう風に捉えられても仕方がないところだが、

「そういうことだね」

 この人、もう隠す必要ないから本気だな・・・

「一応お伝えしておきますけど・・・この人、ガノダウラスも簡単に吹っ飛ばせますので」

「お、おう・・・ガノダウラスも倒せるのか・・・」

 これもまあ、事実だからな・・・

 ちょっとやそっとじゃ止まらないってことは知っておいてもらったほうがいいだろう。

「無論、口外するつもりはないぞ。教えてくれてありがとうの」

 ガーベラさんは笑顔を見せてくれた。

「実情を知りたいという意味もあるが、興味のほうが強くての。不思議じゃろ?君のような存在は」

「確かに」

 本人が一番分かってないことだからなぁ・・・

「一応、詳しく説明しておこうか」

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