16-3
「うーん・・・」
日が暮れてきたから、練習を切り上げて宿に戻った。
案の定、ヴェロニカの水魔法でビッチャビチャになった。
いや、詳しく言うとさせられた・・・が正しい。
ヴェロニカのやつ、加減はしてくれている。そこは確かにちゃんとしてくれていた。
だが、攻撃することが楽し過ぎて、いかに俺に当てるかってのに集中してしまって、スキルの動作確認がすっぽ抜けてしまった。
弾のサイズ、スピード、威力もバラバラ。完全なランダム・・・
それをオーダーしたのは俺だし、その点を責めることはしないが、あまりにもハード過ぎて練習にならなかった。この点は明日以降に調整しなきゃいけないところだ。
「すっきりしたねぇ!」
まあ・・・ヴェロニカはきっちりガス抜きができたみたいだし、良しとするか。
それはそれでいいとして、本題は回避性能・・・
このスキル、思ったより難しい。
パスポートに書いてある文面は単純なくせして、思いの外発動しない。
避ける動作で発動するものだと思っていたが、どうやらそういうわけではないらしく、バックステップやサイドステップ、前転ですらヒットになってしまう。
なら避けるって意識を強く持てばいいのでは?
なんて思って受けに行ったものの、それも外れ。素直に直撃を受けてしまい、吹っ飛ばされた。
難しいのも大概だが、体がついていかない問題もある。
なかなか発動しないもんだから、水魔法を食らってしまう。
単純にダメージになるわけだから、体はどんどん辛くなる。動けなくなっていくから、次の攻撃も受けやすくなる。
見事な悪循環・・・
これは早々にスキルの発動条件を紐解かないと、狩猟が始まる前に俺が潰れっちまう。
それに、他にも取らないといけないスキルもあるし、そっちの試運転もこなさないといけない。
テンポ良くこなしていかないと間に合わない・・・
これはなかなかハードだ・・・
アイオロス・・・軽く恨むぞ。
「マーベルから状況も聞いておかないといけないね」
「そうだなぁ」
そろそろマーベルさんたちも戻って来る頃合いか?
あの人がそうそう失敗することはないと思うが・・・
「あら、戻られてたんですね」
マーベルさんたちが戻ってきた。
「どうにかなりました。食事の際に報告しますね」
目的は達成したらしい。どれくらい納期を縮められたのかは後で聞くことにしよう。
それはいいとして、マーベルさんの後ろにいるジェシカとキースの雰囲気が気になる。
俺の勘違いでなきゃあ、若干曇っているような・・・
これ・・・確認しておいたほうがいいのか・・・?
また別の問題でも起きたんじゃないだろうな・・・?
聞くのが怖い。
「とりあえず、軽く風呂に入って温もってくる。食堂で合流しよう」
雰囲気がおかしいことは一旦置いておこう。
着替えたとは言っても、水魔法を受け続けて体が冷えた。とにかく温もりたい。
問題を後回しにするつもりはないが、次から次へと持ってこないで欲しいんだよなぁ。
まあ・・・問題じゃないかもしれないし、そうじゃないことを祈るとしよう。
*
「ふむ・・・」
シルフィ首都上空に浮遊物が一つ。
あの男である。
「ここに滞在されるのは面倒ですね・・・」
首都を眺めてしばらく経つ。
目的は当然、キリヤである。
あるのだが・・・
「しばらく様子を見ることにしましょう」
ワープゲートを開け、姿を消した。