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「なんだ、皆起きてたのか」

「まあな」


 夕方に宿屋に戻ると、俺の部屋に全員集まっていた。

 どうやら、支度を終えて出てしばらくして、ジェシカとキースも起きてきたらしいんだが、どこに行くって話をしていなかったから、外には出ずにどのスキルを習得するか考えていたようだ。

 それはそれでいいことだ。ノリと勢いだけで習得しなければ尚良いが、その辺りは後で確かめておいたほうがいいかもしれない。


 で、本題に入ろう。


「キリヤはガーベラさんの話に乗るんだな」

「乗るっていうか、上手く利用するって感じだな」


 本当のところ、選挙はどうでもいい。

 どうでもいいって言うと語弊があるんだが、俺に選挙権があるわけでもないし、仮にあったとしても俺の一票だけでどうこうにはならない。

 とりあえず、大型モンスターを狩るために必要な環境を整えてもらう必要がある。だから頼れるなら頼る。

 まあ、マーガレットよりも待遇はいいだろうし、頼ってくれてる点も悪い気はしないし、ガーベラさんに付くで正解だろう。


「あくまでもこれは俺個人の問題だ。無理に俺と行動を共にする必要はないぞ」

 俺の・・・というより、アポロとアイオロスとの問題に付き合わせるのも悪いしな。

「俺はまあ、断る理由はないけどな」

 キースは割と乗り気か?

「そうなのか?」

「俺も実戦経験を積みたいしな」

 キースはそういう目的で旅をしていたな。

 となりゃあ、こういう話は悪い話でもないのか。

 問題は政治問題に首を突っ込むことになることくらいか・・・

「ジェシカはどうするんだ?」

 こいつは政治問題には関心はないだろうし、シンプルに戦えればそれでいいんだろうが・・・

「・・・この手の問題は簡単に決められねぇな」


 ・・・あら意外。

 モンスターさえ殴れりゃあそれでいいんだよ!!みたいなヤツだと思ってたのに。


「あのな、この問題は案外奥が深いんだぞ」

「ほう?」

 政治問題に関心があるのか・・・?

 それはそれで意外なんだが。

「シルフィ全土の問題だ。地方からの有力者もやって来る」

「そりゃあまあ、そうだろうが」

「マーガレットに付くかガーベラに付くか、それとも他の誰かか。付くヤツ次第で環境はガラッと変わってくるし、あたしらの生活の質も変わる」

 そうやって聞くと、環境の変化のふり幅は大きく感じるが・・・

「傭兵連中に払ってる報酬もそうだ。アレが制定されてから税金がかなり重くなった」

 そりゃまあ、そうだろう。

 今まで払ってなかった内容だし、それも外からどんどん雇い入れて増やしていってるわけだから、余計に重く感じるはずだ。

 払うに値する価値があったなら話は別なんだが、それすらないとなると・・・

「あの件だけじゃねぇけどな。他の貴族連中も取り入ろうと必死になるから、そいつらが納めてる領地もそっちに向かわせようとうるさいし」


 なるほど・・・取り付こうとする連中もいるし、その影響が下々にも広がってくる、と。

 それは他の国でもあることだろう。シルフィだけじゃない。

 もっと言うなら日本もそういうところがあるかもな。今の時代はそこまで露骨じゃないだろうが、水面下では何が行われてるか分かったもんじゃない。


「うちの地元も今頃はマーガレットに付くように話が出てる頃合いだろうしな・・・」

「お前がガーベラさん側に付くと問題が起こるか」

 少なくとも知れたら影響は出てくるだろうが、

「いや、別にあたしはどうでもいい」

「え?そうなの?」

 というわけでもないらしい。

「ご実家に影響が出るのでは?」

 マーベルさんも若干気になったらしいが、

「まあ、出ないわけじゃねぇだろうけど、もうあんまり関係ないしな・・・」


 関係ない・・・?

 いやいや、家のことなんだから、影響ゼロってこたないだろ。


「まあ、あたしのことは気にすんな」

「ちょっと複雑そうだねぇ、この子の家は」

 思考を読まれてるぞ、ジェシカ。余計なことを考えるなよ。こいつにプライバシーってものはない!

「どっちにしても、マーガレットに付いて良いことはねぇよ。付くならガーベラ一択だ」

 そういう面でも俺との思考の差は無さそうで助かるが、

「仮に他にも候補者はいるだろ?」

 今戦えるのはガーベラさんだけって話だった気がするんだが、一応確認しておくか。

「まあ、いないことはないだろうけど、勝負にならねぇよ」

「何で?」

「ガーベラの話にもあったが、この国は美しいヤツが強い。政治手腕はアレだが、美しさだけはマーガレットは群を抜いてるからな。勝負する気持ちと良いマニュフェストがあっても、その点だけに置いては勝てねぇってところかね」

 その美しい者がっていう法律・・・内容的に成立しないと思うが、それでもここでは相当重きが置かれているみたいだな。

 悪いとは思わないが、それって政治手腕が伴ってなくても、仮にも生活がバカみたいに苦しくなっても、美しいからしょうがないかーって感じで解決できるってことだろ?

 さすがにそれはないだろうと俺は思うけどなぁ。エルフってそういうところの感覚がないのか?

「だから次期選挙を戦えるのはガーベラだけってところだろうよ」

「ジェシカさんから見て勝算はありますか?」


 そこも気になるところだな。

 仮に勝てなくても俺たちに影響はないが、勝てない戦に手を貸すってのも何とも言えないし、聞いておきたいところでもある。


「悪くはないかもな。昨日の話が本音だったとしたら、余計な税金を掛けない方向に舵を切るだろうし、他の話は知らないが、まあ悪い話もそうないだろう。問題は美しさで勝てるかどうかだ」

 やっぱりそこが最難関か・・・

「言っちゃあ悪いが、俺から見たらエルフ族は全員綺麗だぞ・・・」

「な」

 俺らヒト族からしたらエルフは全員美形なんだよなぁ。

 そりゃあ差はあるんだろうが、気にならないくらい全員美形だから、まあ分からん。

「バカ言うな。ブスだっているわ」

「・・・そうなん?」

「ったりめぇだろ。あたしなんかはブスのほうだわ」

 お前も大概美形なんだけどなぁ・・・エルフ族の美の基準が分からん。

「まあ、それはいいけどよ。とにかくあたしもガーベラに付く。一緒にいくぞ」

 ってことは、ここしばらく通りのパーティで挑むことになりそうだな。

「リオーネもいてくれればありがたいんだけどな」


 ヴェロニカを除いて、このパーティの火力と補助魔法枠。

 リオーネもいてくれれば随分助かるんだが、音信不通が続いてる。

 何か問題でも起こってるんだろうか?


「ベネットは西のほうで有名な一族だからな・・・あっちはあっちで大変かもしれねぇぞ」

 そうか。名門とかそういうところの家だったっけ?

 だったらどっちに付くとか付かないとか、そういうのは避けられないか。


 まあ、動けるようになったらひょっこり現れるだろ。

 いないヤツの心配をする余裕はないし、こっちはこっちで動くだけだ。


「で、マーベルはガーベラと話してきたんだろ?どういう条件とか決まったのか?」

 ガーベラさんに付くことは前提条件であるとして、条件は当然決めておかないとな。

 タダ働きするつもりもないし、かと言って政治ゲームに付き合うつもりもないが、こっちの身の保全も気にしておかないといけないわけだし、詰めてきてもらって損はない。

「詳細はまた後日決めることになりましたが、基本的な条件は最低限決めてきましたよ」

「ほう」

 マーベルさんはテーブルに書類を何枚か取り出して、

「まずは報酬。協会に報告して頂く分とは別に払っていただけます。討伐したモンスターに応じて用意する歩合制ですね」

 その点に関しちゃ驚きはしない。

 普段からそういう報酬システムだし、狩って帰ってくるかどうか分からない連中に定額は払えないのも分かる。

 加えて言うなら、それが問題だって言ってる側が同じことをすると別の問題になってくる。

「こちらに対する支援に関しては、経費として落とすことも許可していただけました」

「おっ、やったぜ」

「ただし、宿屋以外の食事は含まないようで」

 施設内のことは全て引き受けるが、それ以外は自己負担か。

「狩猟に必要な道具は負担してくださいますが、武器や防具類はご自分で、とのことです」

「おいおい、そこが一番金が掛かるところだろ・・・」

「そこもまあ、仕方がないだろうなぁ」

 道具はまあいいとしても、武器と防具は当人たちの好み次第だし、下手に買って与えて狩猟に失敗して責任を追究されても困る。

 本当にそこを懸念したかどうかは定かじゃないが、しっかり考えられてるな・・・

 テーブルに広げた資料は今の話のメモか・・・?

「明日も詳細を詰めてきます。皆さんは狩猟の準備をお願いします」

 とにかく、やらなきゃいけないことは変わらない。

「あたしも手甲を用意しないといけねぇんだよなぁ・・・あの転移者二人の一件でぶっ壊れちまってよ」

「俺も甲冑がボロボロだから新調しないとな・・・」

 あの二人との一戦はなかなかハードだったからなぁ。

 金属製の装備をブチ壊すって相当だぞ・・・二人ともよく生きてるな。この世界の連中はみんなこうなのか?

 それはまあ一旦置いておくとして、

「じゃあしばらくは準備期間だな」

「その狩猟日はいつなんだよ?」

「二週間後です」


 決戦は二週間後か・・・長いような短いような、絶妙な感じだな。

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