13-3
「・・・下界に戻ったか」
少年の気配が消えた。
意識が戻っていったということだ。
「・・・アレに可能性はあるのか?」
試練を与えたということは、少年に神力を授けても良いと考えた故。
だが、どこかで納得はしていないようである。
「・・・先ほどアイオロスも言っていたことではあるが」
「・・・何だ?」
「接触し始めた当初は我も見るに堪えなかった」
アイオロスほど酷評はしないものの、少年に期待などしていなかった。
後ろ向きで、どうにかして面倒事を避けようとする。そんな者がこの世界に潜伏している男を探し当て、そして倒せるわけがない。
我々と違い、下界の民の命は有限。
ヤツは不特定の民の肉体を奪うことで生き永らえることができる。現に今も生き永らえ、数百年経過している。
下界の子一人で、広い世界を歩き回り、たった一人を見つけ出す。途方もないことである。
そして今、ヤツはどんな姿をしており、どんな力が使えるのか分からない。
時が経てば経つほど、ヤツは強くなる。
そして、厄介になる。手を付けられなくなるほどに。
否・・・もう付けられないのかもしれぬな。
だが、それでも、
「可能性は無きにしも有らず」
威嚇はモノにできていないが、バードアイを使いこなしている。
バードアイは様々な距離を的確に見るスキル。超近距離から超遠距離、建屋の中だろうと遺跡の中だろうと、昼夜すら関係なく見通す。それ故、空間把握能力を要し、脳に大きな負荷を掛ける。
人によっては脳が付いていかず、ほんの少し使っただけで寝たきりになる。
伝えてはいなかったが、上手く馴染んだものだ。
あれを使いこなせるということは、空間把握能力に長けているということだ。
それだけでも芽はあると見える。
あれがあるだけでも、ヤツを見つけられる可能性が高まる。
「・・・お前も随分、緩くなったものだな」
「・・・そうか?」
「そうだな」
アイオロスからすると、我は変わったようだ。
我はそのような気はしていないが・・・まあ、頷ける一面もあるか。
それはそれとして、
「随分と難しい課題を与えたものだな」
スキルを駆使して大型モンスター狩り。
スキルの習熟も必要な上に、格上を狩らなければいけないという状況。
実力不足なら食われて死ぬ。
スキルは整っても、モンスターに倒される可能性もある。
これを難しいと思わず何とするか?
「どの道を通ろうと、達すれば良いだけのことよな」
アイオロスは去っていった。
「・・・その通りである」
少年。やってみせろ。
やり通せば、それが力になる。