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 ガーベラの案内で謁見の間を出た俺たちは、またもやハイキングを強いられた。


 謁見の間は城の中央の大木の上層階。

 そこから中層まで下りて、橋を渡って別の大木へ移動。これがまた長い。

 橋を渡ったらその先の大木も降りていって、そこも中ごろで出る。

 その先に居住区があって、その中に特別大きな屋敷があった。


「ここがわたくしの屋敷です」


 これがまた立派な屋敷で。

 これは大木の中をくり抜いて作っているわけではなく、木を軸にして周りにレンガを積み上げて作っている、日本でもありそうな設計だ。

 建てられている居住区周辺に、そのまま建物に利用できるほどのサイズの木がないのもあるかもしれないが、これは立地の問題か?


「どうぞ中へ」

 ガーベラに中に通されたが、中も相当立派だ。

 よくマンガとかアニメで出てくる洋館のそれに近い。

 広い玄関と大きな階段、誰か分からない大きな絵画が飾ってある。大きなシャンデリアもあるし、手すりや柵の彫刻も品があるし、壺とか彫刻とか調度品もある。

「これはすごいですね」

「確かになぁ・・・」

 こりゃあ貴族の館だぞ・・・

 いや、ところによっちゃあ王族が住んでるかもしれない。

「誰か」

 誰もいない玄関でガーベラが声を掛けると、脇の廊下からメイドがすぐにやって来た。

 日本のオタク街でよく見られる、カラフルでブリブリなそれじゃなく、シックな装いのメイドだ。

「わたくしは着替えてきます。客人を客間へ案内して差し上げて」

「かしこまりました」

「あと、回収された彼らの装備をうちに手配するように」

「かりこまりました」

「彼女が案内してくれます。わたくしは少し退席させていただきますので、後ほど」

 ガーベラは奥の大きい階段を上って二階へ。

「お客様、こちらへどうぞ」

 俺たちはメイドの案内で客室へ。

「これもまたすごいな」

 通された客室も豪華。

 シックな長テーブルと椅子のセットがお出迎え。中央に暖炉と大きなソファ。ここにも絵画がちらほら飾られている。

 まるで北欧の邸宅だな・・・

「皆さま、ごゆるりとお寛ぎください。時期にガーベラ様もいらっしゃいます」

 着替えるとか言ってたし、そこまで時間も掛からないだろう。

「お茶を用意致します。お好みのお飲み物はございますか?」

「わたしにはミルクをお願いするよ」

 ・・・こいつはどこでもブレんなぁ。感心するわ。

「手間掛けて申し訳ないんですが、こいつにミルクをいただけますか?後はそちらの都合がいい物で構いません」

 こういうところだと、大抵コーヒーか紅茶が出てくるもんだ。

 子供がいるならジュースを頼むだろうが、ヴェロニカ以外はそこそこの歳だし、適当でいいだろう。

「かしこまりました。少々お待ちください」

 一礼したメイドが去っていった。

「・・・ナニモンだ?あの女」

 少しして、椅子に座り込んだジェシカが話を始めた。

「ちょっと、言い方を考えなさいよ」

「だって本当だろ」

「あの方は―――」

「それはわたくしから話させていただきましょう」


 ガーベラが現れた。

 さっきまで着用していた制服から、シンプルなデザインのドレスに着替えている。


 ガーベラは客室に入ってすぐにソファに座り、

「皆さん、お好きな席にお座りください」

 ソファはガーベラが座っている。

 俺はヴェロニカを抱えたまま、空いている椅子に。

 他の面々も椅子に座った。

「お茶はまだですが、話を始めましょう」

 どういう経緯で俺たちがここに呼ばれたのか?

 目的は何なのか?

 この人の真意は?

「と、その前に」

「・・・その前に?」

 ガーベラは大きく空気を吸って、

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ、だるかったあぁぁぁぁッ!!!」


 ・・・えぇ?


「はあぁぁぁぁぁあ、ソファ最高!」

 グーっと背筋を伸ばして、ソファにあぐらを掻く。

「ふぅ・・・」

 肘置きに片肘を突いて、

「ようやっと楽になったの」


 ・・・語尾がおかしい。

 っていうか、喋りも含めて行動がよ。


「ガーベラ様!」

 先ほどのメイドがお茶を持って飛び込んできて、

「おう、ご苦労さん」

「お客様の前でその態度はおやめくださいとお願いしているではありませんか!」

「まあまあ、そう言いなさんな」

「言います!」

 お茶を載せたトレーを俺たちの前に置いたメイドが、すぐにガーベラの元に行って、

「お客様の前ではしたないですよ!」

「こっちのほうがリラックスできるじゃろ?」

「し過ぎです!」

 うん、まあ・・・そこは同意するな。

 一応、この人って女王に盾突けるくらいの偉いさん・・・なんだよな?

 制服をキッチリ着こなす、エレガントな女性っていうイメージだったんだが、こんな真逆なことある?キャラ作ってたってこと?

「これはこれでわたしは好きだけれどね」

 さっきまでのデキる女性ってのはかっこいい。憧れる女性も多そう。

 ただ、これはこれでかっこよさはなくても、親しみはある。個人的には偉いさんっぽくなくて良いと思う。飾らない良さもあるかもな。

「とにかく、胡坐はやめてください!」

「ええ~、嫌じゃ」

 偉いさん故にメイドも気を遣うところもあるんだろうなぁ。

 客がいる時は特に・・・

「あの、俺たちは気にしないので、そのままでいさせてあげてください」

 話が進まないから、とりあえず切り上げさせたい。

「ほらぁ、こうやって言うておろう?」

「それはそれ、これはこれです!」

 そりゃあまあ、そうですわな・・・

 でもそれはそっちの都合なわけだし、こっちは巻き込まれてるだけってのは変わらない。早いこと話を聞いて解放されたいわけなんだが。

「はあ・・・仕方がありません」

 メイドは溜息を漏らして、備え付けのブランケットを取ってガーベラに渡した。

「こちらを膝に掛けてください。そして言葉遣いにお気をつけください」

「ワシは十分注意しておるよ?普段からな」

「十分、注意できておりません」

 うん、モロに出てるな。隠そうとする意志を感じられない。

「お客様、お茶とお菓子のおかわりはお申し付けください。ガーベラ様のご無礼、お許しください」

 では、とメイドは下がっていった。

 あの人も苦労が多そうだな・・・俺たちにとっちゃあどうでもいいことだが、なんとなく察する。

「さて、うるさい小娘も出て行ったことじゃし、話を始めるとするかの」


 結構場が荒れたけど・・・大丈夫かなぁ。

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