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55 そして新たな始まり (3)

「仲間……か」


 国王は一度、そうつぶやいてから。

 すぐにかぶりを振って見せた。


「……そうか、そうであったな。

 そなたは仲間のために、惜しげもなく古竜の魔石を使うような。そういう男であったな」


「だ、だめだよ! ボクがいるから、ボクのせいで勇者にならないなんて!

 そんなの、ソウマのためにならないよ!」


 アルメアが、腕にしがみついてきた。

 必死な顔。


 俺と国王は、それをチラ見して。

 次に、元パーティメンバーへと目を向けた。


「な、仲間っていうならあたしだってそーじゃん! 長い間一緒に冒険してきたパーティの仲間じゃん!」


「あーし心がマジ広いから、役立たずのクズ加護でも妥協できっし! 貢いでくれたら多少は優しくしてやってもよくね?」


「そうよ! だからあんたも当然、仲間に優しくするべきでしょ!? 私のために勇者になって、私を助けるって言いなさいよ!」


 落差よ。


「確かにこやつらを見れば、信頼できる仲間は得難いと思えるか」


 すごい説得力だった。

 うなる国王陛下。

 いよいよ焦る取り巻きども。


「まってよ!? それじゃあたしはどーなるのよ!! このままじゃ兵隊としてこき使われるんじゃん!!」


「あーしだってぜってーイヤだし!! こんなのおかしくね!? ありえなくね!?」


「信じられないわ、なんで女を守ってあげようと思えないの!? 男なら私を助けて当然じゃないの!!」


 見苦しい恐慌と激昂。

 感情的なキンキン声。

 ディオスに負けないくらいの醜い顔だった。

 その見苦しさは次のステージへ。


「ちょっと、聞いてんのクズ加護ッ!!」


「全部てめえのせいじゃね!?」


「あんた当然、責任取りなさいよおおおッ!!」


 あげく、俺につかみかかってきた。

 キモいので横にかわす。

 連中はつぶれたカエルのように地べたにつっぷして、つぶれたカエルのような声を上げた。


 速攻で兵士に縛られる。

 ここでゼルバルドが一言。


「牢にぶちこんでおけ」


「「「イヤアアアアアアアッ!!」」」


 泣き叫ぶ、元パーティメンバーたち。

 兵士たちにイヤな顔されながら引きずられて退場。

 ディオスの時とそっくりな、新しい人生の始まりだった。


 重い扉が閉められ、ようやく静かになる。


「まあ、そういうことなんで」


「あいわかった。今回は、そなたの意思を尊重するとしよう」


「王様!?」


 アルメアの抗議の声。

 陛下が苦笑する。


「勇者アルメアよ。そなたはソウマの言葉がうれしくはないのか?」


「う、うれしいけど……。そんなの、すっごくうれしいに決まってるけど!

 ……でも!」


「ならばそなたの力で、これからもっと稼がせてやればよいではないか。

 手に入れるはずだった20億ゴルドなど、はした金であったと。

 そう思えるくらいの価値を、仲間として示してやるがよい」


「…………」


 静かになるアルメア。

 しばらくして、顔を上げた。

 もう曇ってはいない。

 太陽のように輝く、いつもの笑顔。


「……うん、わかった!

 じゃあボク、ソウマに20億ゴルド借金しましたって証文書くね!」


「なにがわかったんだ!?」


「完済するまでパーティを抜けられない契約書だよ。あ、隷属の首輪つけようか?」


「いるかそんなもん! だいたい10億はお前のもんだったろうが!」


 さらに言えば、20億の分配すらしていない。

 神前試合の時点で、あの金はパーティ共有の資金だった。

 それをパーティのために使ったのだ。

 返済の義務なんかどこにもない。


「えへへ。これでボクも、ソウマと同じ借金持ちかあ」


「いらんと言ってるだろうが。なんで借金がそんなにうれしそうなんだよ」


「それもソウマと同じだね!」


 満面の笑顔。

 俺の借金の理由なんて、知らないはずなのに。

 見透かしたような目をしやがって。

 思わず、顔をそらした。


 と。


「……ん?」


 閉められていた、重く大きな扉の向こう。

 なにやら騒がしくなってきた。

 緊張した鋭い声。

 ここにきて、新たな展開。


「し、失礼しますっ!」


 扉が、再び開け放たれた。

 そこには城の兵士たち。

 そして、肩を貸されている騎士がいた。


 傷だらけの鎧。

 その意匠を見るに、西の帝国の人間か。

 流血と疲弊。

 今にもぶっ倒れそうな顔色だった。


 それを見た陛下が、驚いて立ち上がる。


「ミシェル王子ではないか! そのありさまは一体!?」


「へ、陛下……。どうかお伝えしたく……」


 騎士ではなく帝国の王子だった。

 なおさら異常事態だ。


「魔王が……いにしえの魔王がこの世に蘇り、魔物を率いて我が帝国の都を……!」


「なにっ!?」


 語られる、魔王軍の強大さ。

 帝国の兵はよく戦ったが、敗色は濃く。

 王子は王に命じられ、転移魔法陣で助けを求めに来たという。


「王国には、かの黄金竜を倒すほどの勇者パーティがいると……。どうかその者たちにお取り次ぎを……」


「それならば、この者たちがそうだ」


 示される、俺とアルメア。

 帝国の王子は、よろけるようにくずおれて。

 真摯な顔で口を開いた。


「あ、あなたがたが……。

 お願いです、その力をお貸しください! 今も帝国の人々は恐ろしい魔物どもに襲われ、悲鳴をあげているのです!」


 訴える。

 王子の身にある人間が、平民にひざを折ってまで。

 必死なのだとわかった。


 それを見て、俺はつい。

 にやぁ、と笑ってしまった。


「へっへっへ……」


「あ、あの……?」


 古竜の魔石を使ってから。

 正直、金策の当てがなくなっていた。

 アルメアのおかげで、日によっては30万ゴルドほど稼げてはいたが。

 残り9億ゴルドを完済して孤児院に帰るには、果たして何年かかることやら。


 だがトラブルは金儲けの種。

 そして魔王は、世界最大のトラブルと言える。

 活躍すればしただけ。

 魔物をぶっ殺せばぶっ殺しただけ。

 金貨の慈雨が、乾いた俺の財布へと降り注ぐことだろう。

 想像上の俺、再度のアヘ顔ダブルピース。


 俺は、ちょっとアヘ顔入った笑顔で。

 儲け話を逃がさないように。

 腕で王子の首を、がっしりと引き寄せた。


「俺たちにまかせてくれ。これから帝国の人々は、魔物よりも恐ろしい巨額の報酬の支払いによって、真の悲鳴をあげるはめになるだろう」


「ええっ!?」


「うん! ボクたちが必ず魔物に本当の恐怖を思い知らせて、人間以上の悲鳴をあげさせてみせるよ!」


「いや、その……」


 なぜかテンションを下げる王子。


「あの、陛下。この者たちで、本当にだいじょうぶなのですか……?」


「ははは。若いミシェル王子には、まだわからぬかな。

 他者を助けて自分を犠牲にするのではなく、自分のために他者を犠牲にするのでもなく。

 自分のために他者を助ける者こそが、最も多くの者を救う者……最も強い勇気を持てる者だということだ」


 ほんとぉ? という王子の顔。

 それを無視して、俺たちは立ち上がった。

 行先は、転移魔法陣の間。


 ゼルバルドが手を上げた。

 最後の合図。

 軍楽隊が、勇壮なる序曲を吹き鳴らし始めた。


「さあ、旅立て勇者たちよ! 己のため人々のため、魔王を討ち果たすのだ!」


 扉のむこうに広がるのは。

 まだ見ぬ儲け話が待つであろう、次の世界。


「行くぞアルメア!」


「うん!」


 うれしそうに返事をしたアルメアと。

 はぐれないよう、手を取りあい。

 駆け出す。


 輝かしい勇者の伝説と。

 輝かしい金貨の物語。

 その新たな始まりの一歩を。

 俺たちはふたりで、踏み出したのだった。

これにて完結です。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました!


今回は自分なりに『追放ものとは恩知らずがやらかす物語である』と考え、

恩知らずの悪役と恩返しの主人公、という軸で書いてみたのですが、

いかがだったでしょうか。

もしちょっとでも「良かった」と思ってもらえましたら、

最後に『下の☆☆☆☆☆をクリック』で応援いただけるとうれしいです!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作品一気読みしてしまいました。 続編か他の作品お願いします!
[一言] この一言で片付けていいのかな? 「そして 伝説が 始まった !」 序曲もドラクエ風なんだろうなぁ。
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