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28 認めたくない現実 (3)

 サンサドールから放たれる、黄金のブレス。

 俺とディオスを飲みこむ、直撃コースだった。


「ひいいっ!?」


 ディオスは頭を抱え、座りこんだ。

 もう防御する魔力もないのか。

 あったとしても、破られるだけだったろうが。


 俺も『しまった』とは思った。

 だが、危険だとは思わなかった


「【鉄の盾(アイアンシールド)】!!」


 アルメア。

 俺たちを守るように、駆けこんできていた。

 身長より大きな、10トン近い鉄の壁。

 それが、魔力ブレスを受け散らす。


 自慢のブレスが霧散するのを見て。

 サンサドールが、顔をしかめた。


 アルメアは、なおも素早い。

 俺とディオスを抱えて、岩陰に飛びこんだ。


「もう、危ないなぁ!」


「ありがとうアルメア。助かった」


「あんなドジするなんて、ソウマらしくない……ううん、逆にすごくソウマらしかったかも」


「すまん。ちょっとボケすぎてた」


 借金返済が遠のいた衝撃は、あまりに苛烈ではあった。

 とはいえ、目先の損にとらわれすぎてはならないのだ。

 これ以上の損を出してたまるか。


「クソッ、クソッ、クソがっ……!」


 隣では、ディオスが取り巻きに回復魔法をかけてもらっていた。

 礼を言うでもなく、ぶすったれている。


 それどころか、アルメアを見て舌打ちしやがった。

 詰めよって、怒鳴り声を上げる。


「ゴミ勇者め! よくも余計なマネをしてくれたな! この私を助けて見下したつもりか!

 内心、劣ったやつだと笑っているんだろう! ええ!?」


「ボク、そんなつもりは……」


「この私だって! 魔力さえ、魔力さえいつものように使えれば、古竜ごとき簡単に倒せたんだ……!

 なにが神器だ、この役立たずがっ!」


 勇者激おこ。

 祈りの腕輪を外し、地面に叩きつける。


「この私の最強の勇者魔法は、クラーケンを一撃で倒し! 1000匹のオーガを消し炭にし! ライオデーモンをも皆殺しにしてきたのだ!!

 それがこの私の本当の力なのに、最強の勇者の姿のはずなのに……!!」


 アルメアは、そんなディオスを見て。

 すっ、と視線の温度を下げた。


「そうだね。そんな神器なんかなくても、キミはきっと勝てたんだろうね。

 ……ソウマさえいればさ」


「……!!」


 ディオスが、その言葉に振り返る。

 血走った目。


「そのクズ加護がいれば勝てただと! ふざけたことを……」


「ソウマをそんなふうに呼ぶなっ!!」


「ひっ……」


 アルメアの怒声。

 それはディオスの薄っぺらい怒りを圧し、ひるませた。


「確かに、ボクはキミより弱いよ。ゴミ勇者なんて言われてもしょうがない。

 ……でも、ソウマはそんなボクを拾ってくれた。さっきだって古竜のブレスを防げたのは、ソウマのおかげだ」


 一歩詰めよる。

 ディオスは尻で土をこすりながら、後ずさった。


「魔物に勝てなくてなんの価値もないボクを、ソウマは強い勇者に生まれ変わらせてくれた!

 なにがクズ加護だ! こんなにすごい魔法、ボクは生まれてから一度だって見たことない!

 キミの勇者魔法が強かったのも、ソウマが助けてくれてただけじゃないか!」


「ち、違う! そんな卑しいクズ加護の力などなくとも、勝てるはずだったのだ!

 この私は最強の勇者で、そいつは卑しいスラムの生まれで……」


「そんな理由で追放したの? 自分よりすごい魔法を使えて、いつも自分を助けてくれてた仲間を?」


 アルメアは、今度こそ本当に。

 ディオスを見下す目を向けた。


 成りゆきを見ていた冒険者たちも、ざわざわと騒ぎ出す。


「なんだよ、あれが光の勇者なのかよ……」


「マジでどうしようもねえやつだな」


「あんなにブザマに負けといて、よく最強なんて言えるわよね」


「てか、最強だったのはそっちのソウマのおかげなんだろ?」


「その恩をあだで返すなんざ、冒険者の面汚しだな」


「負けたことより、あの上から目線が気持ち悪すぎでしょ。あたしムリ」


「口だけ最強の勇者様(笑)」


 ディオスが震えている。

 屈辱と悔しさに、真っ赤になって。


 アルメアは、うっすら笑うと。


「ソウマを追放しなければ、口だけじゃない最強のままでいられたのにね……?」


 憐れむように、そう言った。


「だまれ!! だまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれだまれェェェェッ!!」


 わめくディオス。

 衆目で、子供のようにじたばたし始めた。

 取り巻きたちすら近寄らない。


 アルメアが、そんな地獄に背を向けて。

 俺のそばにもどってきた。

 とてもすっきりした顔だった。

 えっへん! と胸を張る。


「ソウマが言わないから、ボクが言ってやったよ!」


「ははは……」


 あーあー、言っちゃったか。

 まあ、ささやかなものか。

 ディオスが今まで周囲にぶんまいてた、ひどい罵倒に比べれば。


「こんな……これは夢だ……ありえないだろ……私は優れていて……勇者で……学園でも首席で……誰もが私に負けて……おかしいだろ……私は貴族で……父上だって私に負けて……誰もが私を悔しそうに見上げて……」


 うつろな目で、なんかブツブツ言いだした。

 激しく鬱屈している。

 ディオスが最も認めたくない、現実から目を背けて。


 優れた勇者として、また貴族として、優遇されながら生きてきたディオス。

 あいつからしてみれば、受けたことがないほど大きな屈辱だったんだろう。

 もともと優越感が生きる意味みたいなやつだしな。


 アルメアが俺の苦笑いを見て、あっと声をもらした。

 不安そうに首をすくめる。


「ひょっとして、余計なお世話だった……かな?

 でもボク、ソウマが悪く言われるの、どうしても我慢できなくて……」


「いいや、そんなことないぞ。俺のためにありがとうな」


 可愛いことを言ってくる、妹のようなその頭を。

 わしわしなでてやった。


「わっ……えへへ……」


 うれしそうな顔。

 それを見て、俺もようやく元気が出てきた。


 岩や樹木の向こうに、城塞のようにそびえる敵。

 ギョロギョロと俺たちを探している。

 伝説の古竜。


 黄金のかたまりでなかったのは残念だが。

 竜種である以上、その素材の価値はやはり高い。

 特に、古竜の高純度魔石。

 記録では、5000万ゴルドで取引されたこともあるらしい。

 10億ゴルド一括返済の夢さえ忘れれば、途方もない金額なことは確かだ。


 俺は手を、拳で打ち鳴らした。


「じゃあそろそろあいつに、赤字の責任を取ってもらうとするか……!」

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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃあそうだな。貴族だから、お金を使って学園の首席をとり、貴族だから誰もが傷つけないように手加減して、そんな息子を増長させる父親、唯一の特徴の光の勇者ですら、ソウマを追い出した為にメッキが…
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