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27 認めたくない現実 (2)

「クハハハハハ! 劣等冒険者どもよ、しかと見ていろ! 優れし者の強大な“力”というものを!」


 ディオスは高らかに、右腕をかかげる。

 神器、祈りの腕輪。

 念じ発動させ、魔力を回復させる。

 何度も、何度も。


 サンサドールはその様子に、明らかな警戒を見せる。

 語りかけるディオス。


「この私は今、魔力が満杯だ……。なのになお、この神器で魔力を回復し続けている。

 古竜よ、この意味がわかるか?」


「な、なぜそんな無駄なことを……?」


「蓄えているのだ、限界をはるかに超えた魔力をな!

 これより放つのは、常識も禁忌もすべて置き去りにした――究極至高の超絶勇者魔法! この一撃で、我がパーティにクズ加護など不要だったということを、完膚なきまでに証明してやる!

 その身で味わい果てるがいい! 【限界突破(オーバーリミット)……増幅爆轟電ブーストバーストエレク】ッッッ!!」


「ブーバー……何て?」


 よく聞き取れなかった呪文とともに、まばゆい電撃が放たれる。

 言葉の通り、最初の一撃を上回る出力だ。


「ひ、ひょおおおおっ!?」


 うろたえるサンサドール。

 防御のための魔力を、体中にめぐらせる。

 黄金の鱗が、虹色に強く輝き始めた。


 ズガァァァン!


 電光の爆発は衝撃を生み、土煙を巻き上げる。

 果たして、視界が晴れた先には。


「バ……バカな!?!?!?」


「フ、フホホホホ……!

 多少は驚いたが、所詮はゴミどもの魔法よな!」


 すごい驚いてるディオス。

 無傷のサンサドールが、それを嘲笑した。


 確かにさっきのは、全力以上の勇者魔法だった。

 俺が支援した時の威力の、10分の1くらいにはなっていただろうか。


 しかし虹色に光る鱗は、爆発を防ぐのではなく、受け流して。

 完全に無効化してしまっていた。

 不意打ちであればともかく、真正面からじゃ通用しない威力ってことか。


 サンサドールが一歩踏み出す。

 ディオスが一歩、後ずさった。


「さて……。さんざん大口を叩いてくれた礼をしてくれようぞ」


「ま、待て! 今ので魔力がなくなっているのだ! 回復するまで休戦を……」


「待つかぁっ!!」


 サンサドールが、黄金色のブレスを吐き出す。

 最初の火球とは異なる、エネルギーの奔流だ。


「ひいっ!」


 攻守交替。

 今度はディオスが、必死に魔力障壁を張る。


 しかし古竜が吐き出した魔力は、対抗するには莫大すぎた。

 質の悪いガラスのように、障壁はあっけなく割り散らされる。


「ぐ、ぐぎぎ……あぎゃあああああああっ!?」


 悲鳴とともに吹っ飛ばされるディオス。

 そして地面へ墜落。

 土を陥没させるほどの勢いで。


 が、高価な防具の恩恵か、まだ生きていた。

 ふらふら立ち上がる。

 服やマントを焦げつかせながら。

 そこへ取り巻きたちが声をかける。遠巻きに。


「ディオス負けてんじゃん! 信じらんない!」


「あーしの言ったとおりじゃね!? パーペキに勝ち目なくね!?」


「ここにいたら、当然殺されるわよ! 早く逃げましょう!」


 常識的な意見だった。

 誰が見ても、ディオスがかなう相手ではなかった。

 しかしディオスは、その提案に歯を剥いた。


「に、逃げる!? この私が逃げるだと!?

 ふざけるなっ!! 私は歴代最強の勇者だぞ!! 誰より優れたこの私が逃げるなどおかしいだろう!!

 まるで私が負けてしまったようではないか!!」


 すごいこと言い出した。

 やつの頭の中では、まだ全然負けてないらしい。

 場の空気が、『ええ……』という気持ちで満たされる。


「そ、そもそもだ! お前ら、どうしてこの私を援護しなかった!?

 人類の至宝である、この光の勇者を見殺しにするつもりだったのか!?」


「え、だって……」


「ディオスがさっき、手を出すなっつったくね……」


「そんな当然のことを聞かれても……」


「うるさいうるさいうるさいっ!! こんな目にあったのは貴様らのせいだぞっ! 責任を取れっ!!」


「「「…………」」」


「「「…………」」」


 取り巻き絶句。

 俺たちも絶句。


「なんだこいつは……」


 サンサドールですら気持ち悪そうだった。


 さすがのディオスも、周囲の反応にまずいと思ったのか。

 不審にきょろきょろしだす。


「な、なんだその目は! 貴様ら劣った連中が、私をそんな目で見ていいとでも思っているのか!?

 この、この劣等冒険者どもが! クズどもが!」


 どんどん空気が死んでいく。

 竜を殺すより雰囲気を殺す方が、よっぽど上手だった。


「この私は、まだ負けてなどいない! 歴代最強の勇者たるこの私は、命ある限り何度でもよみがえって! やがて勝利と栄光をこの手に……!」


「気色の悪い害虫め! 聞くにたえんわ!」


 再びのブレス。

 そしておかわりのブレス。

 金色の奔流が、不快害虫(ディオス)を何度も念入りに吹っ飛ばした。


「あぎゃあああっ! あぎゃあああああああっ!!」


「ディオスーーーー!!」


 叫ぶディオスと、取り巻きたち。

 他人事なので、好きなだけ叫べばいいと思う。


 黄金のブレスが巻き添えで、ワイバーンの死体も消し飛ばした。


「ぎゃああああああああああっ!!」


 叫ぶ俺。


 認めたくない現実。

 一度ならず二度までも。

 打ちのめされる俺。


 目の前に、ボロ雑巾みたいなディオスが落ちてきた。


「ク、クズ加護め……。私を笑いたいのだろうが、ま、まだ負けたわけではないぞ……。

 今度こそすぐに古竜を倒して、貴様を悔しがらせてやる……」


「おあああああっ……!! ちくしょう、ちくしょおおお……ッ!!」


「だからまだ倒していないが!?」


 アホが驚いているが、俺はそれどころではなかった。


 190万ゴルドがパー。

 儲けがパー。

 無報酬?

 否、経費があった。

 マイナス50万ゴルド。

 支出50万ゴルド。

 本日命がけで町を守ろうとした、その対価がこの有様。


 血のように赤い文字で染めあげられる――家計簿の出金欄っ!!


「のおおおおおおお……!! 金貨が……金貨がぁ……!!」


 苦しむ俺。

 苦しみのあまり、反応が遅れた。


「カアッ!」


 サンサドールから放たれる、黄金のブレス。

 俺とディオスを飲みこむ、直撃コースだった。

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