26 認めたくない現実 (1)
「おいクズ加護! 貴様が所属させてもらえなかったパーティがいかに優れているのか、これよりたっぷりと貴様に見せつけてやろうではないか!
今から始まる戦いを見て、心から嘆き悔しがるがいい!」
「くそおっ……!! ちくしょう……ちくしょう……!!」
「まだ始めていないが!?」
俺は打ちのめされていた。
認めたくない現実に。
夢のようなあの黄金の鱗。
それが実際は、ただの魔力メッキだったなんて。
上げて落とすとはこのことだ。
「はぁ~……」
すみっこで丸くなる。
ふて寝だった。
「フ……フン! そうか、この私の登場を見ただけで心折れたというわけだな!
だが貴様は今から、より深い絶望を目の当たりにするだろう!」
俺を見て、よくわからん勝ち誇りをするディオス。
そして、木の上から飛び降りてきた。
アルメアよりも前方に、場の中心に。
「いや、しかし……」
冒険者たちを見渡すディオス。
そして、ニタニタと口角を上げた。
実に愉快そうな、歪んだ笑顔。
「先発した冒険者ども獲物を盗られまいと、急いで来てみれば……。
クハハハハ、まったくの徒労だったようだなあ! この私のために無能でいてくれて、礼を言いたいくらいだ!」
「ディオス……てめえ、なに笑ってやがる!?」
「俺たちが殺されかけたのが、そんなにうれしいってのか!?」
ニヤけるディオスに、筋骨ハゲや冒険者たちが怒鳴る。
「ああ、実によろこばしいことだ!
貴様らのような劣った者の醜態を見るたびに、この私がいかに優れた者であることを深く実感できる! ブザマな人間を見るのは、何にも勝る最高の娯楽だ!」
周囲の剣呑な空気を、まったく意に介さない鈍感さだった。
いや、むしろ悪意を向けられることを、よろこんですらいる。
格下からの敵意に、優越感をくすぐられているのだ。
他人を見下すのがなによりの楽しみ。
勇者として戦うのも、自己の優越性を証明するため。
こいつは昔から、そういうやつだった。
「ブザマな人間と言えば、特にそこのクズ加護だ!」
指さされた。
「聞けば、Zランクなどという前代未聞の評価を受けたそうじゃないか!
いやはや……Sランクの私には理解できんほどのクズだな、貴様は! そんなクズをパーティから追放できて本当に良かった!
記念に銅像でも作って、ギルドの入り口に置いたらどうだ!? クハハハハハハッ!」
「…………」
なお後ろのアルメアは、殺気全開でディオスをにらみつけていた。
お前の臓物をギルドの入り口に陳列してやろうか?
そう言わんばかりの形相だった。
それに気づかない幸せなディオスは、ようやく古竜サンサドールに向き直る。
「さあ、待たせたな古竜よ!
この歴代最強にして光の勇者! ディオス・カーラントッ! が優れた者である証明として、そろそろ息の根を止めてやろう!」
「さ、最強の勇者だと……」
サンサドールは、ディオスに気圧されていた。
最初に受けた一撃が、思いのほか強力だったのだろう。
逃げる隙をうかがっているようにも見える。
しかしうかつに飛び立とうとしても、狙い撃たれるのは明らか。
「クハハハ……私が恐ろしいか、卑小なる竜よ!」
ディオスは、そういう格下の気配に敏感だ。
相手を見下せるよろこびに、笑みを深くしている。
しかし、脳天気にそう思えない連中もいた。
ディオスの取り巻きの女たち。
いつの間にか木陰から、ディオスをうかがっている。
「キャ、キャハハ……。ディオス、あんた本当に勝てるんだよね?」
「あのドラゴン、ワイバーンなんかより全然強そうくね?」
「勝てるに決まっているだろう! 先ほどの私の一撃は、確かにあのトカゲの魔力障壁を破れていた!
そうだ、やはり私は強い! クズ加護のクズ魔法などなくとも、この身は最強の勇者なのだ! ここ最近の不調はなにかの間違いだった! そうに決まっている!」
確信に満ちた言葉。
それを聞いて、取り巻きたちはいくらか落ち着いた。
だいぶ疑わしそうな顔はしているが。
「誰もつまらん手出しなどするなよ! たったひとりで古竜を倒したという前人未到の事実こそが、いかにこの私が優れているかを証明してくれるのだからな!」
パーティの力を、俺に見せつけるんじゃなかったのかよ。
もう少し後先考えてしゃべれよ。
「そうだな……一撃だ! 次の勇者魔法の一撃で、貴様を絶命させてやろう!」
「な、なんだと……!?」
いよいよ調子に乗り始めた。
「いや無理だろ。さっきの奇襲、お前の全力だったろ」
思わずツッコんだ。
残念ながら事実だった。
再利用魔法による援護がないディオスの火力は、さっきのが精一杯である。
俺はそれを、よく知っていた。
合図もなしに先走ったディオスが、いつもああいうのを撃っていたから。
それで倒せないと、だいたい俺のせいにされたが。
「おい、しっかりと記録しておけよ! 後世の伝説となるこの戦いを、王や下々へしっかりと伝えなければならんのだからな!」
「と、当然やるわよ。けど……」
自意識過剰なディオスの命令。
取り巻きのひとり、クルシアはそれに従って。
透明なガラス玉のような魔道具を、ディオスに向けた。
記録水晶と呼ばれる、映像を記録する魔道具だ。
あまりに自信に満ちた、ディオスの言動。
それを受けて、冒険者たちがざわめき始める。
「いくらディオスでも、あの古竜に勝てるのか……?」
「いけ好かない野郎だが、最強のSランク勇者だぞ! 勝てるに決まってるだろ!」
「あんなに自信がありそうなんだ、あれで負けるわけないさ!」
「おねがい、勝って! ディオス!」
「頼むぜ、光の勇者様!」
冒険者からの声援。
それはそれは、期待に満ちていた。
「クハハハハハ! 劣等冒険者どもよ、しかと見ていろ! 優れし者の強大な“力”というものを!」
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