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無自覚ヒーロー属性の女騎士百合ハーレム物語  作者: ジョージ
第1章 籠の中の伯爵令嬢編
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第2話 出立

楽しんで頂ければ幸いです。

レジエス団長と話し、任務を拝命した私は真っ直ぐ第5会議室へと向かった。この宮殿風の詰め所には、小隊と同数の会議室がある。それは各小隊専用の会議室だからだ。つまり第5会議室は我々第5小隊専用の会議室と言う事だ。


そして私がドアを開けて中に入れば……。


「起立っ!」

『『『『『『ザッ!』』』』』』

すぐさまマリーの号令で椅子に座っていた部下達が起立する。

「気をつけっ!敬礼っ!」

『『『『『『ババッ!』』』』』』


私は彼等の前にある壇上に立ち全員を見回す。うむ、第5小隊全員揃っているな。

『スッ』

「着席っ!」

私が手を上げて合図をすれば、マリーの声で全員が椅子に腰を下ろす。


「全員揃っているな。早速だが、先ほど任務を賜った」

その言葉に全員が表情を引き締め、新人のキースはどこか緊張している様子だ。ここは先に言って、少し安心させてやるべきか。


「だが先に言っておく。今回の任務の危険度は低いと考えられる。だから安心しろ」

と、私が言うと彼等は安堵したのか少しばかり笑みを浮かべている。しかし任務は任務だ。

「まぁだが任務である事には変わりない。なので、各自気を引き締めて掛かるように。良いな?」

「「「「「はいっ!」」」」」


「よし。では任務の説明に入る。今回我々に与えられた任務はとある貴族令嬢の護衛だ。依頼者はフェムルタ伯爵家。そこの一人娘を警護して欲しいとの事だ」

「あの、質問をよろしいですか?」

と、そこで手を上げるキース。


「なんだ?」

「何故、警護の依頼が我々に来るのでしょうか?貴族の警護となれば、専門の『光防(こうぼう)騎士団』があるはずですが……」

「確かにキースの言葉も最もだ」


このグロリアス王国には、他国との戦争をメインに見据えた武力集団である『軍』と、国内の問題を担当する『騎士団』の二つが存在する。


中でも騎士団が、そこから更に3つに分れる。


各地の駐屯地に兵を置き、それぞれの駐屯地の担当区域で発生する問題、主に事件の対処や治安維持、魔物と呼ばれる怪物の討伐をメインとする『青銅騎士団』。


貴族や王族の身辺警備、彼等の邸宅の警備を担当する『光防騎士団』。


そして私達が所属し、王や内政に関わる大臣から依頼される重要度の高い任務や、青銅騎士団では対応出来ないような危険度の高い任務に対応する『聖龍騎士団』。


本来、このような任務ならば光防騎士団が対応するはずだ。それが、そこをすっ飛ばして私の所に飛んできた。

「本来ならば光防騎士団が対応するはずの任務だ。しかしそうはせず私個人を指名しての依頼だ。何か相手側に理由があるのだろう。そう考えれば依頼を無碍に突っぱねる訳にも行かない、と言うのが私の判断だ。それに、我々は騎士だ。騎士たるもの、守るべきはこの国に生きる人々の命と生活だ」


そう言って私は皆を見回し、任務の前にいつも彼等に言い聞かせている言葉を今日も語りかける。


「我々は騎士だ。我々はこの国に生きる人々を敵から守る剣であり、彼等の命を守る盾である。そして騎士たる者、自分も守れずして民を、人々を守る事は出来ない。日々の訓練を生かして自らを、戦友を、民を守れっ!自分達が人々から頼られる騎士であると言う自覚と誇りを持って任務に当るぞっ!良いなっ!」

「「「「「はいっ!!」」」」」


「よしっ!では明日の朝、詰め所を出発してまずはフェムルタ伯爵家に向かうっ!それまでに各自荷物の用意などをしておくようにっ!午後はその準備のための時間とするっ!解散っ!」

私の指示を受けて彼等、彼女等は足早に部屋を出て行く。

「レオッ」

「あっ、はい隊長っ」

そんな中で男性騎士の1人を呼び止める。彼はレオ、男性騎士たちの中でも、第5小隊の勤務歴はそこそこある男だ。

「すまないが新人の面倒を見てやれ。初めての事ばかりで戸惑う事も多いだろうからな」

私はそう言って、オロオロとした様子で皆に付いていくキースに目を向ける。

「分かりました」

するとレオも察した様子で頷く。



さて、私も任務に向けて準備をしなければな。今回の任務は貴族令嬢の護衛だが、護衛は1箇所では無く一定の期間に及ぶ。その期間の詳細な日程が分からない以上、何日任務に就く事になるか分からない。


私はレジエス団長に言って任務の用意のために早めに詰め所を出て自宅へと戻った。私の生まれは王都ではないが、仕事の関係上、王都に小さな屋敷を購入しそこで生活している。

「戻ったぞ」

「お帰りなさいませ、レイチェル様」

ドアを開けて中に入ると、1人の女性が私を出迎えてくれた。


亜麻色の髪をロングヘアにし、身を包むのは白と黒のメイド服。彼女の名は『ローザ』。私の家に居る唯1人の侍女だ。彼女は私が幼い頃にクラディウス家に拾われ、侍女として育てられた。聖龍騎士になった当初は独り暮らしを始めるつもりだったのだが、私との付き合いも長いローザが心配して付いて来てくれたのだ。付き合いも長く、私が気軽に愚痴を言える相手でもある。


「ただいまローザ。何か変わった事はあったか?」

「いえ。ご報告するような事は何も。それより、今日は少しお帰りが早いようですが、もしや任務ですか?」

「あぁ」

流石ローザだ。私がいつもより早く帰ってきた意味を良く分かっている。


「それで、日数は?」

「今の所分かっていない。だが警護任務である事を考えると、最低でも1週間近くは家を空ける事になるだろう」

私は着替えるために自分の部屋に向かう。それを数歩後ろから付いてくるローザ。


「分かりました。では私も荷造りのお手伝いをいたしますか?」

「いや、風呂や食事の用意を頼む。明日の朝早くに起きて詰め所に向かわなければならないし、早めに休みたい。用意は自分で出来るから、ローザはそちらを頼む」

「かしこまりました」


そう言って彼女は下がる。さて、私は荷造りをしなければな。


私は自分の部屋に戻ると手早く私服に着替え、クローゼットの中から大きめのバックを取り出し、必要な物、着替えや下着、携帯食料に応急処置のための包帯や仮説テントなどを詰め込んでいく。


本来こう言った食料や物資は聖龍騎士団の物資管理をしている部署から任務の長さに応じて支給される。ただ、その物資に頼り切りと言う訳にも行かない。戦闘が付きまとう以上、支給された物資の損失はリスクとして十分考えられる。なので私は部下達に予備として自分の物資を持ってくるように指示を出している。


しかし私は既に何十回と繰り返してきた荷造りだ。もはや慣れた物でパッパと荷物を詰め込んでいく。


「よし」

そして荷造りが終わると……。

『クゥ~~』

「おっと」

私の腹は、腹が減ったと言わんばかりに自己主張してくる。そろそろ食事に向かうか。ローザが用意してくれているはずだ。


私は一階にあるリビングに行く。そこでは既にローザが料理を並べていた。

「あっ、レイチェル様。良ければ座ってお待ち下さい。今料理を並べておりますので」

「あぁ。そうさせてもらう」

私は椅子に腰掛け、彼女が料理を並べるのを待った。


「大変お待たせいたしました、レイチェル様。さぁ、どうぞお召し上がり下さい」

「ありがとうローザ、お前の作る料理はいつも美味そうだ。早速頂くとしよう。さぁ、ローザも席に着け」

そう言ってローザも座るように促す。


「レイチェル様、何度も申していますが私はメイドです。主と食事を共にするなど……」

「ふふっ、そう言うローザこそ。このやり取りは何百回目だ?私にとってお前はメイド以上に大切な家族も同然。そして、家族の間に遠慮はいらん。何度でも言おう。お前は私の大切な家族だ。さぁ、席に着けローザ。共に食事を楽しもう」

ローザとはもう10年以上の付き合いだ。そして、彼女は私にとって家族も同然。そして思った事をいつものように口に出して言えば、ローザは頬を赤く染める。


「本当にもう、お嬢様はいつもお口が達者なのですから」

「むぅ?そうなのか?自分では自覚が無いのだが……」

口が達者、とはどう言う意味だろうか?他人を乗せるのが上手いとか、そう言うのだろうか?

「本当に。お嬢様のような若く強く美しいお方がそんな甘い言葉を囁いたら、同性の女達だって虜になるに決まってます」

そう言ってどこか呆れた様子のローザ。しかし、何を言ってるんだ?ローザは。私にはさっぱり理解出来ない。ま、まぁ今はその事は良い。


「それよりローザ、お前はどうする?」

「もう。決まってるではありませんか。私も一緒に頂きます」

「あぁ。是非そうしてくれ」



こうして私はいつものようにローザと共に食事をしながらたわいも無い話をしていた。そして食後、私はローザが用意してくれていた風呂に浸かっていた。さて、体を洗わねば。と思ったのだが……。

「おっと、石鹸が切れていたか。確か、脱衣所に予備があったはず」


私は一度脱衣所へと向かった。そしてドアを開けると……。

「へっ!?レイチェル様っ!?」

何故かローザが、私が今日着ていた服や下着を手にしていた。

「ん?どうしたローザ。何をそんなに驚いている?」

「あ、え~っと、これはそのっ!?と、と言うかレイチェル様は何故こちらへ?!」

「あぁ。石鹸が切れていてな。確か予備がこの戸棚にあったはず」


私はローザが同性という事もあって、裸のまま近くにあった戸棚の中を覗く。

「んっ!!」

「む?」

何やらローザの声が聞こえたので振り返ると、何故か彼女は鼻の辺りを抑えていた。


「どうしたローザ?」

「い、いえっ!何でもありませんっ!た、ただ、お嬢様のたわわに実った果実が弾む姿に驚いてしまいっ!」

「果実?可笑しな事を言うな、ローザは。私に果実など実っていないぞ?」

私は苦笑交じりにそう返しながらもう一度戸棚の中にのぞき込む。え~っと、あぁ、あった。


私は予備の石鹸を取り出す。

『ブルッ』

っと、流石に裸で歩くのは寒い。早く風呂に戻らねば。

「邪魔したな、ローザ。私は風呂に戻る」

「は、はいっ!ごゆっくりっ!」


珍しく狼狽するローザを後目に、風呂へと戻った私は冷えた体を温めるために一度湯船に浸かった。……しかし、今更ながらに思うのだが、何故ローザは私の洗濯物を手にしていたのだろうか?


洗濯、をするにはもう夜だ。干しておく事も出来ない。ならば何故?と私はしばし考えたが……。


まぁローザの事だ。何か考えがあるのだろう、と私は納得し、湯船から出ると石鹸で体を洗った。


その後、風呂を出た私は寝間着に着替えて自室へ。そして明日の荷物を再度確認すると、すぐに眠りに付いた。




翌朝。私は早めに起床するとローザの作ってくれた朝食を食べ、すぐに制服に着替え荷物の入ったリュックを背負う。これから詰め所で部下たちと合流するが、その前に詰め所の自室によってツヴォルフと鎧を取ってこなければならない。


ツヴォルフもそうだが、聖剣は私達が持つことを許されているとは言え、常日頃聖剣を持ち歩く事を許されている訳ではない。任務外の時以外は基本的に詰め所からの持ち出しは禁止されているのだ。


「さて、それではローザ、行ってくる」

「はい。無事の帰還を祈っております」

そう言って甲斐甲斐しく頭を下げるローザ。


「あぁ。留守の間、家を頼むぞ」

「はい。いってらっしゃいませ、聖龍騎士レイチェル様」

「うむ」



私はローザに見送られながら家を出た。まだ人気の少ない路地を歩いて詰め所へ向かう。中に入り、自室によってツヴォルフと鎧を装備すると、正門とは別の門へと向かった。そこの近くには厩舎があり、私がたどり着くと既に金属鎧を纏った部下たちが準備を始めていた。


「あっ!おはようございます隊長っ!」

真っ先に私に気づいて敬礼をするマリー。他の皆も次々と私に敬礼をしてくる。

「皆、おはよう。私に構わず作業を続けてくれ。もうすぐ出発だ」

「「「「「はいっ!」」」」」


私の言葉を受けて馬車の荷台に物資や自分達の荷物の積み込みを続ける彼女達。その間に私は厩舎の方へ、そこにいる愛馬の方へ向かった。


「あっ!レイチェル隊長っ!お待ちしてましたよっ!」

そこにいるつなぎ姿の男性、彼の名は『ローランド』。この厩舎で馬の世話をしている者の1人だ。


「おはようローランド。私の愛馬、リリーの様子はどうだ?」

「ばっちりですよっ!」

そう言って笑みを浮かべながらサムズアップするローランド。私は愛馬、リリーの前に立つ。


私の愛馬は、その体が真っ白な事から百合の花、リリーと名付けた。このリリーに跨がっていくつもの戦場を生き抜いてきた。私は静かにリリーの頭を抱く。


「今日もよろしく頼むぞ、リリー」

私が小さく囁けばリリーは頷くように鼻を鳴らす。


私はリリーに乗る。

「それではローランド、行ってくる」

「はいっ、ご武運をっ!」

「あぁ」


私はリリーに跨がり厩舎を出る。そして私が出る頃には荷車付きの馬車に物資を乗せ終えた部下達が、半数は私と同じようにそれぞれの馬へ。残りの10人が2台の馬車に、5人ずつに分れて乗っていた。


私を含めた騎兵10人。馬車2台に騎士10人。これが、私達第5小隊が出撃する時のいつものスタイルだ。


さて、準備は整った。

「よしっ!それではこれより我々第5小隊は任務のため、フェムルタ伯爵家へ向かうっ!道中街道の安全は確保されているだろうが、危険は伴うっ!各自警戒を緩めないようにっ!」

「「「「「了解っ!」」」」」

「では、開門っ!!」


私が声を張り上げれば、衛兵達が重い扉を押して開く。ギギギッと重い音を響かせながら門が徐々に開いていく。……この出陣の時はやはり私でも緊張する。だが、私が少しでも不安や恐れを見せればそれが部下達に伝わり士気にも影響する。それはダメだ。だからこそ、私はどんな時でも気丈に振る舞わなければならない。


「出陣っ!!」

だから私は力一杯声を張り上げ、先頭を行く。部下達の馬と馬車が私に続く。今回の任務は詳細な事がまだ分かっていない。それもまた私に不安を覚えさせた。それでも私はポーカーフェイスを浮かべながら馬を走らせる。


その胸に一抹の不安を抱えながら。


     第2話 END

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― 新着の感想 ―
[良い点] メイドの変態行為に気づかない彼女の姿が、なぜか続きを読みたくなる。 こういう無知な主人公にはいつもイライラする。 でも英雄的な女性ならなぜか気にならない。
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