☆5
私は他の作者様の作品にポイント評価するのが好きだ。
私にとって☆5の評価は基準点であり、よほどのことがないと4とか3はつけたりしない。
では、単純に面白くないと感じた作品についての評価はどうかと言うと、途中でブラバして終わり。評価も感想も残さない。
私はとにかくわがままな読者で、パッと見て文面や文体が合わないとブラバする。改行や字下げしていない読みづらい作品についても同様だ。
作者の意見や作風が合わなかった場合、そこで読むのを止めた早急に立ち去る。
別にそれがマナーだとは思っていないが、あえて波風立てる必要はないと考えている。
しかし……私は最後まで読んだ作品には結構な確率で☆5の評価をする。特にエッセイや短編など、さらっと読めてそれなりに感じるものがあれば、☆5の評価をつける。
最近、それが……ちょっとまずいのではと思い始めた。
普通の短編小説や個人にまつわるエッセイであれば、気軽に☆5評価しても問題ないと思っている。
しかし、何かの物事を強く主張するエッセイである場合、話は変わってくる。
実は……とある強い主張をするエッセイに対して、何気なく☆5評価をつけた。
しばらくしてそのエッセイは削除されたのだが、別の作者様がその作品に対して内容が過激すぎると苦言を呈していた。
私は苦言を呈した方の活動報告を読んで、ハッとする。
深く考えずに☆5評価をしてしまったことで、より過激なエッセイを作者に書かせてしまうのではと思ったのだ。
私はエッセイの中で強い言葉で物事を主張するのを避けている。それは私が他の方からの反論に対して適切に答える自信がないからだ。
だからこそ、そうした強い意見を述べる作品に☆5評価をしてしまう時がある。
読んだ方は気軽に評価できてしまう。私自身あまり深く考えないで評価をしていた。
しかし、☆5評価を受けた作者はどうだろうか?
過激な主張が評価され、どんどんポイントがついて行く。ランキング上位に自分の作品が上がれば、自分の主張が受け入れられたのだと感じるはずだ。さらに賛同者が増えれば、表現もより過激になっていく。
燃料は次々と投入される。☆5評価だけでなく、賛同する感想。ブックマーク。そしてレビュー。
作者を後押しする要素はたくさんある。
それらに焚きつけられて走り切った先に待ち受けるのは、十中八九、破滅であろう。
安易に☆5評価した読者たちは責任を取らない。責を問われるのは作者一人。
そう言った結末にならないとも限らないのだ。
具体的な例を上げよう。
ホームレスや生活保護受給者に対して、過激な意見を述べた例のメンタリスト。
彼は会員向けのウェブサービスを展開して利益を上げていた。当然のことながら、そのサービスの利用者は彼の主張を聞くために金を払っているわけである。
もし気に入らなければ退会するし、そもそも嫌いな人は登録すらしない。
すると、どういうことが起こるのか。
サービスの提供者は賛同者に囲まれ、あたかも自分が正論を言っているかのように錯覚する。もしその意見に対して反論意見を述べる会員がいたら、強制的に脱会させればいいだけのこと。
ツイッターをやっていようが、インスタグラムをやっていようが、気に入らない相手は全てブロックしてしまえば反対意見を聞かなくて済む。
こうして、周りの人間すべてが全肯定する世界が出来上がるわけである。
まるでどこかで見た物語のよう。
誰も否定しない閉じられた世界。その中心に立っていた彼は神にも等しい。
しかし……それはあくまで、その世界の中でのみ成立する話。ひとたび世間の目に晒されれば、瞬く間に炎上することもある。
例のメンタリストは世間の目について意識するのを忘れていたのか。それとも自分の実力をもってすれば社会的通念でさえねじ曲げられると思ったのか。
どちらにせよ、社会的に弱い立場の人たちに対して「不要な者」との烙印を押した彼は、逆に世間から同様の烙印を押されてしまった。
彼自身がどこかで反対意見に耳を傾けていれば、こんなことにならなかったと思う。しかし、それは無理な話だ。
自信なさげに曖昧な表現で無難なことを言う人の意見と、自信満々にハッキリと物事を言い切る人の意見とで、どちらが多くの賛同を集めるか。想像するまでもないと思う。
例のメンタリストの動画を一度見たことがあるが、彼は自信に満ち溢れた様子で雄弁に語っていた。こういった姿に人は魅力を感じるのだろう。
もし彼が普段からへこへこと頭を下げるような人であれば、ここまで注目を集めることはなかったはずだ。定額制の会員サービスも成功しなかったと思う。
だからこそ強気な発言を繰り返し、あのような過ちを犯してしまったのだと、私個人はそのように推察している。
彼の周囲には誰も止めてくれる人がいなかったのだ。
例のメンタリストの件は他人事ではない。
私は彼のように注目を集めたりはできないが、強い主張をするエッセイに☆5評価をすることはできる。
安易に投じたポイントは作者の言動をより強くし、アクセルを踏ませてしまう。
確かに、共感すること、応援することは大切だ。
しかし時にはブレーキになってあげることも必要なのだと思う。
反対意見を述べるのはとても勇気のいることだ。しかし、背中を押しているだけでは本人のためにならない。応援するつもりで背中を押したら、大好きな人を崖から突き落としてしまった。そんな結末の物語、想像しただけでぞっとする。
アナタが安易に投じたポイントが作者を追い詰めることもある。
強く意見を主張するエッセイを評価する際は、できれば一度手を止めてご一考を。




