表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

電子鬼

作者: どんC

なんか凄く眠いです。

 も~いいか~い


 タブレットにその文字が浮かぶ。


 えっ?


 TouTuberを見ていたが、アメリカの歌手だから日本語が出てくるはずはない。


 バグ?


 いや有り得ない。

 目の錯覚かな?

 一瞬現れただけだし。

 私は気にしない事にした。

 私はベッドに寝転がっていたが起き上がり着替える。

 そして、一階のキッチンに向かった。


「花奈おはよう」


「母さんおはよう」


「今日は早いわね」


「うん。宿題のプリントを忘れたから、早めに学校にいくわ」


「そうなの。でも慌てて自転車を飛ばさないでね」


「うん。気を付ける」


「はい。お弁当」


「母さん。ありがとう」


 私はお弁当をカバンにしまうと、自転車に乗って学校に向かった。

 父さんは単身赴任で県外に居る。

 当分ここには帰れない。

 寂しいがしょうがないね。

 私は恵まれている。

 料理上手のお母さんに優しいお父さん。

 家はまあまあお金持ちで、何不自由ない生活。

 不満と言えば、数学の先生の宿題が多い事ぐらいかな。


 信号機の前で止まる。

 ピッピッピッピッと電子音が、時を刻む。


 も~いいか~い?


 私はハッとして辺りを見回したが。

 子供の姿はない。

 それどころか人影もない。

 至って普通の住宅街だ。

 おかしいな。

 確かに子供の声がしたんだけど。

 信号が青に変わったので、私はペダルをこいだ。


「おや? 珍しいね。花奈が宿題を忘れるなんて」


 仲良しの五月さつきが声をかけてきた。

 私と五月はアメリカのロックグループ【ブルーファルコン】のファンなのだ。

 彼女はきりりとした才女だ。

 今度の日曜日、彼らのコンサートがあるから、二人で見に行く事にしている。


「カバンにプリント入れ忘れたのよ」


「それはそれは……私のプリント写す?」


「すまぬ。見せてくだせえ~お代官様~」


 五月は笑ってプリントを見せてくれた。


「ねぇ五月」


 私はプリントを写しながら五月に尋ねる。


「かくれんぼってしたことある?」


「かくれんぼ? 懐かしいね。小学生の時、田舎に帰って従妹達としていたわね。確か鬼が数を数えているうちに子が隠れるって奴よね」


「そうそれ。流行ってるのかな? 学校に来るときに声を聴いたような気がしたの」


「ああ。花奈の家の近くに公園があるから登校前に遊んでたんじゃないの?」


「そうなのかな?」


 信号機の所から公園はかなり離れているから声は聞こえない。

 その事を五月に言う前に先生が教室に入ってきた。



 ~~~*~~~~*~~~~


 も~いい~か~い?


 その声に起こされた。

 スマホを見ると夜中の3時だ。

 夢を見たのか?

 スマホの画面が一瞬だけ歪み人影が映る。

 慌ててスマホを投げ捨てて、布団を被る。


 ま~だだよ~

 ま~だだよ~


 何も聞かなかった。

 何も見なかった。

 これは夢よ。




 ~~~*~~~~*~~~~




 も~いい~か~い


 今日は五月とコンサートに着ていく服を見に来た。

 待ち合わせは電気屋の前だ。

 秋葉原は相変わらず人が多い。

 電気屋の大きな画面に人気アニメの曲が流れる。


 も~いい~か~い


 私はびくりと肩を震わせ、電気屋の画面を見上げる。


 ザザザザザザザザザザザザ……


 画面が歪み一人の少女が浮かび上がる。

 そして……再びアニメの曲に戻る。


 み~つけた~


 女の子の声がした‼


 横断歩道の真ん中に赤い着物を着た少女が立っていた。

 長い黒髪に、口元にはホクロが二つ。


 少女はにたりと嗤う。




「ごめんごめん。待った?」


「うん。待ったよ。罰として不義屋のケーキをおごって~♪」


「あ~しょうがないな~。あれ? 花奈ってこんなに美人だっけ?」


「ふふ……今日はお化粧しているから」


 彼女は照れたように笑う。

 その口元にはホクロが二つ並んでいた。







 五月‼ 五月‼ 五月‼ 気がついて‼


 そいつ‼ 私じゃない‼


 電気屋のテレビの画面に捕らわれた花奈は、画面を叩き声の限り叫ぶ‼

 

 だが……

 

 その声は五月には届かない。

 五月の隣にいた少女はちらりとテレビを見て、勝ち誇ったように嗤う。




 鬼は子を捕まえる。

 捕まった子は鬼になる。


 も~いい~か~い


 も~いい~か~い


 誰か私と代わってよ。


 花奈(鬼)はにたりと嗤った。


 ***************************

   2021/7/7 『小説家になろう』 どんC

 ***************************

感想・評価・ブックマーク・誤字報告よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 今の世の中 幽霊や悪魔もTouTuberなのですね。 相手から通知が来るなんて ベルマークをチェックしたのでしょうか♪ けど、来たのが嫌なメッセージ(声)と 望まないサプライズ(鬼役)で…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ