プレゼント
今日はついにやって来たアリストクラット騎士団の試験日だ。
「待ちに待ったぜ.....試験場は騎士団の演習場だったな。とりあえず、向かうとしよう」
店から演習場まではそう遠くない。部屋を貸してくれた優しい店主に頭を下げ、出発した。
天気は晴れで、風が心地よく体の調子も悪くない。
良い試験日和だ。
30分程歩いただろうか。段々と騎士団の演習場が見えてきた。受付を済ませ、中に入った。
全員受験者だろうか。もう人は数十人集まっている。参加者全員となると、数百人はいくだろう。本当に大規模だ。
肝心な演習場はいわゆる決闘場のような所で、自分の中にある闘争心が燃えてくるのがわかる。
「君も今日の試験に参加するのかな?」
後ろから声が聞こえ、反射的に振り向くと、黒髪短髪で30代前半くらいの大柄、ラフな格好をしたおじさんがいた。
「はい、そうっすけど.....あんた誰?」
「私の事はどうでもいいんだ。遠くから見てたけど、君の剣面白いね」
リッターと同じ事を言ったこの男は、頑張っても貴族のようには見えない。
「ああ、これの事か。なんでも魔石を必要とする剣らしいですよ。持ってないけど」
「ほう.....その剣についてもっと知りたいな。どうやって手に入れたんだい?」
「もう逝っちまった親父が譲ってくれたんだ。大切な物だから、おっさんにはやんねえぞ」
「ほう。君のお父さんがね.....」
大柄の男は難しい表情をしたが、数秒経つと納得したようで表情が軽くなった。
「そうだ。試験に出ることだし、お守りをあげよう」
「お守り.....?」
男はそう言い、丸いガラス細工の様な物を差し出した。なんだか怪しいが、人からプレゼントをもらった経験があまり無かったので受け取ってしまった。
にぎった途端、それはただのお守りではない事がわかった。不思議な力を自分自身のマナが感じとっている。
「おい、おっさん.....このお守りすげえな.....」
「そうだろう。使い方は自分で考えるんだ」
使い方?お守りなんて身に付けるだけで使い方なんてないだろうに。
「なあ、使い方ってどうい」
「じゃあね、今日の試験の健闘を祈るよ」
男はグランツが話終わる前に口を挟んできた。
そしてゆっくりと歩き、人混みに消えていく。謎だ。
「おかしなおっさんだったなあ.....」
困惑しながら、グランツもその場を去った。