ライバル
リッターに連れられ、着いた所は少し小さい喫茶店の様な場所だった。外観は木製で最近出来たばかりなのか、経年劣化はしていない。室内は塵一つなく、隅々まで相当手入れがされている。
「そうか.....宿屋に追い出されたなんてとんだ災難だったね」
「あ、ああ。それよりも、俺みたいなやつがこんな所に居ていいのか?」
「大丈夫さ。この店は僕の家の直属だからね。宿屋の人がやったような事はされないよ」
「直属って.....カンプフ家?ってすげえなおい」
この男に会ってから驚きばかりだ。この店に来るまでの道のりで、殆どの人がリッターの事を知っているようだった。カンプフ家は相当エリートなのだろう。
他にも、リッターが持っていたアリストクラット騎士団の情報や、騎士同士で戦う際の戦術、魔法について話し、時が経った。
「それにしてもグランツ。さっきから気になっていたんだが、君の背中の剣は面白い形をしているね.....」
「このボロ剣がか?これは俺の親父がくれた物なんだ。でも、もう古臭くて買い変えようと思ってたよ」
「グランツ、その剣の剣身の付け根を見てくれ。何かをはめるような窪みがあるだろう?それはきっと魔石をはめるためにあるんだ。それと同じような特徴を持った魔剣を本で見た事がある」
「魔剣⁉︎そんな凄い剣なのかよこれ.....」
ただのボロい剣だと思っていた物が魔剣だったとは.....親父は何故こんな物を持っていたのだろう。
「確か100年前、この国に現れた悪竜ワイバーンを討伐した後、それと似たような特徴を持つ魔剣が消息を絶ったらしい。」
「俺の親父は何故こんな物を.....魔石と言ったよな、それをはめればこの剣はどうなるんだ?」
「簡単に言うと、その魔石が持っている属性を剣に纏わせる事ができる」
「めちゃめちゃかっけえ!けど俺魔石なんて持ってねえ.....」
「僕もだよ、例外はあるけど魔剣自体、各騎士団の団長しか持っていない代物だからね。大事にするといいよ」
気がつくと、窓からは月が見え街灯の光が差し込んできている。リッターともっと話せなかった事を残念に思ったが、仕方がない。
「悪い、俺寝床を探さねえといけないんだ。今日は帰るよ」
「あ、それならこの店の部屋を借りるといいよ。店主には僕から言っておく」
「まじか!頼りになるぜ!」
リッターは立ち上がり、店主と話をつけている。
どうやら、今夜はここに泊まってもいいようだ。
「じゃあ、僕は家に戻るとするよ。話に付き合ってくれてありがとう。
「俺もお前と話せて楽しかった。明日は頑張ろうな!」
二人は軽い挨拶をして別れる。
それにしても、こんな綺麗な場所で夜を過ごせるなんて思わなかった。
リッターに感謝しながら、薄暗い部屋で眠りについた。
グランツの父は謎が多いが、唯一わかる事は剣の扱いに慣れていて、剣術だけなら相当強かったそうだ。しかし、10年ほど前に病に侵され亡くなってしまい、その時の剣は息子であるグランツに預けた。