冒険者登録しに行くか。②
恋愛要素がなかなか出せない…
「さてアレク。第2王子の側近候補も騎士の道もやめてお前はこれからどうする予定なんだい?」
父グイードが徐に話を切り出してきた。そりゃまぁ、気になるところだよなぁ。ある意味出世街道真っしぐらだった息子がいきなり全て無くしたんだから。
「俺はこれから冒険者登録をして冒険者になろうと思うよ。騎士にならなくても国を守る事はできるからね」
「それならこのファンディオール領の騎士になればいいじゃないか!」
「兄さんの言うことももっともなんだけどね。俺はファンディオールだけじゃなくてこのオーレイン王国を守りたいんだ。レイが困っているなら駆けつけてやりたいくらいには、あいつとは仲が良いつもりだよ」
そう。レイモンド第2王子は良いやつなのだ。真面目で厳しくも優しい。自国のことを兄のティアード王太子と一緒に発展し、守って行くと目を輝かせながら話しているくらい良いやつなのだ。
キールのことだってこの騒動の時は俺が見たことなかったくらい怒っていた。だからこそ俺が騎士の道も側近候補を外れる事もいやいやながらも了承してくれた。
『こんな事があって、肩を並べて仲良くなんて出来るわけ無いということはよくわかる。だから離れていくのも仕方がないとわかるが、俺とお前の仲まで離れる事はないだろう?俺は俺の友人を辞めるなんて言わせないぞ?』
レイモンド殿下かっこいいよねー。こんな事真剣な目で見つめられながら言われたんだぜ?そこらの令嬢なら即落ちだよ。
そんなかっこよくて良いやつの作る国を俺は見たいし守りたい。だから自由に移動のできる冒険者になろうと思ったんだ。
「だから俺は冒険者になってファンディオールだけじゃなくて、いろんなところに行って力を付けてこようと思ってるんだ。あ、もちろんホームはファンディオールで活動するよ?兄さんの手助けもしたいしね。それに魔獣が1番多いのはここファンディオールだしね」
「……アレク…」
「心配しないでよ。騎士だって魔獣と戦って命を落とす危険は一緒だよ?その肩書きが冒険者になるだけだよ」
それでも不安そうな表情の兄さんに俺は不敵な笑みを浮かべて
「それに俺がそうそうやられるはずないだろ?知ってるだろ?兄さん」
「……そうだったな。《ファンディオールの創始者》と言われるアレクだもんな。でも、危ない事はしてほしくないぞ!冒険者の依頼なんて騎士の仕事より危険と隣り合わせなんだから」
「わかってるよ。ありがとう兄さん」
「はぁ…そこまで考えてるなら俺も何も言う事ないよ。父さん達は?」
「ん?エドが代弁してくれたからわたしはいいよ。父さんとコーデリアは?」
「わしも大丈夫じゃ。アレクの意思は伝わったからのぅ」
「そうね。私も言う事は…あ!リンデル領とユーグレッド領に行くのはダメです!許しません!あんなとこ助ける価値ありません!!」
「母さん…領民は関係ないだろ?」
「でも!だってー!!」
「そうです!助ける価値なんてありません!やはり私叔父様に文句の手紙を書かなければ気がすみません!」
「騎士団長様からは謝罪の手紙がきたからいいだろう?!ディア!!」
「手紙なんて!!直接謝罪しに来ないなんてあんまりです!!」
「いや、直接ここに来るなんて出来ないでしょ?!王都から5日はかかるからね?!騎士団長様が10日間も王都を空けることなんてできないからね?!」
またもや興奮し出すディアンサ義姉さんと、一生懸命宥めるエド兄さん。とりあえずディアンサ義姉さん。そんな興奮したら赤ちゃんに悪いからー。落ち着けー。
「とにかく、まだ昼だし俺は今からファンディオールの冒険者ギルドに行って冒険者登録をしてくるよ。学院を卒業してから登録なんて、そんな時間のもったいない事なんてしたくないしね」
「そうだな。先輩冒険者から今のうちから色々学んでおきなさい」
「ありがとう父さん。善は急げって言うし、さっそく行ってくるよ」
「待ちなさい。アレク」
ソファーから立ち、立て掛けておいた剣を腰に付けていると祖父が剣を放り投げてきた。
「その剣を持っていきなさい。ファンディオールの剣の一つだ。それはいまだ誰も使いこなせていない物だが、アレクなら使えるかもしれんからのぅ。いずれ渡すつもりじゃったが今で良かろう」
「!!ありがとうございますお祖父様!」
「それと、冒険者登録をするならファンディオールの名を使わぬように。家名で贔屓されるのは嫌じゃろう?己の身だけで駆け上がってみなさい」
「わかりました!駆け上がってみせます!でわ行ってきます!!」
そして俺は冒険者ギルドに向かった。
いまだ興奮しているディアンサ義姉さんをエド兄さんにまかせて。