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ガーディアン  作者: 回れ右
1/1

超能力=かっこいいという幻想は即座に壊されました

投稿が不定期でかなり間隔が空くこともしばしばですがめげずに読んでくださると幸いです。

  現代の日本では超能力を持つ人の人口が4割を占めている。しかし、超能力とは言ってもとんでもない力を持つ者は少ないというかいない。

  せいぜいが空を飛んだりできる程度で、それなみの能力さえ希少だ。それでも、超常現象が身近であることに変わりはないので大抵のことには奇異の目を向けたりなんかはしない。

  それでも、そういったことが無くなる訳では無い。

  新学期から1ヶ月と少し、ゴールデンウィークが終わったあたりだからこそ周りは特に何事もなく授業を受けているが最初の頃は明らかに目立っていただろう(現在でも教室内で気にしている人がいないだけで目立ってはいる)生徒が高校2年生の教室にいた。

  というかそれは俺こと三上良だ。所々曖昧に表現しているがすごく視線が集まっていたのは事実だ。

  個人的には気にしないで欲しいのだが、おそらくそれは無理だ。だってもしも俺が皆と同じ立場なら俺も間違いなくそいつ(俺)の事を見ずにはいられないからだ。

  どうしてそんなことになるかと言うと俺が鉛筆もしくはシャーペンの代わりとして筆ペンを使っているからだ。

  別に使いたくて使っている訳では無い。俺の能力のせいでそうしなければならないのだ。

  その能力とは衝撃相殺である。特に能力名に名前は無いので名前は各々が好き勝手につけてそれを書類に記入している。

  中にはなかなか痛い名前をつけたりしている人もいるが大抵が自分の能力を一言でまとめたものだ。俺のものも母親がつけたものである。

  俺らの時代は能力を四文字熟語でつけるのが主流だったので生徒の大半は能力名が4文字だ。

  最近では2文字らしく結構頻繁に変化している。

  俺の能力はその名の通りあらゆる衝撃を打ち消す。例えば、車にぶつかった時、その衝撃は打ち消され吹っ飛ばされることは無い。しかし、押されはするのでそのまま車が前進すれば普通にひかれてしまうので便利とは言い難い。

  銃器とかなら完全に無力化できるのだが日本では関係ない。

  ここまではまだいいのだが残りのふたつの効果がとても不便だ。まず1つ目は自分から運動エネルギーを物体に与えることが出来ない。このためにためにボールを投げたり、蹴ったりして相手に渡すことが出来ない。つまり、体育における球技ができないのだ。

  2つ目は軽いものの摩擦が無くなってしまう。5キロ以上の物にに対しては発動できないが、それ以下のものの摩擦を無くしてしまう。これの影響で鉛筆やシャーペンが使えない。これが俺が筆ペンで授業を受けている理由だ。ちなみにボールペンも何故か使えない。

  何よりこの能力は常時発動し続けるのでどうしようもなくめんどくさいのである。

  大抵の能力は意識発動型で本人の意志によりオンオフが可能なのに、それが出来ない常時発動型は希少ではあるが俺にとっては不便だ。

  さらに、俺の能力は接触することで効果が発揮できる。

  これはこの場合においてはデメリットだ。

  そんなこんなで不便な生活を送っている俺である。

  キーンコーンカーンコーン

  5時間目終了のチャイムがなった。授業は6限までなので普通に嬉しい。

  俺は少し楽しい気分になりながら次の授業の準備をするべく廊下へ化学の教材を取りに出た。

  「なんか楽しそうだね」

  ロッカーから教材を取り出そうとしている背後から声がかかった。

  この声は林道纏だ。纏は俺と家が隣の幼馴染でかれこれ小学生からの付き合いだ。

  現在は隣のクラスなため、俺と会うことはあまりない(主に俺が帰宅部で纏が何かしらの活動に所属しているのが原因だ)。

  「なんか用か?」

  「うん、なんか用だよ!」

  分かりきっている答えが返ってきた。

  「何の用だ?」

  「いやぁー、放課後さー。ちょっと手伝って欲しいことがあるんだよね」

  2度目にしてようやく要件が伝えられたが、何をが抜けていた。すごく曖昧だ。

  「何をやればいいんだ?」

  さすがにめんどくさい事はやりたくないのでここは明確にしておきたい。

  「それはまた、放課後ということで!じゃあね」

  しかし、はぐらかしたまま纏は自分の教室に帰ってしまった。纏は口下手というか慌てたりするとボロが出るのでそれは正しい判断なんだろう。

  そんなわけで俺は放課後、纏に付き合うことになった。

  そして、放課後。

  自分のクラスの前の廊下で待っているが纏はなかなか来ない。

  手伝いを頼むほうとして相手を待たせるのは如何なものかと思う。

  まぁ、結局来るまで待つのだが。纏に関してはそこら辺がルーズなので多少の待ちには慣れていた。

  「ごめん。待たせたよね」

  その10分後に纏が来た。その左手には何やら模様のようにマッキーで文字がびっしりと書かれているのだが俺はスルーした。

  触らぬ神に祟りなしである。

  「ぜんぜんまってってないよー」

  その代わりに棒読みで定型文を返した。

  「そんなんじゃ全然ダメ!もう少し女の子をいたわるような感じで!」

  怒られた。

  立場からして纏はそんな事言えないはずなのだがどうやらそこら辺は関係ないらしい。

  「とりあえず何すればいいの?」

  2回やり直しさせやれたあと、何とか話を本題にもどせた。

  ちなみにやり直した2回はとてもぎこちなかった。

  そんなこんなでやっと本題に入れるかと思ったのだが「会議室へ行く」との纏の言葉で現在、会議室へ移動中である。

  そして、どうやら会議室は特別棟の方にあるらしく、纏は渡り廊下に向かって歩いていた。

  ちなみにうちの学校は1から3までの全学年の教室がある普通棟と職員室や音楽室、図書室などがある特別棟とで別れている。

  普通棟から特別棟に行くには各階にある渡り廊下を渡らなければならない。

  体育館やら部室棟やらがプールなどが校舎とは少し離れたところに存在している。

  基本的な校内の構造は把握しているのだが会議室がこの学校にあるなんて知らなかった俺は纏の後に続く感じで歩いていた。

  「それで俺は何をするんだ?」

  改めて先程の休み時間に聞けなかったことを聞く。

  「それは、会議室に着いたら説明するよ」

  依然として纏の答えははっきりしないものだった。

  何か隠したいような事柄なのだろうか?

  しかし、いつまでもはぐらかされ続ける俺ではない。

  「言えない事なのか?そんなに面倒なのか?なら俺は帰るけど」

  揺さぶりをかけた。

  こうすれば纏はテンパって何かしらボロが出るはずだ。俺とて伊達に10年近く纏と共にすごしているのだ。

  幾分か罪悪感があるがそれには触れないでおこう。

  「会議室で詳しく話をしてくれる人がいるから!それまで待って。お願い!帰らないで」

  しかし、纏はボロを出さなかった。

  見たところ左手に書かれた文章を読んでいるらしい。

  どうやら向こうもその辺の対策はしているようだ。

  それにしても、少し涙ぐんだような声だったのは何故だろう?纏の後ろにいるので表情が見えないから(纏は感情が表情に直ぐに現れるタイプの人間だ)気の所為かもしれない。

  それは置いておいて俺は別角度から攻めることにした。

  無駄に対抗心が出てきたからだ。

  どこまで俺の質問を予測し、左手に書いているのかを試したくなったのだ。

  「ところで会議室って何に使っているんだ?」

  何をするのかに対してはかなりの準備ををしていると踏んだ俺は場所の用途からやることを導くことにした。

  会議室といえば職員会議とか集まりがある場なのだろうが入学以降会議室で生徒間の集まりがあるとは聞いたことがないし、職員会議も職員室で行われている。

  つまり、用途が分かればやることも自然と判明する……はずだ。

  「えーと・・・・・・・・物置!そう物置とかだよ!」

  纏は直ぐにボロを出した。

  見た感じワタワタと慌てた後、左手を凝視していたので予想外の質問だったようだ。

  物置ならまだ掃除かな?とか考えようがあるけれど物置とかという表現では他にも用途があると言っているようなものだ。

  相変わらず抜けている。

  「それで、物置以外にどんなことに使われてるんだ?」

  「・・・・・・!!」

  どうやら俺の言葉で自分の失言に気付いたらしい。

  何とか言おうとこちらを向いて口をパクパクさせているがいい言葉が浮かんでいないご様子だ。

  この時点でもうそれなりな面倒事である事はバレているので隠す必要は無いのだがどうやらそこは譲らないらしい。

  「もう正直に話したらどうだ?」

  見かねた俺がそういったものの纏は首を横に振った。

  現状、俺と纏は物置らへんから渡り廊下の半ば辺りで止まってこのやり取りをしているので時間切れも狙えないのだが、意地でも話さないらしい。

  追い詰められた挙句、涙目になりつつある纏に罪悪感を感じている俺だがまだ折れる気はなかった。

  「お願い。理由は聞かずに付いてきてください!」

  半ば泣いている感じでかつ敬語で纏はお願いを使った。

  「わかった。ついて行くから」

  そして、俺は折れた。毎回こんな感じで俺は纏の頼み込み特に泣きかけているものを断ることが出来ていない。

  先程折れる気は無いとか思っておいてこのザマだ。

  なんだかんだで纏に甘い俺なのだった。

  こういったことに関しては昔からのよしみなのか最終的には許容してしまう。それはもう癖みたいなものだと自覚している。

  一方の纏は笑顔である。さっきまでの涙はどこへやら。目尻に残る涙の残りの以外、先程まで泣いていたとは思えない変わりようだ。

  表情がコロコロと変わるのは昔からなので俺としてはなんてことは無いのだが、関わり初めはついて行くのがなかなかに大変なのかもしれない。

  「ほんっとにありがとう!」

  纏は一言そう述べたあと再び会議室へ歩き出した。

  俺もそれに続く。

  本来、纏の能力を持ってすればこういった場面も上手くやり過ごせるし、そもそもボロを出したりはしないのだが纏本人の苦手意識のせいなのか口論などといった話すこと全般に対して上手く能力を発動できていない。

  なんでも苦手意識が強すぎて、自分ができるビジョンを上手く思い浮かべられないために憑依が上手くいかないのだとか。

  ちなみに纏の能力は通称、人格憑依。

  頭の中に思い描いた人物になれるというものだ。実際に姿かたちが変わる訳ではなく、あくまでも人格だけが変化する。

  この能力の利点は基本的になんでもこなせるところだ。

  例えば料理人を想像すれば実際に料理が上手くなるといった要領だ。

  イメージも実際に出来ている場面ではなく、どういうことが出来るのかをしっかりと思い浮かべていれば問題ない。つまり、料理人が料理をしている場面ではなく、料理人のみを想像すればいいという訳だ。

  他にも数学者なら数学が画家なら絵画ができるようになるといったふうに使える。

  なお、喋り方も反映されるので一人称が変わったり、方言になったりする。でも、何故か外国語にはならない。

  また、イメージの精度によってそこまで上手くなれなかったり、すごく上手かったりと変化する。

  そんな感じで大変便利な能力だ。

  持続時間が10分でインターバルをしっかりと取らないと効果が切れたあとも一定時間喋り方が戻らなかったり、上手く発動できなかったりなどといった問題点もあるが俺のよりかは全然マシだ。

  「着いたよ」

  振り返った後纏はそう言った。

  もう行き止まりの時点で着いたことは分かっていたのだがここは言わない方がいいだろう。

  会議室の位置は3階の一番端だ。

  そもそも3階は資料室とか生徒会室とかと言った一般生徒に関わりの薄い場所が集まっているため来ることは滅多にない。

  加えて、1番目に付きづらい場所に会議室はあるので俺が知らなくても無理はないと思う。

  会議室は少しボロかった。特に会議室と書かれているプレートがくすんでいて、かつ、少し傾いているところが使われていない感じ満載だった。

  さらに立地的に日差しがあまり入ってこないために全体的に暗い。

  そのため用もなく入ろうとはなかなか思えない感じだ。

  纏はそこら辺はさして気にしていないらしい。

  何度か訪れていて慣れたのだろうか?

  まぁ、そこら辺は考えてもキリがないのであまり気にしないようにしよう。

  「さびれてるな」

  思っていたことがついつい口に出てしまった。

  「まあね。使われていなかった期間がそれなりにあるからかな」

  「どれくらいなんだ?」

  「詳しくは知らないけど最低でも2年ぐらいは放置されてたらしいよ」

  俺の予想以上に使われていなかった。

  しかし、放置されていたとはどういう意味だろうか?

  過去形ということは現在は使われているということだ。纏は物置とか言っていたが物置という使い方は放置していると言ってもいい気がする。

  となるとやっぱりそれ以外の用途があるのかもしれない。

  「じゃあ、入るよ」

  纏の言葉で俺は考えるのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回はいつになるのか未定です。

出来るだけ早くしたいと思っています。

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