黄金の馬は自覚する
自我を持つようになってから、ここがあるゲームの世界観と同じであることは理解していた。
前世になるのだろうか、ここの世界を画面越しに見ていた時の記憶はあるのだけれど…自分が死んで生まれ変わったのか…夢見ているのか…その辺りは全く自覚がわかない……
気がつけばここで産まれていて、鏡を見たら自分がヒロインの顔をしてたのだ。
いやぁ、はちゃめちゃにびっくりしたよ!!!
そしてどうやら私はヒロインのマリアンヌ=G・ルドー男爵令嬢のようで自分でも驚くほどの可憐な容姿をしていた。
たしかヒロインは地位が低い男爵のコネクション作りの希望の星として、無理して作った大量の納付金と共に学園に入学する。
そこで出会った第三皇子や側近達と仲良くなって行くのが大まかなストーリーだったはずだ。
しかしそこにはやっぱり敵がいる。
第三皇子の婚約者様のカトレア伯爵令嬢だ。
ヒロイン視点では悪役令嬢とされ、事あるごとにつっかかってくる。
まぁでも伯爵令嬢が説いてくることは至極真っ当なので冷静に考えてみれば、納得のいくことばかりである。
しかし、それを全て受け入れていたらこちらが堕ちてしまう。
このゲームは、ヒロインサイドか伯爵令嬢サイドかが選べる仕様だったはずだ。
双方ハッピーエンドというルートはない。
どちらかが都堕ちし良くても貴族からの除名、悪くて投獄や処刑だ。
片方のハッピーエンドは、片方のバッドエンドの上にしか成り立たないようになっている。
だから私が大人しく皇子達に接触しなかったとて、彼女サイドは私を堕としにかかってくるはずだ。
「ふふっ、楽しみだなぁ」
こんなにドキドキする生き方は今まであっただろうか。
せっかく前世の中身のままヒロインに生まれ変わったのだ。今からフラグを折って行く準備をしたっていいはずだ。
マリアンヌは本来大人しく、慎ましく、可憐で比護欲をそそる少女のはずである。
しかしそれではいずれ来る皇子の暴走や、最悪貴族堕ちした時に対処が出来ない。
そしてなによりただの令嬢だと、カトレア様だってつまらないに決まっている。
なぜかこの時カトレア様も自分と同じであると信じて疑わなかった。
びっくりしてほしいなぁ。
そうして私は街のギルドを訪ねたのだった。