馬鹿の幕開け
「フェルリア、お前との婚約の破棄をここに宣言する。」
「寝言は寝てから言うもので御座います、殿下。」
ほら始まった。
卒業パーティという学園の延長線上でしかない今日この場で、国のお偉い様方のなにやら壮大な身内喧嘩が幕を開けた。
周りは静まり返り、全ての人が彼らから視線を外すことができない。
そして私はよしきたとばかりに程よく焼けた肉汁滴る大きな塊を、これでもかと頬張るのだ。
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一番最初は私達の入学式から始まった。
お貴族様だろうが商人だろうが、なにかしらの条件さえクリアしていれば入学することのできるのがここ聖バヤシュヌ学園。
そしてここをより良い形で卒業することが、この国での輝かしい未来への確かな土台になると言われている。
『学園には上下はなく、皆平等であり同じ学び舎の友である』
なんてことは謳い文句なだけで、実際は外の世界をそのまま凝縮した上下関係が当たり前のように存在する。
在学期間中お貴族様方はコネや嫁ぎ先との縁をしっかりと繋ぎ、商人や農民達は学を持ち帰り少しでも我が家の発展に繋げようとする。
お貴族様と関わりがあるとすれば大きな商団の子息か、希少で高価値の特産物を担っている農家くらいなものだ。
そんなものだから、暗黙の了解としてお互いがお互いに干渉せずそれぞれの目的の為に3年間という限りある時間を有意義に過ごすのである。
そう聞いてた。
そうみんな言っていたじゃない。
それが入学式にこの国で最もお偉いイケメンが、冒険者の少女をお姫様抱っこして入場してきたその瞬間に私の中の平和のふた文字が音を立てて崩れたのが分かった。