ACT.87 最優の交戦(Ⅲ)
ティアキンしてました。
失血で肉体を削り、異能を封じて殺害する。
それが、"最優"の粛清騎士が選択した最適解。
だがしかし、その解答は所謂なしよりのありでしかないというのもライは理解していた。
折った警棒の先端は鋭利であるが強度は足りない。
先程脇腹を刺した右手の警棒にちらりと視線を合わせると、その先端はいくらか丸く摩耗していた。
一回か二回使ったら刺突武器として肉を貫くのは厳しくなるだろう。
防御面でいっても、盾無しで密着した近接戦闘を仕掛けるのは無謀。
一撃離脱で、どれだけの有効打を放てるのかはライ自身にとってもまだわからない。
倒し切れるのか、それとも先にコチラが仕留められるのか。
「案外、ギリギリかな」
転生者の手間、余裕のある態度を示し続けるライがボソリとそう溢す。
一番勝率が高そうな手立てはまた別にあるのだけれど、それに対してライが出来ることはこれ以上ない。
だからこそ、今は自身が出来ることに全力を出すしかない。
「──殺すッ!」
相手が攻撃を仕掛けるより先に、ライが動く。
わざと声を上げて威嚇し、自身に注視させる。
そして先程脇腹を抉り刺した右手の警棒を構えて警戒をさせて、中空に置くように動かさず──。
──足で地面の石礫を蹴り上げて、その目を狙う。
目に向かってくるものに対しては、反射的に目を閉じるというのは生物全体の防御反応。
その一瞬で距離を更に詰めようとライは画策したのだが。
転生者はそれに対して奇声を上げた。
「アギャァァァァ!?」
一瞬視界を塞がれた事で、次に何かされると勘づいた化け物は、その場で闇雲に手足を振り回して暴れ出す。
まるで子供の癇癪を彷彿とさせる稚拙な攻撃だが、そこにリーチとパワーが加われば話は違う。
更にいうなら、考え無しの攻撃というのも不味かった。
裏の読心にも引っかからないから、咄嗟に入れ替わって避けることが出来なかったからだ。
闇雲に振るわれたその腕の一振りが、ライに直撃する。
咄嗟に腕を盾にして急所を守るが──瞬間、右腕に異音。
腕が折れたことにいち早く気がついたらライはすぐさま踵を返して後退する。
「まずいッ!」
利き腕をやられ、これ以上の交戦で勝利することは絶望的だ。
仮に引くにしても、奴から逃げ切れる保証は皆無。
限りなく詰みに近い状況に、ライの額に一筋の汗が流れ落ちる。
「最悪、死んでもストックを削り切る!」
自身の死を覚悟し、ライが左手で警棒を握りしめたその時。
「──ライくん!」
ライが考えうる一番勝利の高そうな手立てが──。
「お待たせ!」
──レオーネ・ゴドウェンが復活した。




