ACT.83 その在り方(Ⅰ)
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結局、気絶するように再び気を失ったレオーネ。
そんなレオーネを放って置くことなど出来ずに、ライは彼女を抱き抱えて走る。
そうして彼が訪れたのは、スラム街にあるある肋屋だった。
「すまない!」
ライが一応の一声をかけて、そのまま肋屋に入り込む。
「あ、や、いきなり何──って、騎士様?」
そこに居たのは、先日レオーネによって助けられた不労者の小男だった。
昨日の段階で、万が一を想定して彼の日中の居場所を聞き出していたのだ。
「どうしてまた憲兵の格好なんかしてって、姐さんどうかしたんですか?」
ライたちの格好を不審がりつつも、抱き抱えられたレオーネを確認するなり彼女の心配をする小男。
「少しの間、彼女の身柄を預かって欲しい」
今、すでに場所がバレている拠点に意識のない彼女を一人置いて置くのはリスクがありすぎる。
一応あの時、顔は見られてない筈とはいえ、このタイミングであんなことをしでかす理由があるのはライたちぐらいだろうから憲兵団側からの何かが恐い。
証拠が無いから公的に何かはしてこないだろうが、あちらも素性を隠しての何かしらはしてきそうだからだ。
そう考えると、憲兵団が不可侵──もとい無視を決め込んでるスラム街に彼女の身柄を置いた方が安全だろう。
「頼めますか?」
丁寧に、小男に向かって頭を下げるライ。
そんな彼の姿に逆に萎縮するのは小男の方だ。
「や、やめて下さい。貴方が頭下げるような男じゃないっすよ!?」
彼は、街に国に不要とされて存在すら認められていない弱者であり。
逆にライは、代わりがそうそう居ない粛清騎士という強い立場を持つ者であり。
ライが彼に対して頭を下げる姿は、彼にとってはむしろ空恐ろしいという感想を抱かせた。
例えるなら、今ここでライが彼の首を特に理由もなく刎ねたとしても国は彼を罰しないだろう。
それ程まで身分と立場が違うのに、ライは彼を対等の人間として頭を下げているのだから。
「僕も貴方も、同じ聖教会の信徒ですよね」
「いや、そうですが」
「ならば、女神の下に僕たちは同じ人間です。そこに違いはありません」
そこで小男は気がつく。
初めてライと会った時、レオーネと自分らが酒盛りをしていたのを見て酷く落胆していた。
その時は、レオーネが不労者と同じ酒を囲んでいたからと思っていたが、そう言えばライは一度も不労者に対して何か嫌なことを言ったりもしなかったということを。
差別されて、蔑まれて当たり前なのに、それらをしなかったことを。
「僕たち聖騎士が守るのは国民じゃなくて、信徒ですから。そこにはちゃんと、貴方達も含まれてます」
まっすぐな視線で、答えるライ。
その目を見て、小男は心の底から感動した。
薄汚れた自分には、そんな心などもう無いと思っていたのに。
人から人間扱いされるということが、こんなに嬉しいとは思っていなかったと。
「──はい、はい! あっしでよければいくらでも力になります!」
Q.ちなみに聖教会の信徒じゃなかった場合は?
A.「ACT.15 」をご覧下さい。




