ACT.80 呪縛と覚悟(Ⅱ)
【祝】80話!
「今、奴を殺せないと私は──」
そして次の瞬間、彼女は驚くべきことを言い放った。
「──次に会った時、弟を殺せない」
レオーネの言葉を聞いた瞬間、ライの心臓が跳ねる。
「今、何といいましたか」
それは彼の想定していなかった言葉。
ライはしゃがんで視線をあわせると勢い良くレオーネの肩を掴む。
「転生者を逃してるんですか!?」
聖教会のひいては粛清騎士たちの転生者討伐率は低く無い。
その理由はいくつかある。
ひとつが、粛清騎士たちの練度の高さ。
次に、聖教会に蓄積された対転生者用のノウハウ。
最後に、相対する転生者たちの練度の低さがある。
聖女ステラの神託による転生者の早期発見によって、彼らが完全に異能を使いこなす前に狩ることができるということ。
おそらくこれが、粛清騎士たちの勝利に最も貢献している次項であろう。
──だが、それは逆に。
時間をかけて異能を完全にモノにした転生者を相手にした場合は、そうではないということだ。
故に異能を使いこなした転生者と対峙することは、粛清騎士たちにとって非常にリスクの高い──致死率の高い任務になる。
そのリスクを避ける為に、聖教会は聖女に頼っているのだが──。
「あれから十数年経ったけど、あの子はまだ討伐されていない」
レオーネの告白に、ライは血の気が引く思いをした。
覚醒から十数年、異能の研鑽をした転生者の存在。
「初耳ですよ、そんな爆弾の存在」
粛清騎士となって三年、ライはそんな規格外の存在を知らされていなかった。
「──事情が事情だから、聖教会内でも知っているのは聖女ステラや序列三位までとカーティス特務とか数人だけ」
沈痛な面持ちでレオーネは言葉を続ける。
「私の弟、アベル・ゴドウェンは──アサミネ・シギは今の聖教会が唯一殺せていない転生者」
その存在は内外に知られることは聖教会の、ひいては粛清騎士の権威に傷がつきかねない。
だからこそライにも存在が隠匿されていたのだろう。
しかし、今ここで彼女はその事実を聖教会側の許可無しにライに打ち明けた。
下手をするなら、彼女には重い罰則が下る可能性がある。
「私は、あの日逃してしまった弟を殺す為に粛清騎士になったの。だから、あの子と同じ異能を持つこの転生者だけは──」
それでも彼女が打ち明けたということが示すのは、ひとつ。
「──私だけの手で殺したい」
──あまりに強い、呪いともいえるほどの覚悟だ。
ちなみに二章の件は、直接会敵してないのでノーカン扱い(by聖女ステラ)です。




