ACT.78 トラウマ(Ⅳ)
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「──異能の副作用で人を喰わなきゃならないなんてな」
その台詞がジャクソン・ベイリーの口から漏れた時、レオーネに変化が訪れた。
瞬間、ライの中で傍観に徹していた"俺"の中に強烈な感情──いや思い出が流れ込んでくる。
読心の異能を通って、レオーネが今思い出した過去が雪崩れ込む。
その強烈な思考・感情の激流が俺に強い頭痛と眩暈を引き起こす。
これが読心の異能、その欠点だ。
能力の範囲内で強すぎる感情や酷い過去が想起された時、それが俺にも無条件で流れ込む。
それが容量超えてしまったら、酷い頭痛なんかが起こってしまう。
以前、混沌教団で戦った未来視の異能を持った転生者も俺の異能とかち合った結果容量超過したのが敗因だったか。
これは精神系能力者の共通の弱点なのかもしれない。
そして問題なのは、コレが俺だけの問題ではないと言う事。
俺とライは一つの肉体を共有している。
ようは、俺の意識はライの脳の一部を借りて存在している訳だ。
つまり、今回の様な異能の負荷は──、
「な、頭がッ!?」
──ライにも降りかかる。
突然の激しい頭痛に見舞われたライは、傍らのレオーネの様子には無論気がつけない。
気がつける余裕がない。
「──か、がっ、ごふっ」
レオーネは思い出してしまった自身のトラウマによって酷い不調を来たし、咄嗟に口を押さえる。
だが、堪えきれなかった胃液が押さえた手の隙間からゴボゴボと溢れ落ちる。
「ん、なんだ?」
そして例え隠れていたとしても、そんな異常な気配を発していれば気が付かれるのは道理といえた。
二人の気配を察知したジャクソン・ベイリーが動く。
ライは頭痛、レオーネはトラウマで状況把握が出来ない状況。
ここで見つかる訳にはいかないのに、防ぐ手段は二人にはない。
──仕方ない。
頭痛は抱えたままだが、同じ条件下ならライより俺の方が部がある。
粛清騎士がいる時に交代したくはなかったが、背に腹はかえられない。
グロッキーな彼女がライが代わったことに気が付かないことを祈ろう。
カチリと意識のスイッチを入れ替える。
表から裏へ。
瞬間、一気に机の下から飛び出す。
先手必死だ。
相手に顔を認識される前に、仕留める。
獣の様に重心を下に置き、相手の真下に滑り込む。
そして両手で床に触れて身体を支えて、逆立ちをする様な姿勢で──。
「がふっ!?」
──真下からジャクソン・ベイリーの顎を蹴り上げる。
その衝撃で脱力した彼の胸部をそのまま両足でホールドし、もう一人の側近に対してぶん投げる。
そして体勢を整えて立ち上がり、机に手をかけてその上にある書類を全て彼らに向けて投擲する。
大量の紙が舞う室内で、予想つかない状況に陥った上で、冷静に状況確認ができる人間なんて早々居ないだろう。
俺は憔悴したレオーネを抱えて走り、ドアを蹴破って廊下に出る。
入り口まで走る余裕は多分ない。
「えぇい、南無三!」
どうにでもなれ、みたいな気持ちで手近な窓を突き破る。
訪れる三階からの自由落下。
それを受け身を取って、最低限のダメージで受け流し、姿勢を立て直して間髪入れずに走り出す。
こうして無事脱出は成功したはいいが、改めて考えてみても人間離れした身体能力だと思う。
日々鍛錬を怠らない表に感謝!




