ACT.71 トラウマ(Ⅱ)
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書類の山を片っ端から見聞していくライとレオーネ。
しかしながら膨大な量が未整理で残っていた為に、とても苦しい戦いを強いられていた。
「えーとこれは“来期予算について"だから別!」
「これは"プロキシマ市街祭典警備計画書"? 雑に扱っていい奴じゃないですよねこれ!?」
バタバタと書類の山に目を通していく中、ライはある奇妙な書類を発見する。
「"新都市再開発計画"?」
それは憲兵団の団長の手元にあるには不自然な書類だった。
目を通して見ると、そこには──。
「レオーネさん!」
「何、なんかあった?」
「これを!」
ライがレオーネにその資料を差し示す。
書類に記されていたのは、プロキシマ行政機関主導の新たな都市開発企画。
そして、再開発の対象になっているのはスラム街であった。
「ライくんはこれどう思う?」
「憲兵団の仕事には直接関係なさそう──いや」
何か強い引っ掛かりを感じて口元に手を当てて、数秒考え込むライ。
「行政側からの根回し?」
彼が結果的に出した答えは、ソレであった。
「"スラム街で邪魔な奴らをどうにかするけどお前らは無視しろ、事件にするな"みたいな」
思えばライが集めた情報と、スラム街に住む彼らから聞いた話には大きな齟齬があった。
何かしらの大きな事件が起きている筈のスラム街と、其方側を一切感知していない市街側。
単に住んでいる者同士の格差や対立が原因かとライは思っていたが、おそらく違う。
意図的にスラム側の声を、情報をカットしている。
行政側は邪魔なスラム住民たちを、市街地側の住民に人知れず消し去ろうとしている。
その協力を憲兵団に、いやベイリー団長に要請していたのではなかろうか。
「もしそうなら、あの転生者がスラムの人たちを襲っていたのは」
目を見開いてレオーネが呟く。
彼女もその点がずっと疑問だった。
スラム街に住む彼らを襲うこと自体に、転生者側になんのメリットがあるのか。
「異能の試し斬りじゃなくて、襲うこと自体が目的だったんだ」
思わず書類を持つ手に不要な力が入る。
ライの手が、怒りに震える。
プロキシマ行政側と国の治安維持組織である憲兵団、そして聖教会の敵である転生者の三者による協力関係。
エルトール伯の事件とは構造が似ていても、規模と状況がまるで違う。
どこの誰が、いったいどこまで関与しているのか。
この任務の結果次第で、終わり方次第では犠牲者は転生者の首一つでは終わらなくなる。
──国と宗教との、戦争の火種になりかねない。
「過去最悪の事件じゃないか」




