ACT.69 不利な敵地で(Ⅴ)
▽▲▽
一夜明けて。
朝日が黄金の光で街を照らし始める前に、ライとレオーネは行動を開始した。
粛清騎士の証である黒鎧を脱いで、前もって用意していたごく一般的な衣装に着替える。
そして人目につかないように裏口から影伝いに拠点を出る。
光を避けるように市街地を走り、彼らが目指すのは憲兵団の屯所。
──二人は、団長であるジャクソン・ベイリーに狙いを定めていた。
▽▲▽
「僕は日中、プロキシマの各公的機関回ってジャクソン・ベイリー団長の周辺洗ってました」
「あ、やっぱり?」
ライがその名前を出した途端、レオーネはそう返した。
敢えて自身が彼を怪しんでいるという話を今までしてこなかったのにレオーネがそういう反応を返したということは、少なからず彼女も彼を怪しんでいたのだろうとライは思った。
「なんかイケスカないよね!」
──その理由は、凄い私情だったが。
「えーと、彼の周りで不自然な事が起こってないか、主に公的な金回りとか変な事件がなかったかとか」
ライ自身は彼が転生者であるとは考えてない。
どうしてそう考えたのか、理由は彼がある程度の力を有する権力者であるからだ。
全てが全て当てはまる訳ではないが、基本的に転生者は権力に固執しない傾向がある。
何故なら彼らは異能という誰にも奪われる心配のない、そして非常に有用な財産を保有しているからだ。
彼らはその気になれば何でも出来るし、手に入る。
仮に全て失っても、いくらでも立て直しが出来る。
──異能があるから。
他人には決して真似できない、自分のみが永遠に所持しつづけられる優位性。
それがあるからこそ、彼らはわざわざ時間とリスクをかけてまで権力を欲しがらない。
権力を、必要としないのだ。
だからこそ、ジャクソン・ベイリーは転生者ではない。
彼がもし転生者であれば、憲兵団の長という器を維持するだけのメリットがないからだ。
「あの団長、全然変な所がないですね」
「あ、無いんだ?」
「──不自然なくらい、ですけどね」
ライは顎に手を当て、眉間に皺を寄せて話を進める。
「公金の流れとか派閥抗争とか人間関係とか、本当に何も問題が無くて、無さすぎて変ですね」
誰にだって不都合な事実や面倒な側面がある。
それなのに、ジャクソン・ベイリーにはそれが一切無かった。
つけ入る様な些細な隙が、無さすぎた。
「多分、意図的に隠蔽してますね」
そして彼らは、ジャクソン・ベイリーの周辺を更に徹底して調査する方針を固めたのだ。




