ACT.60 粛清騎士レオーネ・ゴドウェン(Ⅲ)
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「──成程、そういった事が昨晩あったんですね」
「そーなのよ! 危うく私も死んじゃうかと!」
「普通の人間は、火災の中心地にいたらまず死ぬんですけどね」
昨晩にあった激戦のあらましをレオーネから聞いたライは非常に嫌そうな顔をする。
エルトール伯爵の事件から数日後。
領地から聖女ステラの指示で直接向かったのは、プロキシマという都市だ。
王国内でも上から数えた方が早いほど発展した都市で、大きな交易路に面しており人の出入りも多い流通と商業の街である。
先行して任務に当たっていたレオーネと追加要員として派遣されたライ。
そしてレオーネが今いる場所と言うのが──。
「ってことで、ライくん。早く出して?」
──留置所の牢屋の中であった。
プロキシマに近接するスラム街の片隅にあるゴミ山で昨日ちょっと大きな火災が発生し、その下手人──放火犯の疑いで彼女は憲兵団にしょっぴかれたのだった。
彼女のその有り様に軽く頭痛、というか眩暈の様なモノを感じてライは思わず眉間を押さえた。
粛清騎士とは聖教会に所属する聖騎士たちの中でも選りすぐりの存在である。
そんな聖教会の看板を背負っているような立場の彼女が、街の憲兵団に捕まって牢屋にぶち込まれているのは余りにも酷い。
「釈放の手続きはやっておきますので、もう少し待っていて下さい」
「やったー、ライくん愛してるぅ!」
状況を理解しているのかいないのか、そんな適当な事を言いながら格子の隙間からライに抱きつこうと手を伸ばそうとするレオーネ。
その様子に慌てて格子から離れるライ。
「ちょ、やめっ! 臭い臭い臭い!!」
「あー、女の子に対して言っちゃいけないこと言ったなぁ!!」
「少しは客観的に自分の惨状見てから言って下さい!」
ゴミ山にいた事、そして火災に遭遇したことで彼女の身体からは酷い悪臭がした。
見張りの憲兵も、部屋に充満する悪臭にげんなりした表情を隠しもしていない。
「あーもう、さっさと手続きしますので僕はもう行きますね」
面倒くさい酔っ払いみたいな絡み方をする先輩騎士を見限って、ライは見張りの憲兵に軽く会釈をして部屋を出る。
ライのその挨拶に憲兵の青年は、完全な無視で答えた。
部屋を出て通路を歩きながら、すれ違う憲兵たちの不躾な刺すような視線を内心居心地悪く受け取りながら彼は嘆息する。
「やっぱり、仲悪いんだよね聖騎士と憲兵団」
実際のところ、レオーネが牢に入れられた理由は容疑者云々が半分、もう半分は嫌がらせだろう。
実は、聖教会所属である聖騎士たちとルバウス王国所属の憲兵団の仲は非常に険悪であることは、この国でかなり有名な話だった。
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