ACT.50 答え合わせ(Ⅰ)
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転生者の襲撃から翌日。
天を昇る太陽がとうとう真上に差し掛かろうとした、その時である。
──エルトール伯の屋敷の扉が強引に蹴破られたのは。
「失礼する!」
黒鎧を纏い完全武装をしたライが、らしくない大声を上げてずかずかと屋敷に侵入する。
散乱する木片を踏み砕きながら、ライは一直線に階段へ──2階にあるエルトール伯がいるであろう執務室へ向かう。
階段の踊り場に差し掛かった所で、慌てた様子のメイドが走って追いかけて来た。
「き、騎士様!? これは一体!?」
突然の暴挙に唖然とした表情の彼女は、それでも臆せず階段を駆け上がってライを止めようと向かってきた。
それに対してライは、即座に剣を引き抜く。
「ひっ!」
「問答無用、邪魔だてするのであれば──」
絶対零度の視線が少女を射抜く。
紫色の瞳には、冷酷な殺意が漲っていた。
「──斬る」
漆黒の刀刃、その切っ先がブレることなく少女の喉元に突きつけられる。
一歩でも動けばそのまま喉笛を差し貫かれるその距離と気迫に、彼女は金縛りにあったかのように動きを止めた。
「エルトール伯の背信行為は明確。故に聖女ステラに確認を取るまでもなく、今日この場で僕が処断する。庇うのであれば、貴方も同罪だ」
理屈や理解の範囲外、明らかに常軌を逸したライの行動。
しかし、ただのメイドである少女に彼を止める手立てはない。
──切っ先が下げられたのは、抵抗の意志がなくなったのを見破られたからか。
去っていくライの背中を見送る少女はその場にへたり込み、静かに床を濡らした。
そして、そんな少女に構う時間はライにはない。
逃げられる前にエルトール伯を確保する必要がある。
廊下を駆けて、執務室の扉を盾を使った突進でぶち破る。
「は、あ、い、いや、な、何故こんな」
屋敷にライが突入した時点で、急いで逃げようと支度をしていたのだろう。
エルトール伯は部屋中をひっくり返して、複数の書類をかき集めていた最中のようであった。
完全武装し、既に抜剣した状態で踏み入って来たライの姿に、迫力に腰を抜かして床を転げるエルトール伯。
哀れなほどに狼狽える彼に、ライは無慈悲に告げる。
「──貴方の様子から背信行為を行なっているのは明白。ただその証拠が見つからなかった」
「は、はい?」
「見つからなかったが、どうやらソレが証拠の様ですね」
ライの冷たい視線が、彼の持つくしゃくしゃの紙束に向けられる。
その瞬間、ただでさえ青白かったエルトール伯の顔色が土気色に染まる。
「あ、あぁ、いやこれは──」
「転生者に与する者に、粛清を」
粛清騎士ライ・コーンウェル。
彼がその象徴でもある黒い刃を振り上げだ瞬間──。
──本来の目的が、達成された。




