ACT.41 二人一組(Ⅳ)
ライとノアがそんな話をしているうちに、自然と夜は更けて人々が酒場に集い始める。
だんだんと馴染みの者たちが集まって、愉快な話題と明るい笑い声があふれ出す。
その光景を、感慨深い表情でライは遠巻きに見つめる。
「どうかしました、パイセン」
「――いや」
ライは、こういう光景を見るのが好きなのだ。
人と人との繋がりや笑顔、そんなものを眩く感じてしまう。
ライが普段”驢馬の鬣亭”に住んでいるのも、そこで酒を飲む常連客たちの暖かな交流を見ていたいという理由もあった。
こういう無辜の人々の笑顔と安寧を護る為に戦う。
ライにとっては、その意義を再確認できる光景だった。
そこから更に夜は更ける。
いい感じにアルコールの回った常連客達は、その時点でようやく見慣れない顔の存在に気が付く。
この酒場にあまり似つかわしくない、若い二人に。
「んぉう? なんや、あんさんら? ここいらでみぃへんかおやな?」
髭を蓄えた恰幅のよい男が、千鳥足でライたちの元へやってきて赤ら顔をぐいっと近づける。
口内から漂うアルコール臭に、思わず顔をしかめそうになるライだが、ぐっとこらえて顔をあげる。
この展開は、チャンスだ。
酒によって警戒心も緩んでるし口も軽くなっている。
そんな情報源が、みずからこっち来たのだから。
「え、えぇ! ちょっと旅行でエルトール領地に立ち寄ったんですよ。――ねぇ、兄さん」
ライはそう答えてノアにも話を振る。
だが、ノアはぼけっとこちらを見つめるだけで反応しない。
痺れを切らしたライは、テーブルの下で軽くノアの足を蹴る。
それでようやく状況に気が向いたらしいノアは『え、兄さんってジブンっすか!?』というアイコンタクトを送ってきたので、ライは無言で頷き返す。
「そっすね、南方の――テレサ領から来たっす」
「おー、ずいぶんとーくから来たんやな! うちはどないだったか? おもろいか?」
にこにことした表情で、男はそうライたちに問う。
それに対し、ライはこちらに来る前に仕入れた知識を持って答える。
「先ほど来たばかりで、まだ観光していないんですよね。――確か、ここは畜産で有名でしたよね」
「おうよ! 豚の腸詰がめちゃうまい!!」
がははと笑って酒を男は煽る。
そこに、ノアは本題を差し込む。
「ジブンらも食べたいんスけど、ここの酒場じゃ今注文できないらしくって」
そう、この地での名産品であり、よく食べられているという腸詰が何故か食べられない。
畜産業が衰退しているとか、諸事情で出荷が止まっているという訳でもない。
何故ならば、この地の景気が以前よりもよくなっているから。
畜産業を生業にしている住民たちも羽振りがいい。
――それは、何故か?
「あぁ、今はそっちに豚をおくってないんや」
「それは、どうして?」
「領主さんが、全部めっちゃ高値でこうてくれてっからやで」




