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ACT.40 二人一組(Ⅲ)

 ▽▲▽


「癒着、ねぇ」


 軽薄そうな面持ちの青年、ノアは安ワインを口に含んで飲み干し、物憂げにそう呟いた。

 場所はエルトール伯の屋敷がある街、ミモザ。

 そのミモザにある酒場にて、彼とライは食事を取っていた。

 二人の恰好は無論粛清騎士のソレとは違う、普段着とも言える姿でいた。

 それは、酒場で住民たちの会話を盗み聞きして、簡単な情報収集をする為。

 だが、少し早い時間に来てしまったが故に、人が疎ら。

 仕方なく雑談に花を咲かせていたのだ。


「転生者との癒着って、メリットあるんスかパイセン?」


 付け合わせのパンを(かじ)りながらそういうと、グラスに入った水を飲んで口を湿らせたライがノアの疑問に答える。


「転生者というのは、何も異能を持っていることのみが恐ろしい訳じゃないんですよ。――ある意味、異能以上に厄介なのがその記憶(ちしき)


 そう言ってライは少し眉間に皺を寄せ、過去を思い出す様に米噛に指を当てる。


「転生者が以前いたという異世界、そこで知りえた知識をこの世界で活用しようとすることがしばし確認されている。例えば、農産物に使用する現行の肥料より良い肥料を作ったり、特殊な金属を生成する技術を有していたりとか」


「――それ、どこが悪いんですか?」


 きょとんとした表情でノアはそう言った。


「だって、それってこの世界をより良くするモノなんじゃないですか」


 彼はそう素直な感想を述べる。

 本来、聖教会の理念に疑問を抱き、それを発言するという行為は聖教会に属する者としては咎められる行為だ。

 それが聖騎士筆頭、粛清騎士が口にしていい訳がない。

 ――だが、この騎士ノア・ローは違う。

 彼は、聖教会の理念や教えに対して従順な騎士ではない。

 そのようなモノより、合理性や結果を重視するような、理想や教えに殉ずる聖騎士というよりは、学者などに近い現実主義(リアリスト)であった。


「それ、絶対レオーネさんの前では言ってはダメだからね」


「うっす、自覚してます」


 教会の教えを絶対視しているレオーネの前でもし言ったら、大変なことになっているのは明白。

 本人もそれは理解しているようで、()()()()()ライにはその疑問を口にした。

 ライならば、頭ごなしなことを言わず、きちんとした理由を答えてくれると知っているから。


「――確かに、技術自体に善も悪も無い。だが、この世界には、バランスというものがあります」


「バランス?」


「今、この世界に根差す技術や知識っていうは、昔からある技術の延長線上にあるものですよね」


「はい、アレですよね。科学は台所から生まれた的な」


「そう、全ての技術に遡れる元の原理が。――そこに、異世界から突如新しい、現行のモノより良い技術がもたらされたら、どうなります?」


「皆がその新しい方を活用しようと、する?」


「もし、その技術に何か欠陥があった場合は?」


「――あ」


 もし、突然もたらされた外来種的な技術が行き渡ったあと、その技術にとんでもない欠陥があった場合。

 例えば、当初は作物をグングン育たせていた新肥料が、突然謎の疫病をはやらせたりした場合はどうなる。

 元々ある技術を発展させたモノだったなら、その発展系統を遡れば原因がわかり、対処法がわかるかもしれない。

 そもそも、この世界に合わせて少しずつ発展させた技術なら、そんな拒絶反応の様な作用が起こるリスクが低い筈だ。

 ――そもそも、異世界の技術がそのままこの世界に活用できるのか?


「異世界からもたらされた技術や知識というのは、この世界のバランスを根本から崩してしまう可能性がある。だから規制しているんですよ、聖教会は」


「成程ぉ」


 少し間延びした口調で、彼は納得した様に首肯する。

 それに対して、ライはこう持論を述べて、この話題を締めた。


「この世界は、この世界自身の力で発展するんだ。そこによそからの手助けは要らない」

作中でライが述べたのは、あくまで作者個人の意見です。

きっと反論異論はあると思いますが、「これはこういう意見もあるんだな」程度に受け止めてもらえればうれしいです。

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― 新着の感想 ―
もたらされた知識が危険って気づくだけでも大したもの。 過去にそんな災害があったのか、それとも教会に味方した転生者が 無作為に知識を広めるのは危険という知識を理解させたのか。
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