ACT.38 二人一組(Ⅰ)
天高く舞う大鷲が、真上に昇った太陽を背にして大地に小さな影を落とす。
その影を踏みながら、二頭の馬が大きな門の前にやってきた。
「ん、誰が――」
門――関所を扱る二人の衛兵の内一人が、突如現れたそれらに近づく。
二頭の馬には、それぞれフード付きの外套を目深に被った男が騎乗していた。
「すみませんが、聖教会の指示でここは今閉鎖していまして」
申し訳なさそうにそういう若く人が好さそうな衛兵の青年。
だが、その態度は馬上の二人が外套の端をめくって見せた瞬間、一変する。
そこにあったのは、聖十字があしらわれた夜空の様な濃紺の騎士鎧。
その鎧を纏うことが許された人物は、この世界に八人しかいない。
「通してもらえるか」
フードの下から発せられた声はとても若い。
ともすれば侮られかねないほどに若いその声に対し、衛兵は雷に打たれたかのように急に姿勢を正す。
「し、粛清騎士様でしたか! ど、どうぞお通り下さい!」
緊張して思わず叫んだ若い衛兵のセリフに、門の近くに待機していたもうひとりの衛兵も驚いた様に背筋を伸ばす。
「ありがとう」
そう言って一言お礼を述べて、少年声の騎士は馬を走らせ、もう一人もそれに続く。
二人が駆けていった先を見て、若い衛兵は相棒の元に近づき興奮冷めやらぬ様子で話しかける。
「お、おい今の粛清騎士様だぞ! この国で最も強い八人の騎士! まさか出会えるなんて!」
粛清騎士という、いわば最強の称号を持つ者を間近で見て言葉を交わしたことに彼は感激していた。
その様子に相棒の衛兵は若干呆れ顔だ。
だが、それも無理はない。
何故なら、粛清騎士たちは普段はゴツいヘルムを被って、決して人前で素顔をさらさない。
しかし、今回遠目で見た感じ、フードの下は素顔であった。
おそらく、馬長時間を駆る為に外していたのだろう。
まじかで彼等と言葉を交わした、若い方の衛兵はその素顔を少し見た筈だ。
「――で、粛清騎士様ってどんな顔していた?」
門の前に立っていた方の衛兵が尋ねると、若き衛兵はこう答えた。
「直接話した方は、私より年下のようで、もうお一方は同年代の男性でした」
――この道を駆け、ある街へ任務を負って向かったのは二人の粛清騎士。
一人は、序列”最優”の騎士・ライ・コーンウェル。
歴代最年少で任命された、若すぎる少年聖騎士。
そして彼の今回の相棒の名は、ノア・ロー。
序列第七位、”最適”の騎士とも呼ばれる不真面目で軽薄な、聖騎士らしからぬことで有名な粛清騎士であった。
二人が向かう先にあるのは、エルトール伯が治めるとある街。
そこには、ある強烈な疑惑が聖教会から向けられていた。




