ACT.37 そして歯車は軋み廻る(Ⅲ)
「『万象は流転する』。ーーそれこそが真実だと僕は思うのだけれども、彼等は違うのかな」
「ーーはい?」
明るい日差しの差し込むテラスで、ぼんやり外を眺めていた筋骨隆々とした金髪の大男・シギは突如背後から話しかけられて、厳つい顔に似合わない素っ頓狂な声をあげた。
振り返るとそこにいたのは、シギたちリーダーでもある虹色の瞳を持った黒髪の少年ーー“竜王”だ。
「シギはどう思う?」
「自分ですか? いやまぁ、その通りなんじゃないですか? ほら、前世の学校で習った雨降って川になってみたいな」
「ーーは、馬鹿じゃねぇの?」
シギが問いに答えた瞬間、竜王の纏う空気が一変する。
幼い顔立ちはそのままだが、表情は眉間に皺を寄せたキツイものに変わっていた。
その変貌ぶりにシギは動揺するかと思いきや、少し眉を寄せただけでリアクションはあまり無い。
彼のその様子から、現に竜王と行動を共にし始めてからコレが日常と化していることがわかる。
「コイツが言いたいのは、そんなことじゃねぇよ。 木やら川やらじゃなくてーーえっと、なんつったけ? おいツー! なんだっけリーーなんとか?」
そこまで一息で言い切ってから、一拍だけ彼が押し黙る。
すると竜王の粗暴な雰囲気が鳴りを潜め、今度は女性的な雰囲気を纏う。
そして今度は、大きな溜息をついた。
「“輪廻転生”ね、ワン。馬鹿が透けて見えるわよ」
「輪廻転生っすか」
実感を感じていないような雰囲気で首を横にする。
その様子を見た竜王は、軽く笑って纏う雰囲気を元の少年に戻す。
「つまり僕が言いたいのはね、『転生者も自然現象の一部』なんじゃないかなって思ってるってことだよ」
「俺たちも?」
「だっておかしいじゃないか、転生者 は何で居るんだ?」
「それはまぁ、何か理由があるんじゃないんすか? こう、『世界を救う』的な」
「ーーシギって、もしかして前世中学生?」
「な、なんか問題あります!?」
巨漢の男が急に恥ずかしがって、焦ったように声を荒げる。
その様子が滑稽で、ふっと竜王は笑い出した。
「あははっ、シギは可愛いね!」
「ど、どういうことっすか!?」
「い、いや他意は無いよ」
竜王は、慌てて馬鹿にする意図が無いことを笑顔と手振りで示す。
しかし、彼は笑顔を消してこう続ける。
「僕はね、転生者がここに居ることに特別な意味なんて無いと思うんだ。 強いて言うなら、きっとここに生きる他の人達と同じで“当たり前”にもう一度生きるためにってのが理由かもしれない」
ーーだけど。
「聖教会は、そうとは思ってくれないみたいだ。 ーーだから、ちゃんとわかりあわないとね」
ーー例え、どんな犠牲を払おうとも。
ーー最後に分かり合えればきっとそれは“ハッピーエンド”だよね。




