ACT.34 竜王と踊る
「ーー転生者!!」
ライはそう言い、剣と盾を構え直す。
それを見た彼ーー虹瞳の転生者は朗らかに笑う。
まるで目の前のライをーー転生者の敵である粛清騎士を軽んじているかのようだった。
その様子にライは危機感を覚える。
この転生者は、今までの転生者とは違うとライは直感する。
今までライが狩ってきた転生者たちは皆強敵であったとライは思っていたが、今目の前にいる少年の姿をした化け物は、それとは一線を画す存在であると。
故に、慎重に動く、動かざる負えない。
先手を打つなんてことは、現状では愚策だ。
「う、どうしたんだい騎士様? 何もしないのかい? なら、僕と話をしないかい?」
その問いかけに、ライは無論答えない。
ライのその様子に、少年はむぅと小さく唸る。
そして少し不服そうに、こう呟いた。
「まさかここまで融通が、もとい意思疎通も困難な人だとは思わなかったなぁ。人選間違えたかなぁ?ーーハズレだったか」
そういって目に見えてガッカリした表情を浮かべて、空を仰いだ。
視線が自身から外れたことを感じたライは一瞬距離をつめようと身を乗り出した。
ーー瞬間、猛烈な寒気が背筋を駆け上がり、動きを急に止める。
何かが走り出そうとしたライの眼前を走り抜け、地面に大きな裂傷を刻む。
「くっ!?」
それは、不可視の鋭く重い斬撃だった。
間一髪のところで避けたライに、少年は少し驚いた表情を浮かべて、手を叩いた。
「へー、あれを避けるなんてやっぱり粛清騎士って凄いんだね。ーーじゃあこうしよう」
手をぽんと叩いて、いいことを閃いたというような顔をしてこう言った。
「君を適当に痛めつけて、粛清騎士の情報を聞き出そうか」
彼はそう軽々とライを拷問する旨を宣言する。
その発言と同時に強烈な衝撃が、突如ライを襲う。
「がっーーげぼっ!」
不可視の衝撃波に全身をしたたかに打ち付けられたライは、口から大量の血を吐き大きく吹き飛ばされる。
一瞬で鎧もひしゃげ、ぼろぼろの体でライは地面を転げた。
「はぁ、はぁ、くっそ!」
ライは自身の無能さを恥じた。
まさかここまで実力に差があるとは、想像だにしていなかった。
「あー、やっちゃった。ーーまぁ、まだ息があるし、結果オーライだよね」
そう嘯きながら、少年はライに近づく。
全身に重傷を負ったライを見下ろしながら、こう言った。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。ーー僕は竜王。 転生者の王をさせてもらってる者だ」
笑顔でそんなことを言った少年ーー竜王は、敵意を感じさせない声でこう続けた。
竜王がライに敵意を持っていない理由は、単純。
ーー敵意を持つほどの脅威を、ライに感じていないからである。
「僕はね、僕たちの敵らしい粛清騎士たちのことが知りたくて、君をここに呼んだんだ。ーー組織の規模は?構成員は?リーダーは誰?そしてーー、うん?」
そこまで一気につらつらと話だし、そしてあることに気がついて言葉を止めた。
「あ、死んじゃった」




