ACT.33 街の脅威(Ⅳ)
「はぁぁあああっ!」
己を鼓舞する様に叫び声をあげリゼは盾を振るい、群がる八匹の小型竜のうちの一匹を殴り飛ばす。
しかし、いくら小型だといってもその力は脅威。
殴り飛ばした衝撃で、盾を持つ左腕の関節がミシリと悲鳴を上げる。
その痛みを堪え、彼女は右手の槍を自身の死角へと無造作に突き刺す。
すると、カンッという乾いた音とともにその切っ先が床に弾かれる。
だが、それと同時に死角へ潜り込もうと動いていた別の一匹が行動を阻害され、たたらを踏む。
瞬間。
「――!」
その一匹を目掛け、瞬時に槍の穂先を翻し突き刺す。
奴らの身体は硬質な鱗に覆われ、適当な攻撃では致命傷は与えられないということを、以前ライから教わっていたリゼ。
故にここで狙うは鱗で覆われていない上に、致命傷となりうる――眼球。
『GAIN!!』
そしてその一閃は、見事に右目を射抜き――貫通。
頭蓋を割ってその奥の脳髄にまで穂先が達し、致命傷を与えることとなった。
だが、それは一気に自身を窮地に陥らせる行為でもあった。
槍が頭蓋に引っ掛かり、抜けなくなったのだ。
槍の様な長物が穂先に重量のあるモノを括りつけられてしまった場合、使い手は身動きが取れなくなる。
「不味い」
焦りのあまり初歩的なミスを演じてしまった彼女を食い殺そうと、残った竜たちが疾駆する。
お互いの距離はあまり離れていない。
猛然と、一気呵成に襲い掛かる竜の群れは、リゼの心に『死』を隆起させるに十分であった。
故に、リゼ自身が今まで気が付いていなかった一面が、この時に現れる。
「――このぉおおおおお!!」
そう叫ぶと、彼女は自身が貫いた竜の亡骸ごと槍を持ち上げ、勢いよく横凪ぎに振るう。
そして飛び掛かった竜のうち二匹をまとめてその槍の柄で殴り飛ばし、更には遠心力を利用して切っ先の亡骸を外すことに成功した。
しかし槍を引き戻す猶予はこのままでは無い。
故に彼女は、槍の円運動に合わせて体を捻りながら大きく一歩飛びのく。
その一瞬生まれた新たな猶予を利用に、そしてその円運動を利用した無駄のない動きで槍を振るい、迫りくるうち二匹の動きを抑制する。
しかし、それで防いだ攻撃は四匹分。
残りの三匹は、順にリゼに襲いかかった。
一匹が、槍を持つ右腕に勢いよく嚙みつく。
硬いはずの鎧は一瞬でひしゃげ、牙が腕に食い込む。
その痛みにリゼは歯を食いしばり、続く二匹の攻撃に備え覚悟を決めたその時だった。
――突如、竜の噛む力が消えた。
「――え?」
そしてリゼは気が付く。
自身の腕に嚙みついていた個体だけでなく、全ての個体の動きが止まっていることに。
そして嚙みついてきた個体はその顎を腕か外し、ほかの竜たちと共に後退。
――速やかに水路の奥の暗がりに走って消えた。
その謎の行動に一瞬、リゼは呆けたように立ち尽くしたが、すぐに思い出す。
「せ、先輩は」
竜たちのこの行動は、奴らを統率しているであろう転生者に何かあったことは明白。
それなら、自分が先へと送り出したライにも何かがあったのでは。
「先輩――」
そう言って彼女は、負傷した腕を庇いながら後ろの光指す方へ歩き出す。
――そして、たどり着いた簡易住居の中で見たモノは。
「――っ! ライ先輩!!」
粛清騎士を表す漆黒の鎧の隙間から、夥しい量の血を流し地面に倒れている彼の姿であった。
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