ACT.32 街の脅威(Ⅲ)
「――地下の抜け道。じゃあ、転生者はここのどこかに」
「いや、多分ここ」
そういってライは地図の一点を指さす。
刺した先にあったものは――。
「ここには、管理者用に簡単な住居がある。そこをある程度いじればおそらく」
その言葉に、リゼは静かに唾を飲み込む。
ここまでわかったなら、やることはただ一つ。
「朝食を取り次第、乗り込む」
▽▲▽
「――静か、ですね」
僅かな明かりを頼りに道を進む二人だが、地下下水道は想像以上に静かであった。
鎧の足音をかき消す程度には水音はすれど、それ以外の異音は何一つしない。
「あの竜たちの何匹かは、周囲を巡回させているのかと思って戦う心づもりをしてきたんですけど、いる気配もないですね」
「ここに隠れることに絶対の自信があるのか。それともそれができない理由があるのか――明かりを消せ」
突然ライにそう言われ、リゼは慌てて明かりを消す。
そして静かにライは水路の奥、曲がり角を指さす。
その角からは、僅かな光がのぞいていた――目的の場所からだろう。
現在使われていないはずの施設のはずなのに、明りが付いている。
その理由は明白――誰かが、使っているのだ。
角の壁に背中をあわせて、ライがのぞきもむ。
光の漏れた先、目的の簡易住居があった。
そして、その周囲には待機させられた八匹の小型竜がいた。
「――的中ですね」
そういって、静かにリゼは息を呑む。
併せてライは、改めてヘルムを被りなおしてこう言った。
「合図をしたら、一斉に駆け出せ。あの竜たちは極力無視して中にいる転生者を確保する」
「確保、ですか? 殺すのではなく」
「あぁ、始末するより先に、聞きたいことがある」
「わかりました――いつでもいけます」
リゼの返事を聞いて、ライも息を落ち着かせ、整える。
そして、意を決して一歩踏み込んだ。
「行くぞ!!」
「はい!!」
そう言って盾を前に構えて二人は突進する。
突如現れた二人の存在を瞬時に感じ取った竜たちが一斉に立ち会がり、素早く襲いかかる。
それを盾で弾き、いなし、時に殴り払いながら速度は一切落とさずに、ライたちは駆け抜ける。
しかし弾かれた竜たちも即座に体勢を立て直し、再度遅いかかる。
その瞬間、リゼが反転しライに背を向け立ち止まる。
「私がここを抑えるので、先輩は!」
「――頼む」
そう言い残してライは走る。
そしてたどり着いた住居の扉を勢いよく蹴破りながら踏み入ったその時――
全てが、変わった。
ライは、確かに管理者用の簡易住居に踏み込んだはずだ――はずだった。
だが、踏み入った先にあったのは青空。
そして、緩やかな風の凪ぐ草原だった。
「――な」
おかしい、ライは絶句する。
ここは地下のはずだ、狭い簡易住居の中のはずだ。
それなのに、ここはどこだ。
混乱するライが焦り、周囲を見渡そうと首を動かそうとする。
瞬間――。
「――やぁ、初めまして」
耳元で、声がした。
背筋が一瞬で凍てつき、即座に振り返り飛びのく。
「あぁ、驚かせてしまったね」
そう優し気に言葉を紡いだのは、少年だった。
白いフード付きのローブを纏った、黒髪の少年。
しかし、その少年には通常と異なる奇妙な点があった。
その瞳の虹色の光彩と、目元にある鱗状の痣だ。
「お前は」
少年にもこの状況にも、一切何も理解が及ばないが、ライはただ一つ理解したことがあった。
目の前の少年はおそらく――。
「――転生者!!」
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