ACT.31 街の脅威(Ⅱ)
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バシャリ。
二人が底に降り立つと、その足が水たまりを踏み抜いた。
「暗いな」
「待ってください、今明かりをつけます」
リゼがそう言って手に持った特殊なランタンに火を灯す。
すると暗闇が少し退けられ、赤い煉瓦造りの壁や床が映し出される。
それと同時にリゼは鼻孔を掠める悪臭に少し顔を歪める。
頑丈な造りの壁と床、すぐ横を流れる水路、そして強烈な悪臭。
二人の粛清騎士は、街の地下――下水道に降り立っていた。
▽▲▽
食堂でライの発言を聞いたリゼは、目を見開いて驚いた。
あの竜の群れとの遭遇は昨夜の一回だけ。
それなのに、もう奴らのボス――転生者がいる場所が分かったのだというのだから、ある意味当然かもしれない。
「先輩、なんでわかったんですか!?」
「そうだな、じゃあまこれを見てくれ」
そう言って彼がテーブルに広げたのは、この街の地図であった。
この地図は、ここに来る前にあらかじめライが確保してきたモノだった。
しかし、その地図にはもともと書かれていなかったであろう複数の赤い丸印とラインが複数引いてあった。
静かにライはその丸印のうちの一つを指さす。
「ここが、最初と思われる事件があった場所。次にここが――」
そう言って次々と丸印――事件があった現場を指し、ライはこう言った。
「これらを見て、何か気が付くことはあるか?」
そう言われて、リゼは地図をしげしげと眺める。
この街自体は、首都程ではないが大きく発展していて、しいて言うならばその事件現場は人通りが少なそうな路地が多かった。
事前に報告にあったこととして、時間帯はばらつきがあったのでそこは共通点ではない。
拠点をこの地図だけで探れるような要因は、リゼには見当が付かなかった。
しかしながら、むしろその着眼点で探すなら、一つ不自然な点があった。
「――各事件現場同士が、かなり離れているというか、ばらけていますね」
事件現場はそれぞれ偏りなく、まんべんなくこの街に散らばっていた。
――そう、それがリゼの感じた違和感。
普通、特定の潜伏場所をもって活動する場合、事件が起こる箇所というのは得てして固まるものだ。
拠点から近かったり遠かったりは、犯人の性格によるとは思うが。
しかしながら、この地図を見る限りそのような偏りは見当たらなかった。
つまり、これが指す事実は――。
「転生者は、常に拠点を移動している?」
「――と、僕もそう当たりをつけて役所に問い合わせて、ここしばらくの間に複数回引っ越しを繰り返しているような不自然な住人がいないか聞いてみたのだけれど、そういうのは無かった」
そのライの返事を聞いて、リゼは小さくうなる。
今の自分の考えとはまた別の答えが、この地図には隠されているのか、もう一度考えこむ。
――そもそも、犯人である転生者にとって都合のいい拠点の条件とはなんだ。
まず第一に見つかりづらいこと、第二に犯行を重ねやすいということ。
霧を操れる能力が転生者のモノだとして、それで視界をある程度覆えるからと言って、それはあの竜たちの移動を完璧に隠蔽できるほどのものなのか。
どの場所に拠点があったところで、そこがおかしい。
あの夜霧移動しているという報告は上がっていない。
夜霧は自分たちが遭遇した時もそうだったが、突如現れ、突然消えた。
つまりそれは――
「――もしかして、奴らは独自の移動経路を持っている?」
「正解だ」
そう言ってライは、地図の上にまた新しい地図を広げる。
それは、街の地図と同じ大きさの、別な経路を記した地図であった。
「これは、この街の下水道の経路図だ。シスターに頼んで役所からもらってきた」
「下水ですか」
「以前は行政が管理していたが、二か月前に王国の法改正で行政管理事業の一部を民間委託することが決まって、先月ココの前管理団体が撤退し、今月から委託された民間企業が管理するはずだったんだが、トラブルが起きたようで、まだ着任できていないらしい」
「――それって」
「あぁ、今この地下には誰にも管理されていない秘密の抜け道が張り巡らされているということだ」




