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ACT.179 星に焦がれて(Ⅳ)

 リゼ・ハウエルは蹴渡された槍を寸分の迷いもなく蹴り上げて、両手に取り構える。

 並行する話し合いに説得は無意味と悟った故に。

 そして、その根源たる感情が裏切れないモノだと彼女自身が知っているが故に。


「覚悟」


 手にしたソレは普段使っている槍と比べて幾分か長く、その上に盾も無い。

 しかし、得物の違いで駄々を捏ねる程リゼは子供では無いし、その程度の事で実力が損なわれる程度の柔な鍛え方はしていなかった。

 踏み込みと同時に牽制無しの鋭い刺突が、アイシャへと向かう。

 アイシャが手にするのは大剣。

 それも特注と思われる鉈のような刃は、重心の位置が刀身の先へ寄っているとリゼは見抜いていた。

 アイシャはこの瞬間に刃を下に向けて大剣を持っていたが故に、首から上へ持ち上げて防御するのは不可能。

 それを見据えて眉間に向かって放たれた切先に、アイシャは目を見開く。

 欠片程の情け容赦のない、殺意の刃。

 数多の試合(たたかい)を潜り抜けて久しく感じることのなかった命に触れてくる攻撃に、彼女の口角は人知れず引き上がる。

 正確精密な刺突は狙いも読みやすい。

 一歩後ろへ足を下げて姿勢を下げつつ、首を逸らすことでその穂先を躱す。

 しかしそれはリゼは織り込み済み。

 いつもの片手槍では無く、両手で操るが故に出来る槍術もある。

 右手のスナップを効かせて槍を後ろへ飛ばす様にして引き、左手で止めて再度押し出す。

 狙いはまたしても眉間。

 長槍だからこそ可能な、素早い二度突き──いや。


「シッ!」


 短い息と共に彼女は再度穂先を戻す。

 二突目をフェイントにした、本命の三度目。

 眼前に迫る刃に防衛反応を返さない生物なんて存在しない。

 二度とも同じ箇所を狙ったのも、本来の狙いを隠蔽する為。

 初撃を放つ際に踏み倒した足を軸に、引いた槍の柄に力を込めて姿勢を下げてその身を翻す。

 リゼの本命は、槍の柄で行う足払い。

 先の二突を避けようとした為に、足回りは浮ついている。

 槍術では無く棍術を基礎としたその足払いは、リゼ・ハウエルという粛清騎士が如何に真摯に修練を積み重ねてきたかの証明だ。

 出来うる事、学べる事、応用出来る事、全てを真面目に積み上げた堅実な判断と行動。


 ──だが。


「ハハッ」


 アイシャは笑顔を湛えたまま、両脚を折りたたむ様にして垂直に跳び足払いを避ける。

 そして大剣の刃を床につけて支えとして姿勢を整えて、折り畳んだ両脚をリゼへ向けて蹴撃として出力する。


「──!」


 まともに顔面に喰らえは頸椎が折れかねない蹴りを、上体ごと仰け反らせることで躱す。

 鼻先を掠める痛烈な蹴りに背筋を凍らせながら、半身を捻り横方向へ転げるようにして一時的に距離を取る。

 奥歯を噛み締めながら、槍を構え直したリゼは射抜く様な鋭い視線をアイシャへと向ける。

 先程の攻撃はアイシャ専用の鉈状の大剣ありきのモノであった。

 切先の無い平坦な形状の刃があったからこそ、支えにした時の有用性が発生したのだ。


 本当に強い戦士は、得物を選り好みしない。

 その価値観は間違いでは無い。

 しかしならば、粛清騎士上位三名は何故わざわざ専用の武器を有しているのか。


 そしてこの後、リゼは知る事になる。

 得物を()()()()した戦士の強さを。

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