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ACT.178 星に焦がれて(Ⅲ)

あけましておめでとうごさいます。

今年も原作、コミカライズ共々よろしくお願いします。

「私にはわかる、アンタは同類だ」


 その言葉は、酷い侮蔑と受けとられても仕方のないモノであった。

 女神の代理として異端を狩る粛清騎士が、私欲で異端の側に立った者から同類呼ばわりされるのだから。


「──」


 だが、リゼは怒りを露わにしない。

 そも、怒りを感じなかったのだ。

 ──何故か。

 それはリゼもまた、同じことを感じていたからだ。


「何か目標が、憧憬があるんだろ? そこに辿り着きたいんだろ?」


 アイシャの言葉にリゼは言葉を返さない。

 粛清騎士として耳を貸さないという意思表示でもあり、それは無言の肯定でもあった。


「私も同じだ、いつか絶対に辿り着きたい憧れがある。伝説の覇者、現三剣の()()()を超えること!」


 今のシャウラ最高権力者の一角に、かつての伝説的な剣闘士がいる。

 数多の危険な試合を通じて、最底辺の奴隷から最高の英雄へと成り上がった人物だった。

 彼に憧れて剣闘士へとなった人は多かっただろう。

 現に彼女も闘技場の覇者へと──。


「だが、今はもう駄目なんだよ」


 しかし、アイシャの魂は満たされなかった。


「時代が変わった」


 件の英雄が三剣の席へ着いたのち、王国と様々な協議を重ねて闘技場のルールを大幅に改訂したのだ。

 なるべく死人が出ないように、安全に配慮してただの娯楽になるように。

 それは多くの関係者に賛同された改革であったが、アイシャには絶望だった。


「あの頃のような危険な剣闘試合は出来ない。彼の記録に迫ることは、ルール上絶対に出来なくなってしまった」


 覇者の肩書きは並ぶことは出来る──肩書きだけは。

 それは、真に彼を超えることが未来永劫叶わなくなったのとアイシャは同義と考えた。

 安全性に配慮された今の剣闘では、自身に匹敵する戦士は居ない。

 その上で危険な試合も望めない。

 憧憬の階段が、途中で断ち切られている。


「だから、だから今この竜が必要なんだ!」


 竜を倒せれば、誰もが彼を超えたと認めざるを得ないからだ。


「ルール違反は百も承知!」


 アイシャは叫ぶ。

 己の野望を叶える為に。


「それでも彼を超える偉業を成し遂げるには、これしかない!」


 私欲に塗れ、それでもその渇望を理解してしまったリゼは無駄とわかっていても彼女を止める言葉を投げかける。


「貴女は、竜の危険性を理解していない」


 何故、竜を仕留めるのにわざわざ粛清騎士が出向くのか。

 竜の対処を間違えた場合に、何が起こるのかを彼女は理解していない。

 強いて言えば、そこぐらいしか彼女を止められる糸口は無かった。


「あぁ、どこまでいっても平行線だね」


 だが、彼女は止まらない。

 リゼが半身になり身構えたその時であった。

 アイシャが床に転がっていたあるモノをリゼの方へと蹴り渡した。


「ハッキリさせようじゃないか」


 古い型ではあるが、手入れの行き届いた一本の短槍。


「武器を取りな、リゼ」

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