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ACT.176 星に焦がれて(Ⅰ)

 コミカライズをキッカケに読みに来てくれた方々、ありがとうございます。

 コミカライズ版はどうだったでしょうか?

 よければ感想聞かせてもらえると嬉しいです。

「──ッ」


 気付かれていた。

 いつから、じゃあ何故ここへ彼女は来た。

 まさか、誘い込まれたのか。

 一瞬の内にそんな思考がリゼの脳裏を掠める。

 これは、どうするべきか。

 逃げるか、それとも開き直って突入するか。

 その場合は無手無策でアイシャをどうにかしなければならないが、出来るのか。

 じりじりと()がれるような(あせ)りが、握りしめた拳の内に汗を貯めていく。


「(せめて、槍の一本でもあれば!)」


 少し前に見た模擬戦の様子を脳内で反芻する。

 先程アイシャがまるで雑魚のように蹴散らした彼女たちだって、何度も試合を生き延びてきた経験値のある剣闘士の筈だ。

 事実、剣闘士として潜入したリゼの肌感としても熟達度は聖教会本部の聖騎士たちとあまり遜色ないと感じていた。

 つまり、アイシャは強い。

 並の聖騎士よりもずっと。

 そしておそらく、自分よりも。

 ここにいるのがもし、他の粛清騎士だったなら話は異なるだろう。

 ライであったのなら、ベルタであったのなら。

 しかし──。


「(私は、違う)」


 尊敬する先輩方とは違うとリゼは歯噛みする。

 自分が粛清騎士になれたのは()()()だと彼女は感じていた。

 最初の任務で大失態を犯した自分が、未だ末席にいられるのはきっと温情だ。

 しかもそれは自身にかけられた温情でなく、ライにかけられた温情だ。

 リゼがライと聖女のやり取りを直接目にした事はあまり多くはないが、それでも聖女ステラが特別にかの先輩に目をかけていることは感じ取れた。

 だからきっと、自分の身に何があっても聖女も他の誰も「当然」と判断するのだろう。


 きっと、ライ以外は。


 そこまで考えて、リゼはゆっくりと扉を押し開く。

 今逃げたところで、誰も責めたりはしない。

 むしろ、さっさと逃げ帰ってベルタやアルフォンソに報告するのが最善手なのかもしれない。

 でもきっと、粛清騎士は──ライ・コーンウェルはそんな事をしないだろう。


 その考えが、彼女を突き動かした。


 幼少期に間接的に経験した"アルドラの乱"と、それを鎮めた粛清騎士に強い憧れを抱いた。

 憧れに焦がれて、遠いその星を目指して走り続けた。

 そして今は、ライという歳下の先輩の背中にあの日憧れた粛清騎士の在り方を見てきた。

 あの背中に追いつくことが、目標になっていた。

 だがらこそ、彼に誇れる自分でありたい。

 自分を裏切り、自分に失望するのは百歩譲ってまだ良い。

 けれど、だからこそ。


 ──憧れだけは、裏切れない。


「見損ないましたよ、アイシャさん」


 決意を胸に秘めて、鋼の決意の宿る眼差しを持って。

 粛清騎士(リゼ・ハウエル)は敵へと啖呵を切った。

 

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