ACT.173 アイシャ・セブン(Ⅲ)
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そして、一夜が明け。
宿舎に戻ったリゼはアイシャの姿を探して、施設内をウロウロと彷徨っていた。
「どこだ?」
キョロキョロと周囲を伺いながら、他の剣闘士たちと軽く挨拶を交わしながら廊下を行く。
試合外の時間に剣闘士たちが行うことといえば、身体を休めたり鍛えたりと他は次回へ向けての宣伝活動だったりするのだが、アイシャの場合はやや事情が異なる。
宣伝活動なぞしなくても人気であるし、強いが故に高頻度で試合は組めない。
故に半ば運営に近い仕事も彼女は兼任して、あちこちを精力的に動き回っている。
それもあって彼女は剣闘士ではあれど例外的に自由な外出も許されていた。
「だから居場所がイマイチ掴みにくいのよね」
普通の剣闘士なら自由行動範囲なんて宿舎周りぐらいの筈だけど、とリゼは内心で愚痴る。
「如何にか近づけ、コネを繋げといわれても」
歩きながら、形の良い眉を寄せて口元に手を当てて考えこむリゼ。
そんなやり方、人生で一度も経験していなければ教え授かった試しも無い。
アイシャの行方を探しながら、同時に交渉手段にも頭を悩ませていると。
「──あれ?」
気がつくとリゼは無意識に訓練所まで足を運んでいた。
脳筋かつ鍛錬中毒とも言ってしまえる程にバカ真面目でストイックな彼女は高頻度でここへ通っていたのだが、流石に無意識下でも足が向いてしまうのは──。
「我ながら、ちょっと引くかな」
苦笑いしつつも、一応念の為と中を覗きに行くリゼ。
確か近いうちにアイシャの対戦予定は立ってないから多分居ないだろうけど──と思いながら模擬戦用の舞台の方へ視線を移すと、そこには意外な光景があった。
──アイシャ・セブンだ。
訓練用に刃を潰した大剣を手にしていた彼女と、それを囲むように四人の女剣闘士たちがそれぞれ武器を片手に睨み合っていた。
おそらくは模擬戦。
しかし、四対一の模擬戦なんて殆どリゼは見た事が無かった。
どういった事情があるかわからないが、これ幸いと彼女は柱の陰に隠れて様子を──アイシャの力量をこの目で確認しようと決めたのであった。




