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ACT.169 三剣ウィリアム・グラディウス(Ⅲ)

 アルドラの乱。

 かつて最悪の人的被害をもたらした転生者が起こした事件──否、()()


「本来は聖女ステラの神託によって、転生者が力をつけて惨事に発展する前に粛清することで未然に被害を抑えることが出来ています」


 淡々と現状の()()()()を口にするベルタ。

 一見すると至って冷静に見える彼だが、椅子に座り組んだ脚の上に置いた手。

 その指先は一定のリズムを刻んで膝を叩く。


「しかし現状、転生者への対抗手段はソレに限定されます。それ故に、聖女ステラへの支持や聖教会への信仰も集まります」


 ──背後で見ていたアルフォンソは、その仕草が強い苛立ちの証であるということを知っていた。


「あの時、自身の権力が衰えることを危惧した国王が冤罪で当時の聖女を幽閉したことで、最悪の転生者への発見と対処が遅れたことにより"アルドラの乱"が発生したという言い方も出来ます」


「その言い方では国王が全て悪いとも取れるが、事を起こしたのはあくまで転生者では」


「──ですから、()()と言っているのです」


 飄々とした言葉でのらりくらりとした大老と比べて、ベルタの言葉には()()()もない熱が入る。

 その様子は、ベルタにとってあの事件がそれだけ強烈な遺恨になっているということを表している。

 彼が王族を辞めた理由に直結するソレに対して熱くなるなと言う方が無理であるが、流石に見過ごせないとアルフォンソは口を開く。


「ベルタ」


 短く一言、名前を呼ぶ。

 それだけで、彼はハッとして更なる激しい言葉を繰り出そうとしていたその口を閉じる。


「失礼、取り乱してしまいました」


 ただそれだけの事で本来の冷静さを取り戻したベルタが襟と佇まいを直して大老へと向き直る。

 その姿に大老は、これ以上の挑発は無駄になるなと少しの諦観を感じた。


「それでは改めてお伺いします。何故、遺恨が残る両陣営に同一の依頼をしたのですか?」


 敵の敵は味方、では無い。

 最悪の場合、敵の敵同士での潰し合いが発生する。

 ──事態が三つ巴へと悪化してしまう。

 それがわからない程の老ぼれが当主の椅子に腰掛けている訳がない。

 だが、しかし。

 グラディウスの大老は、驚くべき返答を二人へ返したのだった。

 

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