ACT.168 三剣ウィリアム・グラディウス(Ⅱ)
「さて──ダブルスタンダードとは、やってくれましたね大老?」
ベルタの問いに、グラディウスの大老は「はて?」とぼけたような言葉を口にして首を傾げてみせる。
そして手でテーブルを挟んで自身の対角線上にある椅子を差して座るように促す大老。
ベルタは黙ってその椅子に腰掛けるが、ここで事態について行けてない者が一人。
「──えっと?」
突然何の理由もわからずに街の権利者宅へ押し入った上に何故かお茶するみたいな流れになって、アルフォンソは困惑する。
「俺の椅子は?」
更に椅子は二対しかなく、彼は所在なさげに周囲をキョロキョロと見回す。
見回したところで、目に映るのは殺気の篭った視線をよこす屋敷連中だけだった。
彼らに対して内心すまないとアルフォンソが謝罪したところで、ベルタが視線だけで自身の後ろを指し示すのを見た。
ここでも従者役かとげんなりしながらも彼はベルタの後ろに立つ。
ベルタたち側の準備が整うのを待って、大老は口を開く。
「ダブルスタンダードとは人聞きの悪い。儂はただ、どちらでも良いと感じたからそうしたまで」
「どちらでも?」
「今、シャウラに巣食う病巣を取り除けさえすればいいのです」
重みを感じさせる低い声色で、テーブルの上に手を組んで載せながら大老は言う。
──必要なのはあくまで結果であると。
その言には確かに一理はある。
聖教会と国王側の折り合いが非常に悪いということを除けば、だが。
「聖教会と国王側の対立はご存じの筈。そんな事をしたなら、場合によっては面子の為の潰し合いに発展しかねない」
敵の敵は味方であると言うが、そんな訳は無い。
共通の敵がいたからと言って、協力出来ない場合だって多く存在する。
今回のようにその成果が実積と捉えられかねない場合は特にそうだ。
国王側が聖教会に頼らずに転生者──否、転生者一派を討ち取ったとするなら大きな問題が発生する。
その結果、未来に待ち受けているのはあの地獄の再来である可能性が非常に高いとベルタは睨んでいる。
グラディウスの大老は何処まで何を考えているかはわからないが、真意を探る為にベルタはこう問いかけるしかなかった。
「貴方は、あのアルドラの乱の遠因が国王側にあるというのを知っていて言っているのですか」




